2 貨物流動構造の変化


  貨物の地域流動構造は,各地域における産業構造の変化,および地域相互間の物資流通パターンの変革に適応する姿で,その構造変化をすすめてきた。

(1) 地域別産業構造と貨物輸送

  全国を比較的関連の深い経済ブロックの単位ごとに15地域に区分し,地域別生産所得の高い地域から願に並べ,あわせて当該地域における貨物の発着トン数と生産所得の産業別構成比を対比させてみると, 〔I−3−3図〕に示すように,地域別産業構造と貨物輸送構造のパターンとの関連が明らかになる。
  すなわち,京浜葉・阪神・東海等既成工業地帯ではその生産所得は他地域にくらべてかなり大きく,産業別の構成比についてみると,いずれも第2次産業の比重が高く第1次産業の比重はきわめて低い。また,この地域別生産所得と貨物発着トン数の関係を対比してみると,ほぼ同一傾向にあり,生産所得の大きい地域ほど貨物輸送需要も大きい。
  つぎに貨物発着トン数についてみると,京浜葉・阪神・東海等の既成工業地帯では到着トン数が発送トン数を上回つており,いわゆる移入超過型の地域として第2次産業に必要な工業用原材料を他地域から移入し,工業製品を他地域へ供給していることを物語つている。

  逆に北九州・北関東・山陽・表東北・北海道等の諸地域では,発送トン数が到着トン数を上回つており,移出超過型の地域として原材料供給地の性格がはつきりあらわれている。

(2) 太平洋岸ベルト地帯に集中する貨物流動

  前述の15の経済ブロックについて,昭和35年度を26年度と対比して貨物流動構造の変化をみよう。まず,陸上貨物流動状況の推移を,各地域における地域内輸送トン数と各地域間輸送トン数の伸びに焦点をおいて描いてみると, 〔I−3−4図〕のとおりとなる。
  ここで見出される最も顕著な傾向は,表東北から北関東・京浜葉・東海・近畿・阪神・山陽を経由して北九州に至る太平洋岸ベルト地帯に輸送需要が集中し,その伸びも高いという事実である。なかでも北関東から阪神に至る間の経路では京浜葉・中京・阪神と三大工業地帯を連ね,輸送需要集中の度合いが一番高い。また北関東と京浜葉との間の輸送量がとくに大きくその伸びも高いのは,北関東が京浜葉工業地帯の経済圏に包括されつつあるためと考えられる。

  つぎに 〔I−3−5図〕により,海上貨物輸送量の推移をみると,陸上貨物輸送と同様,表東北から北九州に至る太平洋岸諸地域に輸送需要が集中し輸送量の伸びも高い。

  これら太平洋岸の諸地域は,大消費地に接近し産業関連諸施設の整備もすでに相当行なわれており,関連産業・下請企業が広範に存在し,用地・用水にもかなり余裕があり,また大量の原材料を海外から輸入しその製品を輸出するための主要港湾を域内に保有する等,すぐれた産業立地の条件を備えているので,今後地域開発計画の推進にともない,太平洋岸ベルト地帯における貨物輸送需要はいつそう増大するものと考えられる。


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