5 日本国有鉄道基本問題懇談会


  日本経済の発展に伴つて急速に増大する輸送需要に対処するため,国鉄では32年度および36年度に,それぞれ第1次および第2次の設備投資5カ年計画をたて,幹線輪送の増強,電化・ディーゼル化等の輸送手段の近代化,通勤輸送の改善等に努めてきたが,輸送需要の伸びが予想を著るしく上回つたこと,資金面に制約があること等の事情から、これらの計画の進ちよく状況は必ずしも良好でなく,現在に至るまで国鉄の投資不足は依然として解消されていない。ちなみに,現在実施中の第2次5カ年計画は,39年度で第4年目を迎えたが,第3章第1節において述べたように,39年度末までの総投資額は9367億円(39年度は国会予算)と見込まれており,その進ちよく率は69.4%,うち東海道新幹線の100%を除けば58.4%である。このような実態にかんがみ,政府としては,部内に「日本国有鉄道基本問題懇談会」を設け,40年度を初年度とする国鉄の長期計画について抜本的な検討を行なうこととした。
  この懇談会は,38年12月の閣議了解および39年4月の関係事務次官申合せに基づいて設置されたものであり,構成員は,総理府総務副長官,経済企画・大蔵・農林・通商産業・運輸・建設の各省庁事務次官と国鉄副総裁であるが,審議に際しては,広く民間から学識経験者を招いて意見をきいている。
  なお,この懇談会では,過去の二度にわたる5カ年計画の実施状況からみて,資金確保の可能性いかんが計画の成否を左右する条件であることにかんがみ,長期計画について審議すると同時に,そのための資金確保の方法についても審議が行なわれている。
  39年5月の第1回会合以来9月30日まで15回開催されたが,当初3回は国鉄から,国鉄の概要,国鉄輸送の現状と問題点,都市交通の現状,運転保安の現状問題点等について説明が行なわれた。
  つぎに,国鉄から45年度における国鉄に対する輸送需要の想定およびこれに対応するための設備投資計画(案)が提出され,現在これについて検討が行なわれている段階にある。この設備投資計画(案)は,40年度を初年度とし,所得倍増計画の目標年度である45年度を最終年度とする6箇年にわたる長期計画であり,総投資額は2兆9720億円とされている。


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