1 労働条件


  南氷洋捕鯨,母船式北洋漁業,母船式遠洋かつお,まぐろ,海外トロールなどの遠洋漁業は比較的大手企業に属し,船舶も相当大型化されておりかつ労働者の意識も高いことから,労働組合が結成されており,その労働条件も労働協約によつて定められている。しかし,その労働条件も,生産構造企業規模,労働組合の力などにより必ずしも同一ではない。たとえば,漁船船員の賃金は,漁業生産の特殊性に対応して,全歩合賃金から出発しているが,全歩合は労働者の生活を不安定ならしめるものとして賃金の固定給化が進められている。遠洋漁業は賃金の固定給化の最もすすんでいる部分であるが,それでも,総賃金中にしめる本給,家族手当,乗船手当,航海日当および歩合給の構成には格差がある。所定労働時間,体日休暇については制度化されている。
  以西底曳,城西トロール,以東底曳,母船式底曳などの近海漁業は遠洋漁業に比べて船舶も小さく,企業の規模も小さいところから,労働条件も低い。労働組合が結成されていても,比較的単位組合としては小規模で,労働協約も不備なものが多く,労働時間などの定めもなく賃金体系としても全歩合制をとるものが多い。
  その他の沿岸漁業は,漁船船員の過半数をこえるにかかわらず,近海漁業よりもさらに労働条件は低く,労働組合が結成されているものはごく一部にすぎず,また全歩合制をとるものがほとんどである。
  38年12現在における総賃金中にしめる本給,家族手当,乗船手当,航海日当および歩合給の割合などを示すとつぎのとおりである。これによれば,総体約に本給,家族手当,乗船手当,および航海日当の比率が低く,歩合給が賃金の約半ばをしめていることがしれよう。このように漁船船員の賃金は漁業生産の特殊性から不安定な要素をもつており,賃金の固定給化の必要性が認識されつつある。


表紙へ戻る 次へ進む