2 観光旅行の季節性


  わが国における観光旅行には,国内観光においても,特定の季節(シーズン)に過度に集中する傾向,つまり季節性がみられる,これを一般旅行あつ旋業者の月別の取扱客数と国鉄の団体旅客の月別の輸送人員からみると,月平均を100とした各月の数をこれに対する指数としてあらわしたものを季節偏向係数とよぶならば, 〔IV−28図〕にみられるようにピークとボトムの季節偏向係数は,著しくかけはなれている。この場合,ピークは春と秋であり,ボトムは冬にあらわれている。このような傾向は,先に述べたように,外客の来訪数の月別推移にも認められる,もちろん,個々の観光地や企業によつては,たとえば,スキー場や避暑地のようにシーズンが異なるのは当然である。しかし,いずれにしても,観光旅行の季節性は,一方においては,観光旅行者の場所的集中とあいまつていつそう各種の観光関係施設を混雑させ,旅行の快適さを阻害するとともに,他力観光関係企業にとつては経営上の難点となり,観光の普及発展を妨げる結果となる。
  この季節性を解消し,平均化の方向に近づけるための対策としては観光シーズンの延長とオフ・シーズンにおける観光旅行の増大の促進がある。まず,観光シーズンの延長については,地方公共団体や民間企業により,たとえば,避暑地である観光地に冬季用スキー,スケート場を整備し,冬期を観光シーズンとすることが行なわれている。また,オフ・シーズンにおける観光旅行の増大の促進のための方策としては,料金の割引制度については,交通機関では,国鉄運賃や航空運賃の団体割引率がオフ・シーズンにおいて大きくなつているほか,宿泊施設においても,一部のホテル,旅館がオフ・シーズン割引の制度を設けている。また,オフシーズンの有利さについての宣伝は,国際観光振興会の海外観光宣伝事務所をはじめ,国内における各種の案内所により行なわれている。さらに,オフ・シーズンにおける会議,行事の開催が図られているが,国際会議の誘致とその場所的および季節的な調整を行なう機構であるコンベンション・ビューローを設立し,積極的にオフ・シーズンにおける国際会議の誘致を図ることが望まれている。


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