第1節 鉄道車両の生産動態


  昭和39年度の需要先別生産実績は 〔I−(I)−47表〕のとおりで,総額667億円,対前年度比12%の増加を示した。これをトム型15トン貨車に換算した総合両数では67,579両で,戦前最高の昭和15年度における56,720両を約16%上回り,戦前,戦後を通じて最高の実績を記録するに至つた。このことは,近年経済の発展に伴う旺盛な輸送需要に対応するための輸送力増強計画にともない車両の増備を積極的に実施していることによるものであり,また,輸出においても近年こそその実績は伸び悩んではいるが,年来の輸出努力によりわが国がおおむね国際競争力を持つに至つたためである。これを需要先別にみると,まず国鉄の場合は第2次5か年計画による通勤輸送及び幹線輸送力増強のための車両増備をはじめ,電車化,ディーゼル化等を推進した結果約476億円,対前年度比40%増の実績をみた。民需においては,大手私鉄の輸送力増強計画の実施と大都市における地下鉄の建設に伴い引続きコンスタントな実績を示し,生産総額は前年度とほぼ同額の133億円あつた。輸出においては後述のとおり,国際競争の激化と輸入国の政情不安,外貨不足等輸出環境の悪化により今後ともコンスタントな輸出実績は望めない情勢にあり,39年度の生産約58億円,対前年度比48%と近年にない大幅な減少を示した。

  以上のように国鉄への依存度がきわめて高く,国鉄の需要動向は業界の好不況の鍵とさえいわれている。ただ,国鉄の場合は前述のとおり,従来の長期にわたる設備投資不足により車両の需要は旺盛であるが,予算上の制約から予算外調達方式として民有車両制度による調達を実施しているので,業界の収支面では必ずしも生産量にマッチするとはいえない実情にある。
  車種別生産両数は 〔I−(I)−48表〕のとおりであつて,鉄道輸送の合理化,経済化の見地から動力の近代化が積極的に進められていることを物語つている。すなわち,蒸気機関車は37年まで一部輸出向けにみられていたが,現在では全く姿を消し,次いで客車も年々その生産は減少の一途にあり,かわつて電化、内燃化の進ちよくに伴い,電気機関車,気動車,電車の生産が飛躍的に増加している。また,これら車両の性能及び構造についても旅客部門にあつては,高速性並びに快適性及び保安度向上のため装備の改善がほどこされるなど高級化した車両の需要が増加し,貨物部門にあつては輸送の需要構造の変化に対応して,貨物の形状,特質にマッチした特殊用途車,特に冷蔵車及びタンク貨車等の生産が目立つているほか,高速貨車の開発もその緒についてきた。


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