3 大型油送船の経済性と安全性


  石油の輸送コストは,油送船の船型の大型化に伴い逓減するため,世界的にみても油送船の大型化は著しく,わが国の2,000重量トン以上の油送船の平均船型は,30年末の1万5,800重量トン(世界6位)から,40年末には4万2,500重量トン(世界1位)となり,41年末には,5万総トン以上の油送船は18隻(世界で67隻)となつている。
  これに伴い,輸入石油の平均運賃(保険料込)は,31年度のトン当り約8ドルから41年度の約29ドルに逓減し,輸入原油に運賃が占める割合は,40%から25%へと低下した。
  しかし,船型が大型化するにつれ運動性能は緩慢になり,衝突等の危険は増大し,ひとたび事故が発生すると,42年3月に起つたトリー・キヤニオン号事件にみられるように,その被害は甚大なものとなる。
  このため,大型油送船の事故防止対策として,航路の指定,乗組員の質の向上と優秀船員の確保,船舶の構造上の改善,原油輸入基地の設置(CTS方式)等が考えられているがの事故発生の場合の船主の損害賠償責任の履行を確保して被害者保護を図るとともに,船主の過重な経済的負担を避けるため,船主責任保険(PI保険)へ加入することが望ましい。

(1) 一般不定期船の建造

  不定期船部門では,専用船化が進んでいるが,専用船および近海船を除く一般不定期船部門ではほとんど新船建造が行なわれず,就航量は横ばいに推移している。一方,一般不定期船の輸送分野は,専用船の就航に伴い縮少する傾向にあるが,なお,石炭,小麦,非鉄,塩,食料等の広範な分野に及んでおり,その輸送の絶対量も年々増大しているため,とくに遠洋航路において,船腹不定が目足ち多くの外国用船を余儀なくされている。
  しかし,低用船料の外国用船の主体をなしていたリバテイ型船が代替建造期にきており,容易に用船できる外国用船が少なくなつてきている等,一般不定期船建造の条件がととのいつつある現在,景気変動の影響を受けやすい不定期船の分野で短期の外国用船にある程度頼ることはやむをえないとしても,海運国際収支改善のために長期の外国用船の邦船への切替えを促進する必要がある。


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