2 東海道メガロポリスにおける旅客輸送


  東海道地域は,面積において全国の約20%を占めるにすぎないが,人口においては約50%,工業出荷額において約70%を占め,日本7大都市のうちの6大都市を擁し,わが国経済活動の中枢であり,世界で最大のメガロポリスを形成している。
  東海道地域における旅客輸送量 〔1−1−13表〕は,昭和40年度において,域内輸送人員(発・着の両方が東海道地域内にあるもの。)が全国輸送人員の68.7%,域間輸送人員(発・着のいずれかが東海道地域内にあるもの。)が0.7%,両方合計すると69.4%と,全国輸送量の約7割がこの地域に集中している。この地域における旅客輸送量は,大きくみて都市内輸送と都市間輸送とに分けることができるが,前者についての諸問題は総論第二部において取り扱うので,ここでは都市間輸送について概観してみよう。

  経済社会の発展に伴い一日生活圏,一日行動圏の広域化が全国的に進んでいるが,東海道メガロポリスにおいてはこの傾向が特に強い。東海道メガロポリスにおける東海道新幹線,航空(東京〜大阪間等)および名神高速道路等の都市間輸送施設はこの地域における一日生活圏,一日行動圏の拡大のための重要な施設となつているが,44年5月においてはこれらに加えて東名高速道路が全線開通し,東海道メガロポリスを縦貫する高速道路体系が完成しようとしている。東海道新幹線の開通が東海道地域における輸送構造に与えた変化と同様に,名神・東名高速道路の全線開通がどのような影響をもたらすかが注目される。
  東海道新幹線では,39年10月の開業以来,車両の整備,スピードアップ等により逐次輸送力が増強され,42年10月の時刻改正では,列車運行本数は69往復となり,車両数も42年度末において728両となつた。輸送人員も 〔1−1−14表〕に示すとおり,開業以来毎年大幅に増加しており,42年7月13日には開業以来1億人を突破した。そして国鉄定期外に占める比重は42年度において人キロで18%,運賃収入において23%を占めるまでに成長した。

  新幹線と競合関係の強い東京・大阪間の航空旅客輸送では 〔1−1−14表〕に示すとおり,新幹線の開通した39年度下期以降の輸送人員が41年度まで減少の一途をたどつていたが,42年度に入り再び増加傾向に転じたことが注目される。東京・名古屋間の航空旅客は42年度に入つても相変らず減少傾向にあり,この区間においては新幹線の開通により,空路を選ぶ理由がほとんど存在しなくなつたといえる。
  つぎに名神高速道路における旅客自動車の利用状況をみると,通行台数では旅客自動車が全車種合計の50%以上を占め,その伸びも自家用乗用を中心とする自動車保有台数の伸びを反映して,めざましいものがある。しかしながら,バスについては人の伸び率は他の車種に比べ比較的小さく,他の輸送機関との競合関係が強いことを示しているものと推定される。
  名神高速道路の輸送人員は,東海道新幹線の6割前後 〔1−1−14表〕と推定される。名神高速道路における自動車の平均走行キロは,約38キロであり(41年度の実績,日本道路公団年報による)名神高速道路の延長キロ190kmの20%程度の比較的短距離の利用が多いことを示している。これに対し,東海道新幹線における旅客の平均乗車キロは42年度で324kmであり,毎年わずかづつ短くなる傾向にあるとはいえ,長距離輸送が中心になっている。


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