2 自動車排気ガス


  自動車排気ガスが公害面において重要視されるようになつたのはつい数年前からのことであるが,自動車の急激な増加,大都市への集中交通渋滞などにより拍車をかけつつある。すなわち昭和41年2月に発表された厚生省の東京都内における調査によると,交通渋滞のはなはだしい汚染地区と比較的交通量り少ない住宅地の非汚染地区とについて,それぞれの地区の住民の酸化炭素ヘモグロビン量を測定したところ,汚染地区住民の平均値は4.27%,非汚染地区住民は2.79%であり,自動車排気ガスの人体への影響は必ずしも軽視できない。
  これら汚染地区における大気汚染度は,当然のことながら自動車の交通量と強い相関を有している。しかし,「昭和41年度自動車排気ガス環境調査結果概要(厚生省資料)」によれば, 〔I−(II)−32図〕にみるように都内板橋地区や大原地区では交通量の増加に伴つて大気中の酸化炭素濃度が増加しているのに反し,霞が関地区においては,交通量がほぼ一定であるにもかかわらず,道路整備の進捗に伴う交通渋滞の解決により,大気中の酸化炭素濃度は顕著に減少している。

  したがつて,大気汚染度は交通量ばかむでなく道路整備状況によつても大きく左右されていることがわかるわけであるが,現実には今後ますます自動車数の増加が予想されるので,都市に居住する人々のためにも早急に対策を樹立し規制する必要が生じ,次の内容で擬制が実施される運びとなつた。

(1) 新車に対する規制

  自動車から排出されるぱい煙,悪臭のあるガス,有害なガス等については,従来から道路運送車両法第41条に基づき,道路運送車両の保安基準第31条に有害ガスを多量に発散してはならないと規定されているが,これを具体化して,新車時に3%以下であることとし,昭和41年9月より新たに生産にはいる新型車にまず適用し,昭和42年9月からは規制を強化してメーカーの生産する新車全部について規制を行なっている。

(2) 使用過程における自動車に対する規制

  使用過程の自動車については,整備基準を制定すべく,目下調査研究を継続実施中であるが,とりあえず,現在までに得られた調査結果をもとに42年12月に,下記の「排気ガス対策点検整備要領」を定め,同要領に規定する項目についても点検整備を実施するよう自動車使用者および整備関係者の指導を行なつている。
  なお,今後の規制の強化に際しては,その裏付けとなる試験研究が不可欠であるので,船舶技術研究所内に42年度に新設した交通公害部において,使用過程における排気ガス悪化状況に関する追跡調査,排気ガスに関する適正整備方法に関する研究等を強力に推進中である。
 「排気ガス対策点検整備要領」の概要
 @ 現在,自動車使用者は自動車点検整備基準(昭和26年運輸省令第70号)に基づき,定期的に点検整備を案施することとなつており,これにより排気ガスの清浄化もかなり期待される。しかし,自動車の点検整備は在来から安全性の確保および経済的使用の面に重点をおいて実施されてきているので,今般,自動車排気ガスによる大気汚染防止対策を推進していくため,排気ガス清浄化に重点をおいた点検整備が実施できるよう「排気ガス対策点検整備要領」を定めたものである。
 A 本要領は,とりあえず現在までに得られたデータをもとにして排気ガス対策上点検すべき事項を挙げ,それぞれの事項について点検内容を定め,かつ,点検の結果不良な場合の整備処置を明示したものである。
 B 排気ガス対策上から点検すべき事項としては次の16項目となつている。
 イ 新しく追加したもの10項目
 ロ 従来からの点検項目の内容を充実したもの6項目


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