3 欠陥車問題


  近年におけるわが国の自動車の普及には目覚しいものがあり,急速な大衆化を遂げたが,自動車の構造装置も技術の進歩に伴い年々多様複雑化の傾向を示している。
  このような情勢にあつて,昭和44年6月,自動車メーカーが既販車について構造装置に欠陥が発見された場合に実施する部品交換等の回収措置(米国では自動車のリコール制度として確立されている。)が大きな社会問題となり,国産車,外国車とも欠陥の発見された車種,対象台数,欠陥の内容等が明らかにされるに至つた。これに対し自動車メーカーは44年8月末日を目途として,その回収を行なつたが 〔I−(II)−36表〕,すでに廃車となつているものを考慮すると,今回の回収措置は実質的には完了したものと見ることができる。
  自動車の構造装置の保安の確保については,従来から車両検査,定期点検整備,形式指定制度等により車両欠陥事故の防止を図つてきたが,今回のいわゆる欠陥車問題を契機として車両欠陥による事故防止に万全を期するため新たな措置を講ずる必要が生じた。
  対策の第1として,欠陥車が発生し,或いは発生するおそれのある場合には,自動車メーカーにおいて,欠陥の内容,車両の回収計画等について速やかに運輸省に報告するとともに,自動車使用者に対して周知徹底を図ることとし,これを制度化するために必要な法令の改正を行なつた。また,自動車整備事業者等に対しても,欠陥車が発見された場合等における運輸省への通知および車両の回収措置の確実な実施等について指導している。
  第2に,欠陥車の発生を未然に防止するための抜本的対策として,今後自動車メーカーに対して,品質管理の的確化,耐久試験体制の充実強化に努めさせるとともに,運輸省としては新型式自動車の審査および自動車メーカーの監査の充実強化,車両欠陥車事故原因の解析究明のための体制の充実,自動車点検基準の充実等の方策を積極的に推進してゆくこととしている。このほか,自動車使用者においても車両事故を未然に防止するための仕業点検,定期点検整備等の励行が必要であり,その必要性についてPRし点検整備に関する自動車使用者の理解を深める必要がある。


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