1 自動車損害賠償責任保険


  責任保険の加入率については,当初70%台を推移していたが,昭和37年5月に「自動車損害賠償保障法」の一部改正が行なわれ,車検登録等を行なう際には自動車の車検期間をカバーする保険証明書を提示しなければならないことになつたため,最近では車検対象車両についてはほぼ100%の加入率をみるにいたつている。しかし車検制度のない軽自動車及び41年から,「自動車損害賠償保障法」の対象とされた原動機付自転車については,保険加入PR,街頭取締り等の方法によつて加入率の向上を図つてはいるものの,43年度末における加入率は軽自動車75.2%,原動機付自転車64.5%にとどまつている。
  責任保険は,民間の損害保険会社が元受会社になり政府がその6割を再保険している。保険金の支払限度額は,制度が発足した昭和30年当時の死亡30万胃,重傷10万円,軽傷3万円から35年9月,39年2月,41年7月,42年8月と引き上げられ,現在死亡300万円,後遺障害11~300万円,傷害50万円となつている。また,保険金支払いの財源となる保険料を主な車種についてみると,現在,年間でバス36,920円,大都市のタクシー50,040円,自家用乗用自動車9,030円,普通トラック39,010円,軽自動車4,280円となつている。
  責任保険の1件平均支払保険金および支払保険金総額は 〔I-(II)-39表〕のとおり,逐年増加している。これは41年,42年と支払限度額が引き上げられたこと,および傷害について医療費の高騰,国民所得の向上に伴う休業補償費の増加および保険金支払件数の急難な増加等により支払金額がふえたことに起因している。

  なお,昭和43年8月18旧未明,岐阜県下国道41号線上を通過中の観光バスが土砂くずれにより飛騨川に転落し,死者104人,負傷者3人を出す事故が起きたが,これについて政府は,「自動車損害賠償保障法」を適用することが妥当であると判断したので,自動車損害賠償責任保険金が支払われることとなり,これにより被害者の救済が図られた。


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