4 航空機の騒音対策


  最近における民間航空のめざましい発展に伴い,航空機の運航回数は著しく増加するとともに使用機材の大型化,高速化が急速に進んでいる。特に航空機のジェット化は著しく,44年1月の定期便のジェット機の運航回数の比率をみると,東京国際空港では,1日の定期便の発着数約300回のうちジェット機は約200回と67%を占め,また,大阪国際空港では,同じく約280回のうち約122回と44%を占めるに至つている。
  ジェット機の運航回数の増加は,輸送力増大の反面航,空機騒音による公害問題を惹起し,特に東京および大阪等の主要空港においては,これが深刻な社会問題となつている。
  このような事情にかんがみ,運輸省では,従来行政指導により,東京および大阪両国際空港における深夜(牛後11時から翌朝6時まで)のジェット機の発着を原則として禁止するとともに,東京国際空港における離着陸経路の規制を行なつてきたが,行政指導には限界があり,今後はさらに積極的に航空機騒音対策を推進する必要があるとの観点から,航空審議会の答申を尊重して,42年第55特別国会に「公共用飛行場周辺における航空機騒音による障害の防止等に関する法律」案を提出し,成立をみるに至つた。
  この法律は,運輸大臣は公共用飛行場周辺における航空機の騒音により生ずる障害を防止し,また軽減するため必要があると認めるときは航空機の離着陸の経路,時間等を指定することができるものとするとともに,学校,病院等の騒音防止工事の助成,学習,集会等の用に供する共同利用施設の整備の助成,飛行場周辺の一定区域にある建物等の移転補償および土地の買入れ,農業等の経営損失の補償等の措置を講ずることにより,航空機騒音による障害の防止等を図るという内容のもので誇る。
  この法律に基づき,運輸省では,42年度に予算3億円,43年度に予算5億3千万円をもつて,東京および大阪両国際空港周辺で24の教育施設の防音工事と4つの共同利用施設の整備事業に対し,助成を行なつてきたが,44年度においては,予算10億円をもつて43年度からの継続事業のほか,新しく17教育施設の防音工事と,5つの共同利用施設の整備事業を助成している。
  以上の措置のほかに,運輸省においては,空港の整備計画の策定等に当つて,航空機騒音による公害の減少に資するよう検討しており,東京国際空港では周辺の被害を根本的に軽減するため,現在1,570メートルのB滑走路を昭和45年度までに2,500メートルに延長することとしている。この延長工事が完成すると,航空機のほとんどを海側から着陸させ,海側へ離陸させることとなり,大森側の騒音は激減する。またこの結果,B滑走路の多摩川寄りから海側に向つて離陸する航空機が増加するために生ずる新たな障害に対しては航行の規制措置等を講じ,障害の防止に万全を期することとしている。また,新東京国際空港においては,航空機騒音を遮断するため,空港周辺に防音林を設置する計画をたてている。
  政府は前述のように,航空機騒音対策の実施に鋭意努力しているが,国の施策には自ら限界があり,この対策をより充実させ,円滑に推進させるためには,官民一体の協力体制を確立する必要がある。このような観点から43年8月に財団法人航空公害防止協会が設立され,航空機によるテレビ受信障害の防止対策としての助成金の交付,航空公害防止のための施設および環境の整備,航空公害の現状調査とその対策の研究等が行なわれることとなつた。


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