1 収支の概況


  44年度の損益概況は 〔I−(I)−20表〕のとおりであり,当年度の営業損失は1,323億円,これに営業外の損益を加えると,1,316億円の損失となり,39年度以降,連続6カ年の赤字決算となつており,引き続き憂慮すべき状態にある。

(1) 収入

  旅客輸送を,輸送人キロにおいてみれば,普通旅客が前年度の伸び率を下回り,定期旅客は対前年度9%減少したため,旅客輸送全体において,対前年度2%減少となつた。このため,44年5月10日に運賃改定を実施したものの,旅客収入においては7,602億円となり対前年度18%増にとどまつた。
  貨物輸送においては,輸送トンキロにおいて,小口扱貨物は前年度に比して伸び率がやや下降し,また貨物輸送の大宗を占める車扱貨物が前年度とほぼ同水準に停滞したため,貨物輸送全体としては,対前年度2%増にとどまり,貨物収入においても2,449億円となり対前年度2%増となつた。
  雑収入においては,財政再建補助金70億円,及び本年度より新らたに交付することとなつた財政再建債利子補給金13億円を含めて389億円となり,対前年度16%増となつた。
  これらにより,総事業収入は,対前年度14%増の1兆440億円となつた。

(2) 経費

  営業経費は,総額において対前年度12%増の1兆1,763億円となり,営業収入を,1,323億円超えることとなつたが,その経費増加の要因は次のとおりである。
  経費中前年度に対して伸び率の著しいものは,人件費,修繕費,業務費,利子及び債務取扱諸費であるが,経費に対する構成比において52%を占める人件費の増加(対前年度約15%増)が経費全体の上昇に最も影響を与えている。
  人件費の増加の原因は,主として年度中における仲裁々定の実施に伴う,給与及び諸手当の増加によるものである。また,人件費に次いで構成比の高い利子及び債務取扱諸費の増加は,設備投資に伴う外部資金の流入増によるものである。
  なお,収支について,特に寄与することの大きいものとしては,東海道新幹線の営業収支をあげることができる。
  東海道新幹線においては,営業収入において対前年度27%増の1,645億円をあげたにもかかわらず,営業経費は対前年度6%増の841億円にとどまつたため,804億円の営業利益を計上しており,在来線の収支が悪化しているのを補つている。


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