3 大都市における旅客輸送


  大都市への中枢管理機能の集中は,人口の急激な増加をもたらし,交通,住宅に種々の問題を生じている。
  東京に例をとれば,首都圏の人口は45年10月1日現在で,3,025万人と40年に比べ12.2%増加している。人口の増減の傾向を,都心からの距離帯ごとに,30年以降5年ごとにみると,第2部 〔2−2−3図〕のとおり,都心では減少傾向がみられる一方,最も高い増加率を示している地帯は,5年ごとに外周に向って移動しており,人口分布のドーナツ現象を示している。
  都心部への事業所の集中,居住地の郊外部への拡散は,輸送需要の増大と輸送距離の長距離化となつてあらわれている。
  首都交通圏および京阪神交通圏の輸送機関別旅客輸送人員の推移をみると 〔1−1−18図〕のとおりで,とくにモータリゼーシヨンの進展にともなう自家用乗用車による輸送量の激増と路面電車の衰退が目立つている。
  また輸送距離の延伸について,首都圏で近年沿線の宅地開発が進んでいる鉄道線区についてみると,40年度から44年度の間に,平均輸送距離が1〜2km,10%程度伸びている。

  こうした輸送需要の増大,輸送距離の延伸に対して,各輸送機関とも新線建設,線路増設,車両の大型化,列車の長編成化,増便,スピードアツプ等による輸送力の増強,地下鉄網の拡充,相互乗入れ等を行ない,また道路の整備も心進められている。しかし,都市交通における混雑は,部分的には改善されてはいるが,総体としてはいぜん解消されていない。


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