3 労働問題


  国鉄には,現在,総評系の国労および動労,同盟系の鉄労の3つの労働組合があり,46年4月現在,国労25万3,372人,鉄労8万3,906人,動労5万2,851人,その他組合約2,000人,計392,000人が組合に加入している。
  45年における国労および動労のおもな闘争としては,3月下旬から5月上旬にかけて新賃金闘争(春闘)を,さらに6月には安保反対および春闘における処分撤回闘争をそわぞれ行ない,また9月には新賃金の配分および反合理化闘争を行なつた。このため,45年には約2,000本の発車運休と約5,000本の外車に遅延を生じた。
  46年の春闘は,公労協の統一行動としては4月23日の第1次行動に始まり,第3次の5月14日まで行なわれたが,国労および動労は第3次行動にのみ参加したにとどまつた。しかし,本年春闘の最大のヤマ場となつたのは国労および動労が共闘により5月18日から5月20日までの3日間にわたつて行なつたストライキである。このストライキは首都圏における国電の運転部門を拠点として行なわれ,首都圏の旅客輸送に大きな影響を与えた。しかし,この間,公労委調停委員長から基準内給与の8%プラス2,300円(3公社平均9,302円,国鉄9,780円〔定昇込み〕)の内示があつたこと,および労使間幹部の積極的な折衝が行なわれたことにより5月20日19時に至りストライキは中止された。なお,この春闘だけで約5,000本の列車運休と約3,500本の列車に遅延を生じた。また,前述の調停委員長の内示額は総評系労働者側委員の賛成が得られず調停不能に終つたため,仲裁に移行した結果,6月1日,調停委員長内示と同一内容の仲裁々定が行なわれ,春闘は事実上終つた。
  しかしながら,国鉄については特に財政事情が極度に悪く,すでに46年度予算においては償却前赤字となつており,さらに今回の仲裁々定を完全に実施すれば給与改善費および予備費を使用してもなお財源が不足する見込みであつたため,政府において財源措置等の検討を重ね,6月29日の閣議において,公労法第35条の精神を尊重して今回は給与改善費,予備費の使用のほか,経費の節約,繰延べ等により完全実施することとなつたが,今後さらに合理化施策の徹底,収入増強策を検討する必要が強まつた。


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