第7節 自動車販売事業


  資本の自由化を迎えて自動車メーカー間のシエア拡大競争は激烈をきわめているが,メーカー間のシエア拡大競争は,結局デーラー間の販売台数競争という形をとつて現われることになり,自動車販売業界の競争の激しさは他に類をみないほどである。
  このような状況の下に,各デーラーはその販売台数を増加させるため,新車の値引き,中古車の高値下取りなどの方法により激しい価格競争を行なつている。
  このため,多くのデーラーにおいて自動車販売部門(中古車販売部門を含む。)の収支は赤字になつており,併営部門(自動車整備業付属品販売業,自動車保険代理店など)からの収益や割賦販売手数料,メーカーからの賞金などでようやく息をついているのが現状である。
  また,デーラーはいずれも自己資金が少ないので,割賦販売に要する膨大な立替え資金のほとんどをメーカーや金融機関からの借入れに依存しており,このために生ずる支払利息も大きく経営を圧迫している。
  このような状況の下においては,誇大宣伝等の不当な表示や広告が行なわれがちであるが,現在業界では,公正取引委員会の勧告を受けて,不当広告等を排除することにより消費者の適正な商品選択とデーラー間の公正な競争を確保することを目的として,新車販売について「表示に関する公正競争規約」をすでに実施しており,中古車販売についてもこれを作成中で,近いうちに実施に移されることになつている。
  以上述べたように,現在自動車販売業界は激しい競争と苦しい経営にあえいでおり自動車販売部門において必要な収益をあげるという自動車販売業本来の姿にたどりつくには,中古車の下取り価格の適正化,割賦販売金融制度の整備などが必要であるが,とくに現在道路の混雑交通事故の激増,排気ガス公害など自動車をめぐる各種の問題が発生し,あるいは自動車の需要の停滞という問題に直面するなど,自動車産業全体が大きな転換点にさしかかつているときにあたり,自動車販売業界が節度ある販売競争を展開することが必要である。

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