総論

  昭和47年度の我が国経済は,前半前年の不況から脱してゆるやかに回復を続けてきたが,後半に入つて需給関係の好転を背景に急激な拡大に転じ,景気は急上昇を示した。この結果国民総生産は47年度当初の予想をこえて,前年度比は名目で17.6%増,実質で12.0%増と前年度の伸びを大きく上回り,鉱工業生産指数は前年度比10.8%増,個人消費支出も所得増加を反映して,名目で前年度15.3%,実質でも9.8%の増と,それぞれ順調に推移した。この期間で特に注目されるのは,木材など原材料の品不足などから47年度後半以来卸売物価が急上昇し,加えて48年に入つてからは消費者物価も騰勢を強めており,48年度に入つてこの傾向は更に強まつていることである。また47年度の我が国の貿易は,各種の黒字不均衡是正措置と国内景気の上昇を反映して特に輸入の伸びは前年度比25.3%増と著しく,輸出も各国の景気回復などにより,19.4%増と拡大した。この結果貿易収支では83.6億ドルの黒字とほぼ前年度並みの高水準を維持したが,総合収支では長期資本収支の大幅な流出超を反映して29.6億ドルと前年度に比べて黒字は大幅に縮小した。

  このような経済情勢の動きにもかかわらず,輸送活動は前年度に引き続き全般に低調であつた。47年度の輸送活動指数の伸びは国内貨物で7.3%増と前年度の伸び(4.2%)を若干上回つたが,国内旅客は4.9%増(前年度13.5%増)と低く,国際貨物は0.7%減(前年度10.4%増)となり,国際旅客のみは出国日本人数の大幅増を反映して30.2%増(前年度17.4%増)と好調であつたが,総合では5.7%増(前年度9.3%増)にとどまつた。