3 廃棄物問題と輸送


  最近,生産や流通の過程あるいは消費に際して排出される廃棄物の処理が無視しえない問題としてクローズアツプされてきている。特に大都市においては,各家庭から排出されるゴミを主とする一般廃棄物の他,各種産業活動を通じて出される産業廃棄物も莫大であり,処理施設の供給不足,交通混雑による定期収集運搬の確保の困難等から大きな社会問題となつている。
  例えば,東京23区では,所得水準の上昇に伴う大量消費時代を反映して,一般廃棄物は人口増加を大幅に上回るテンポで増大し,ここ10年間に倍増した。47年度の1日当りの収集量は1万2,000トンを越え,これを1人当りの排出量でみると 〔3−14図〕に示すとおり,他の主要都市に比較して東京,大阪といつた巨大過密都市ほど「使い捨て」文化が浸透して高い数値を示している。

  産業廃棄物については,これを排出する事業者の自己処理が原則とされ,実態を十分に把握できないのが現状であるが,その排出量は一般廃棄物を大幅に上回るものと推定されており,一般廃棄物と合わせた45年度の東京都の廃棄物の総輸送量は,5,000万トンと全貨物輸送量の12%を占め,交通混雑激化の一因となつている。
  コスト面からみても,現在一般廃棄物1トンを処理するには約7,000円の経費を要し,その70%以上が収集,運搬にかかる費用であり,廃棄物が悪臭等の環境面で弊害をもたらしていることなどを考え合わせると,廃棄物輸送も物流の一環として合理化,システム化を推進する必要がある。
  既に,欧米においては,廃棄物のベルトコンベヤー輸送,パイプライン輸送,真空輸送等の新システムの開発が盛んに行われており,スエーデンや西ドイツでは一部実用化されている。この新システムには,各戸から中間収集センターへと運ぶ短距離輸送システムと,収集センターと処理場を結ぶ長距離輸送システムとがあり,我が国でもその双方について導入,実用化の気運がとみに高まつている。
  しかし,排出された廃棄物を単に輸送という観点から受身の形で処理するという対症療法的対応だけでは,廃棄物問題の本質的解決は図り得ない。廃棄物問題に対する根本的対策としては,廃棄物を可能な限り出さないようにすること,廃棄物の再利用化など,物流を廃棄還元をも含めたトータル・リサイクルのなかで考えていくことが不可欠であろう。かかる見地から,使い捨て文化に対する反省を土台として単なるモデルチエンジや過剰包装の廃止など極力ゴミを出さないようにする生産者・消費者双方のコンセンサスの確立と,製品の廃品回収機構の整備等により外部不経済の内部化を図るなど廃棄物処理段階までを考えた企業理念への転換が要請されている。


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