総論
第1部

  昭和48年度の我が国経済は,前年度後半に引き続き,景気の上昇を続けていたが,49年に入って景気は急速に下降した。特に過剰流動性を背景とした需給のひっ迫,秋に発生した石油危機の影響などから,物価は急激な騰貴を続けた(48年度の卸売物価は前年度比22.6%上昇,消費者物価は同16.2%上昇)。これに対処して,預金準備率及び公定歩合の引上げ,公共事業の繰延べ等の総需要抑制策が強力にとられた。この結果,国民総生産は,名目では前年度比23.2%増と大きな伸びを示したが,実質ではこれと大きくかい離して5.5%増と40年度以来の低い伸び率にとどまった。これを四半期ごとの前年同期比でみると,49年1〜3月期は△4.2%と,49年に入ってからはマイナスになっている。個人消費支出は前年度に比べて名目で23.1%増となったが,実質では6.2%増とやはり40年度以来の低い伸びであった。
  次に,48年度の国際収支をみると,まず貿易収支では,輸出が前年度比32.3%増,輸入が同80.8%増といずれも輸出入価格の高騰により大幅に伸びたが,主として原油輸入価格高騰により,貿易収支の黒字額は8.0億ドルと前年度の10分の1に縮小した。また,貿易外収支では,海運17.5億ドル,航空3.3億ドル,旅行11.7億ドルといずれも前年度の赤字額を大幅に上回った。これらに資本収支等を加えた総合収支では134.1億ドルという膨大な赤字を計上した。
  このような経済情勢を反映して輸送活動は48年度前半好調であったにもかかわらず,後半落ち込んだため,年度を通してみると,国際貨物輸送等を除き,低調であった。まず国内貨物輸送は,前年度に比べ,トン数で5.2%減(47年度7.4%増),トンキロでは1.5%減(同3.2%増)と下回った。輸送品目(トンベース)では,鉄鋼以外の全品目が,輸送機関(トンベース,トンキロベース)では鉄道,自動車がともに前年度実績を下回った。最近では,46年度に貨物輸送量が前年度実績を下回ったことがあるが,トンキロベースにおいてのみであり,輸送品目では,金属機械工業品と林産品だけが,輸送機関では内航海運と鉄道が前年度より落ち込んだもので,48年度の落込みの方がはるかに大きかった。国内旅客輸送は,前年度に比べ,人員では3.0%増(47年度3.0%増),人キロでは3.9%増(同4.8%増)と,ほぼ前年度と同じ傾向を示した。
  48年の国際貨物輸送は,低調であった前年に対する反動増もあり,輸入の伸びと輸入における邦船の積取比率の向上を反映して,前年比21.0%増(47年0.1%増)であった。輸送品目では,鉄鉱石等の原材料が増加している反面,木材が前年度の6割以下に減少している。国際旅客輸送は,積取比率の低下などのため,前年比12.1%増(47年31.8%増)にとどまった。