4 関西国際空港


(1) 関西国際空港の経緯

  関西地区における新空港については,40年代はじめ頃からその必要性についての議論が関係地域を中心に起った。運輸省においても,関西地区における航空需要増等からみて新空港が必要であるとの認識にたち,43年度から調査費を計上し建設位置の決定のための調査を行ってきた。46年10月13日,運輸大臣は航空審議会に「関西国際空港の規模及び位置」について諮問し,同審議会は関西国際空港部会を設置し,以来3年近くにわたって50回に近い部会等を開催し審議を続けてきたが,49年8月13日答申するに至った。
  この間内外の経済・社会情勢の急激な変化に伴い,我が国の航空をとりまく環境も一段と厳しさを加えてきている。同部会の審議においても,そのような情勢を反映し,公害のない空港の建設の可能性についてできる限りの手段を尽して検討が加えられた。また空港の必要性についても,当初の理由の他に,大阪国際空港の騒音問題の抜本的解決を図るためという認識が強くでてきたことも特筆すべきことといえる。今後は,答申において最適地とされた泉州沖について,関係地域の理解と協力を得て空港建設の具体化を急ぐ必要がある。

(2) 調査概要

  航空審議会に諮問する以前においても,また諮問後,航空審議会で適正な審議が尽されるためにも,運輸省航空局は基礎的な資料となる各種の調査を行ってきた。調査内容の概略は次のとおりである。
 @ 自然条件(気象,海象,地象)
 A 人文条件(既存権益との調整,周辺地域計画等)
 B 空港基本計画(空域,管制,基本施設,旅客貨物施設等の空港内施設,アクセス施設等)
 C 環境条件(騒音,大気汚染,潮流変化,海水汚染等)
 D 建設技術(工法,施工計画,資材計画等)
 E 経営管理(需要,必要性,管理運営事業主体等)
  これらの調査をするに当って,43年度から48年度にわたって約10億円の調査費を要した。
  上記いずれの項目についても新空港の規模と位置を決定するためには重要であるが,特に環境条件等周辺地域との係わりに関する調査については,細かく意を用いている。

(3) 答申の内容

  航空審議会の答申は,新空港の規模と位置に関し次のように述べている。
  「関西国際空港は大阪国際空港の廃止を前提として,その位置を大阪湾南東部の泉州沖の海上とし,当面その規模を,海上の国際空港として最小の単位となる長さ4,000メートルの滑走路1組(少なくとも300メートルを距てた2本の平行な滑走路)に長さ3,200メートル以上の補助の滑走路1本を加えたものとすることが望ましい。ただし,空港の精確な位置は,現地を詳細に調査した上で決定されるべきである。」
  このような内容となった根拠は答申説明書に細かな説明が加えられているが,その概略は次のとおりである。
 @ 新空港は,大阪国際空港の騒音問題の抜本的解決を図ること及び関西地区における航空輸送需要の増加に対処することのために必要である。
 A 環境問題については,海上空港とすることにより,航空機騒音や大気汚染による市街地等の環境の破壊を避けることができる。また,海上に空港をつくることにより新たに生ずる環境への影響も最小限にすることが可能である。
 B 位置については,4つの候補地を空港機能,環境保全,地域計画等の見地から総合的に評価した結果,泉州沖の海上が最も望ましい。
 C 新空港の実現は,関係地域の受け入れの意志いかんによる。政府がその計画を決定するのは,関係地域社会との合意が成ったときである。


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