3 航空


(1) 日米航空協定をめぐる動き

  我が国は先に述べたごとく,今や世界の国際航空市場において重要な地位を占めている。
  なかでも日米間の航空輸送は,両国間の緊密性を反映して,50年には,訪日外客数で米国が第1位で,全体の34.0%を占め,また,訪米外客数ではその隣接国であるカナダ,メキシコをのぞくと,我が国が第1位となっている。また我が国航空企業の路線別収入においても,50年度には太平洋路線の収入が国際線全体の収入の42.6%を占め,日米航空輸送は極めて重要なものとなっている。
  一般に,国際定期航空路を開設するに際しては,2国間で航空協定を締結するのが原則であるが,我が国と米国との間にも,平和条約締結の翌27年に航空協定が締結された。しかし,この協定は,当時既に米国航空企業が我が国に乗り入れていた事実と日米間の圧倒的実力差を背景に,その内容は当初から実質的に不均衡なものであった。我が国は,かかる日米間の航空権益の不均衡を是正するため,米国との間で交渉を重ね,これまでにニューヨーク経由世界一周線,アンカレッジ経由ニューヨーク大圏コース及びグアム線等を獲得したが,現在もなお,@米側の発地点であるシカゴ,シアトル等への我が国の乗り入れが認められない等の日米間路線面での不均衡,A米国の以遠権が無制限であるのに対し,我が国は中南米等への以遠権が制限されるなど,以遠権における不均衡,B航空企業数,便数といった輸送力面での実質的不均衡が存在している。
  日本人訪米者数は,日米航空協定が締結された27年には米国人訪日者数の約3分の1であったのが,40年代後半にはこれを上回り,50年にはその比率が逆に3対1にまで拡大している。これに対し,上述のような航空権益の不均衡の存在から,50年における日米間の輸送力シェアは,旅客においては日本31%に対し米国56%(ほかに第三国13%),貨物においては日本32%に対し米国59%(ほかに第三国9%)となっており,したがってまた50年の航空企業収入も米国は日本の2倍以上の実績をあげている。このような情勢にかんがみ,我が国としても現在,現行の日米航空協定を全面的に見直し,両国航空権益の不均衡を是正するための交渉を鋭意行っている。
  なお世界においても,英国が最近英米航空協定を航空権益不均衡を理由に破棄し,またイタリアもかかる米国との間の不均衡の是正を要求しているなど,米国をめぐる世界の航空関係は変革をせまられている。

(2) 国際航空の発展と空港問題

  近時,我が国の国際空港においては,施設面における航空機発着処理能力が限界に達していること,騒音問題が深刻化し夜間,早朝における発着が規制されていること等により,便数の増加が極めて困難で,我が国をめぐる国際航空路線の今後の発展を図ることは著しく困難な状況に立ち至っている。
  たとえば,東京国際空港では,現在1日当たりの定期便の発着回数を440回(うち国際線148回)に凍結するとともにジェット機の発着禁止時暖帯を原則として午後11時から翌朝6時までとするなどの発着時間規制を行い,また,大阪国際空港においては,更に厳しい発着規制を行っている。したがって,我が国に定期便を乗り入れている外国航空企業数及び便数とも,47年以来頭打ちの傾向にある。
  このように我が国の空港事情によって相手国の乗り入れ便数を制限する以上,我が国の相手国への乗り入れ便数についても同様の制限をうける恐れがあり,現に大阪空港発着の制限を受けた英国は,我が国に対し報復措置をとるに至った。
  また,我が国は27年に米国との間で航空協定を締結して以来,20年代末で7か国,30年代末で20か国,40年代末で31か国,そして現在も引き続きこれら31か国との間で航空協定を締結しているが,このほかにも51年10月現在で30か国から協定締結の申し入れがなされているほか,多数の国から増便要求がなされている。50年度には協定締結,路線・便数の変更等について,21か国と延べ28回にわたって航空交渉を行ったが,上記のような我が国の空港事情もあるため,これら諸国との交渉は容易に進められない状況にあり,50年度においては新たな航空協定は締結されなかった。
  これまで我が国をめぐる航空輸送需要の増大に対しては,航空機の大型化によって対処してきたが,石油危機後の世界不況から航空輸送は一時伸び悩んだものの,今後景気の回復とともに航空輸送需要はさらに増大しつつあり,したがって今後,我が国をめぐる国際航空の発展のためには,新東京国際空港の早期開港や関西国際空港の建設など,その施設整備が急がれるところである。

(3) 国際機関をめぐる動き

  国際民間航空の健全な発達を図るための国際協調の場として,国連の専門機関であるICAO(国際民間航空機関)が設けられており,ワルソー条約の改正をはじめとする航空運送人の責任の問題航空技術の国際的統一基準の作成等の技術問題等につき検討が行われている。50年度にはワルソー条約改正については,貨物条項改正議定書が採択されたほか,技術関係では,耐空性委員会第11回会議が開催され,航空機の性能等につき討論がなされた。しかし最近運賃問題や輸送力問題についてもICAOの場で検討しようとする動きがみられるようになり,52年春には,これらの問題に関する会議がはじめてICAOで開催される予定になっている。
  また,現在,国際定期航空運賃については,IATA(国際航空運送協会)における協定運賃が各国の認可を経て実施されることになっているが,最近協定自体がIATA内部において成立しないこともあり,また,IATAに加盟しない航空企業が運賃に関し独自の動きを見せるなど,IATAを中心とする国際航空運賃体系の混乱が見られるようになってきた。かかる運賃問題については,これまで2国政府間で協議が進められてきたが,前述の通りICAOの場においても,運賃問題につき検討を加えようとする動きがでてきたのが注目される。

(4) ハイジャック等の防止

  一般に国際航空輸送の健全な発展を図るためには,航空輸送の安全を確保することが必要であり,とくにそのためには,近時ひん発しているハイジャック等の違法行為を防止することが急務である。現在,このような違法行為の犯人の引き渡し,処罰裁判権等に関し,東京条約,へーグ条約及びモントリオール条約が締結,発効しており,我が国においては,これら条約が国内法化されている。今後とも我が国は,航空輸送の安全を確保するため,違法行為の防止について国際協調を一層推進していく必要があろう。


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