3 トラック輸送合理化の方向


  トラックを営業用と自家用にわけて,その保有台数と輸送量の関係を示したのが 〔2−3−33図〕である。保有台数ではわずか5.2%,35万3,000台の営業用普通車(うちダンプ車約2万3,000台)が輸送トンキロの51.7%を輸送している。また,保有台数で11.3%,82万2,000台(うちダンプ車約24万台)の自家用普通車は全体の34.6%を輸送しているものの,前述したように特殊な産業の特殊な品目の輸送を主体としている。保有台数で82.4%を占める自家用小型車は,前述したように輸送以外の附帯業務等を兼ねて使用されており,輸送トンキロの分担率は12.5%である。

  トラック輸送の指標を営業用と自家用,普通車と小型車にわけて眺めてみると 〔2−3−34表〕のとおりである。平均輸送キロは,自家用は普通車,小型車ともに約20キロメートルと営業用普通車の3分の1弱で,比較的短距離の分野で使用されている。トラックの経済性をトラックが実際に稼働したか否かを示す実働率及び提供輸送能力がどの程度有効に使われたかを示す積載効率の2点についてみてみると,実働率は,40年代半ばはかなり上昇したが48年度以降は不況の影響により低下しており,50年度は40年度の水準をも下回っている。営・自及び普通・小型別では営業用小型車が一番高く,以下営業用普通車,自家用小型車,同普通車の順となっている。積載効率は,営・自及び普通・小型の別によって様々な推移を示しているが,営業用普通車が一番高く,以下自家用普通車,営業用小型車,自家用小型車の順となっている。特に目立つのは,自家用小型車の50年度の実働1日1車当り輸送トン数が45年度に比較して半分以下になっている点であり,この間保有台数は増加を続けていることからみても,その使われ方が特殊であることをここでも示している。普通車と小型車はその使途に相違があるので,各々普通車・小型車同士で比較すると,営業用の方が自家用より経済性が高い。

  しかし,前述したような自家用トラックの使用実態からみて輸送コストの面からのみ自家用輸送の経済性を論ずることは必ずしも適当でない。したがって,自家用輸送の営業用輸送への転化はなかなか困難な問題であるが,営業用の利用の促進は,個々の輸送におけるコストを節約し,国民経済的にみても最小の投入量で最大の効果をあげることができ,また,現在問題となっている交通総量の抑制の手段としても有効であるから,今後とも自家用トラックによる輸送を営業用トラックに吸収するよう図っていく必要がある。そのためには自家用トラック利用の輸送需要の質的要求を見極め,営業用輸送で代替可能な輸送分野では,営業用トラックの提供サービスをこれに合致するよう改善していかなければならない。
  次に,大都市における貨物輸送についてみると,六大都府県におけるトラックの輸送量は,45-47年度をピークとして,48年度以降は3年連続して減少しているが,特に小型車の落込みが著しい 〔2−3−35図〕。しかし,この間走行キロは輸送量の減少に見合う程には減少しておらず,積載効率が低下している 〔2−3−36図〕, 〔2−3−37図〕

  大都市は,貨物の発生,到着地として全国の域間輸送に大きなウェイトを占めているとともに,域内においても膨大な量の生産物品及び生活物資を流動させている。これら大都市における貨物輸送をほとんど一手に引き受けているのがトラックである。鉄道,船舶で流出入する貨物であっても末端輸送はトラックに依存せざるを得ない。自動車輸送は,都市の膨大な貨物輸送需要に対応し,大都市の道路交通混雑,大型車の都心乗入れ規制等による運行効率の低下,労働力コストの上昇等の制約条件を乗り越えて輸送の効率化を図り,物価の安定,都市生活の円滑化等に資する責務を負っている。
  このような要請に応えて,30年代の後半から幹線輸送と都市内集配輸送の分離が始まり,長距離幹線輸送には高速化,大型長大化又はトレーラー化した車両が使われる一方,都市内の集配には都市内の交通条件に適合した小型車が使用されるようになった。これに伴い,都市外周部にトラックターミナルの整備が進められた。
  このような施設面の整備と並んでトラック事業経営の近代化も推進されてきた。トラック事業は,ごく少数の大企業と圧倒的多数の中小事業者から構成されているが,これら中小トラック事業の集約化をすすめ,生産性の向上と輸送コストの低減を図るため,40年に中小トラック事業が中小企業近代化促進法に基づく指定業種に指定され,その近代化が進められ,さらに,48年度からはトラック事業が特定業種に指定されて,事業間の結びつきに重点を置いた効率的輸送システムの形成発展を図るため,都道府県単位のトラック事業の構造改善事業が推進されている。
  また,大都市における集配輸送の合理化及び交錯輸送の削減を推進するため,現在推進又は検討されているものに集配送のシステム化と共同荷物授受施設の設置がある。前者については,共同集配,一括出荷,納品代行等の共同配送システムが一部問屋地区等で既に実施に移されており,また,一般小口貨物について複数の区域トラック事業者が担当区域を定めて相互に連絡運輸協定を結び,積合せ許可を受けて都市内の輸送を行なっているものもある。このように効率化された集配送システムが個々の荷主の自家用トラックによる輸送及び荷主に個別に結びついたトラック事業者による輸送の一部を代替しつつある。また,新聞,牛乳,百貨店商品等,われわれの日常生活に密着した物資一般について団地における共同宅配も検討されおり,51年6月から7月にかけて東京地区(板橋区高島平)及び大阪地区(堺市泉北ニュータウン)において百貨店商品についてモデル事業を実施した。さらに,高層ビルディング,大規模団地,商店街等の集配における縦持ち,横持ちを解消し,集配効率を高め,あわせて交通混雑の緩和,エネルギー節減等を図ることを目的として輸送の末端に共同荷物授受施設を設置しようという計画についても現在検討されている。
  近時,交通公害の防止,省エネルギー等の要請がさらに強まってきており,また,交通総量の抑制に資するためにも,トラック事業は,今後,その共同化,一元化を一層推進し,より良い輸送システムの開発に努めることが重要であろう。


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