4 地方交通対策


  人口階級別に45〜50年の人口増減をみると, 〔2−1−40表〕のとおり,市部ではいずれの人口階級でも増加を示しており,人口50万以上100万未満の都市の仏9%増加を最高に,5万以上100万未満の各中都市階級で10%以上の増加を示している。これに対し,人口100万以上の大都市では2.5%増と全国平均の人口増加率6.9%を下回っており,こり結果,大都市人口の比重が低下し,中都市人z口の比重が上昇した。一方,町村では,人口1万以上の各階級で人口増加を示しており,特に,3万以上では37.4%と高い増加率を示している。このように,人口の定着化傾向がみられるが,一方,人口1万未満の各階級では人口減少を示しており,特に,5,000未満の町村では9.2%の減少で,小規模町村では過疎化がなおも進行していることが認められる。

  三大都市圏以外の地域における旅客輸送人員の輸送機関別分担率をみると, 〔2−1−41図〕のとおりであり,モータリゼーションの急速な進展により自家用乗用車が急速に伸び,この影響を受けて,鉄道及び乗合バスのいわゆる公共輸送機関の分担率は漸減傾向にある。

  このような利用者の減少と人件費を始めとする輸送コストの上卿により,地方における鉄道及びバスの経営は年々圧迫を受けている。特に,大量輸送機関としての性格の強い鉄道は,国鉄,民鉄とも経営的には重大な影響を受けてきており,国鉄においては,いわゆる地方交通線問題として国鉄経営上大きな負担となっており,また,民鉄においては,経営の合理化に努めてきたにもかかわらず,その経営状況には厳しいものがあり, 〔2−1−42図〕のとおり路線の廃止,乗合バスヘの転換を余儀なくされている。

  しかしながら,比較的人口規模の大きい地方都市においては,鉄道は特にラッシュ時において,なお相当量の輸送量を維持し,都市交通機関として機能しており,特に広域ブロックの中核都市等人口規模の大きい都市では,地下鉄,モノレールの導入が検討されるようにたり,これらの都市のうち,46年に札幌で地下鉄が営業を開始したほか,他の数都市でも地下鉄,モノレールの建設又は導入計画が進められている。
  一方,乗合バスは,地方都市の主要な公共輸送機関として,又は,軌道系の大量公共輸送機関の整備している都市についてはこれらの補完機関として重要な役割を果たしており,その効率的な運行が期待されているが,地方都市もまた大都市と同様に交通渋滞による運行効率の低下に悩まされている。このため,円滑な都市機能を維持するために,これらの地方都市においても必要に応じて,大都市について述べたようなバスの機能の確保とサービスの改善のための措置を講じてきている。
  次に,過疎地域については,人口の減少によって輸送需要が稀薄になっていることに加えて,自家用乗用車の普及によって,バス等の輸送人員が減少し,これに加え,人件費等コストの大幅な上昇もあって,これら公共輸送機関の多くは不採算化しており,運行回数の削減, 〔2−1−42図〕に示すように路線の休廃止等,サービスの悪化をもたらし,営業の維持すらも困難になっているものが多い。
  また,離島航路においては,輸送量が減少し経営が悪化しており,離島航空路,特にSTOL路線の経営状況も芳しいものではない。
  以上のような地方交通における輸送構造の変化に対処して,地域住民の生活上必要不可欠な公共輸送サービスを確保するため,中小民鉄,過疎バス,離島航路及び離島航空路に対し,路線維持のための補助,バス車両購入費補助国鉄に対し地方交通線の運営のための補助,日本鉄道建設公団による国鉄地方開発線等に対する全額政府出資,完成後無償貸付等の助成を行うとともに,地域の実情に応じて,鉄道輸送のバス輸送への転換,路線バスの市町村代替バスヘの切替え等の措置がとられてきている。国による地方バス路線維持費補助及び中小民鉄欠損補助額の推移は 〔2−1−43図〕のとおりである。

  輸送需要の少ない過疎地域において,ミニマムとしての輸送を確保するためには自動車が主たる交通手段となるが,このため,今後とも,所要の道路整備を行うとともに,需要量に応じバス路線の確保や運行改善を図り,地域の実情に応じて乗合バス以外の形態の輸送サービスの活用についても検討していく必要がある。また,地方における公共輸送サービスの確保については,その利用範囲が主として当該地域の住民に係るものであり,地域住民の日常生活の足の確保の問題であることに鑑み,国は,関係地方公共団体と密接に協力して,これらの解決を図っていくこととしている。
  なお,国鉄の地方交通線は,その運営による欠損が巨額となり,国鉄が企業体として独立採算性を志向した自主経営を行う上で障害となっている現状に鑑み,51年来運輸政策審議会の国鉄地方交通線問題小委員会において本件問題について検討を行ってきているところであるが,52年1月,同小委員会から中間報告「国鉄ローカル線問題について」が提出された。この中間報告は,地域住民の意見を反映させるために協議会を設置すること,この協議会において,一定期限内に地方交通線の取扱いについて地元において今後とるべき案を選択させること,などの基本的措置を柱とした対策を提言しているが,本件問題については同委員会においてさらに検討することとしている。


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