6 航海の安全と海洋汚染の防止


(1) マラッカ・シンガポール海峡安全通航問題

  マラッカ・シンガポール海峡は,我が国にとって輸出入貨物,特に輸入原油の枢要の輸送路であるため,我が国は同海峡の航行安全には重大な関心を払い,種々の航行安全対策を実施してきた。
  しかし,こうした努力にもかかわらず,50年1月シンガポール海峡で大型タンカー祥和丸の座礁事故が発生したため,我が国の海運界は当面の安全対策として,「大型タンカーのマラッカ・シンガポール海峡通航安全対策」を策定し,事故の絶滅を期することとなった。
  沿岸3か国は,このような海峡油濁事故の反省から,同海峡の安全航行に関し,専門家会議を開催し安全対策を検討してきたが,その検討の結果は52年2月沿岸3か国政府協定としてまとめられた。その協定の主な内容は,@船底下の余裕水深(UKC:UnderKeelClearance)3.5mの設定,A3か所の危険水域における分離通航方式(TSS:TrafficSepara-tionScheme)の設定,B航行援助施設の改善,C海図及び潮汐,潮流データの改善,等となっているが,3か国としても協定の実施についてはさらに詳細な検討が必要であるとしている。
  一方,我が国は同海峡の航行の安全を確保する観点から航行援助施設整備を引き続き進めるほか,このたび沿岸3か国と共同で潮汐,潮流調査を3年計画で,また,統一海図の編纂を第一段階については2年計画でそれぞれ行うこととなった。

(2) タンカー規制問題

  米国のカーター大統領は,51年から52年初めにかけてのタンカー事故の多発に鑑み,52年3月タンカー規制強化策を提案した。その主な内容は1973年海洋汚染防止条約の早期批准,船舶の構造・設備に関する基準の強化(二重底,分離バラストタンク(SBT),イナートガス(不活性ガス)システム,衝突予防装置付援助レーダーの設置,非常操舵装置の改善),船員の資格及び訓練に関する国際的な一定基準の早期作成等である。
  米国の提案を受けた政府間海事協議機関(IMCO)は現在その下部機関である海上安全委員会(MSC)及び海洋環境保護委員会(MEPC)において検討させており,53年2月に全権会議が予定されている。

(3) サブスタンダード船問題

  世界の用船市場の主たる用船源となっているとともに,我が国貿易物資の円滑な輸送に大きな役割を果たしている便宜置籍船の中には,先進海運国の船舶に比し,安全上一定の基準に達しない船舶が多いのではないかとする議論があるが,安全上一定の基準に達しないいわゆるサブスタンダード船の問題は,国際約に船員の技能水準の引上げを図る等の観点から検討されるべきものであり,IMCO,国際労働機関(ILO)などの国際機関でも種々検討が進められている。
  IMCOではMSCの下に訓練当直基準小委員会(STW)を設置し,海上人命安全条約又は満載吃水線条約で定める基準に満たない船舶についての船員通報制度を実施することについて既に合意しているほか,船員の訓練及び資格に関する国際条約についても検討が進められている。また,ILOにおいても51年10月には商船の最低基準に関する条約及び商船の基準の改善に関する勧告が採択され,船籍国の政府は,安全性の確保並びに適切な労働条件の確保のために法令を制定し,有効に規制すべきであるとされた。
  このほか経済協力開発機構(0ECD),UNCTAD等でも便宜置籍船全般にわたり検討が行われている。


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