5 便宜置籍船とサブスタンダード船問題


  便宜置籍船の問題は,国際機関等の場で多方面にわたり検討が行われている。
  国連貿易開発会議(UNCTAD)では便宜置籍船問題を経済的側面から検討しており,同事務局は,便宜置籍船の増加が発展途上国の船腹量拡充の阻害的要因として働いているため,これを解明し秩序づけることで,発展途上国海運の発展が図られるのではないかと報告している。53年2月,44か国が参加した特別作業部会では,この報告を検討した結果,@船舶と旗国との関係を定義すること,A次回UNCTAD総会において,便宜置籍船の実態等について今後検討すべき事項を決定すること,B検討にあたっては,発展途上国に与える経済的影響を十分考慮することを決定し,今後さらに検討を続けることとなった。
  他方,便宜置籍船の中には船体,機関,通信,救命及び消火用の機器等が関係条約に定められた基準以下(サブスタンダード)であるため,航行,人命財産の安全等の面で問題のある船舶が多いといわれているところがら,我が国をはじめ先進国の大多数は便宜置籍船問題を主としてサブスタンダード船問題の側面からとらえ,政府間海事協議機関(IMCO),国際労働機関(ILO)等をはじめとする種々の国際的な場で,サブスタンダード船排除のための技術的な検討を進めてきた。
  このような情勢の中で,昭和53年3月フランス・ブルターニュ半島沖で起ったりベリア籍タンカー「アモコ・カディス」号の座礁事故は,タンカー事故史上最大の原油流出事故となり,フランス沿岸に大きな被害をもたらしため,フランス政府はIMCQ,OECD等の場において,海難救助制度の見直し,油濁損害の補償制度の見直し等に加え,サブスタンダード船対策の強化,便宜置籍船の態様及び存在の是非についての再検討の必要があることを強く訴えている。
  発展途上国は便宜置籍船問題を南北問題,特に発展途上国海運に対する経済的影響の問題としてとりあげつつあり,また便宜置籍船問題は単なるサブスタンダード船問題としてだけでは解決できない要素を含んでいると主張する国もでてきているため,これらの問題に関する今後の進展は予断しがたいが,我が国としては,サブスタンダードの側面から,安全問題,海洋汚染問題等を中心にその対策に力を入れていくべきであるとの考え方にたっている。


表紙へ戻る 次へ進む