3 空港周辺対策


  発生源対策あるいは空港構造の改良を実施しても,なお騒音の影響が及ぶ地域については,「航空機騒音防止沫」に基づき,空港周辺対策を行っている。

(1) 特定飛行場における対策

  航空機騒音防止法に基づく対策が実施される特定飛行場としては,東京国際,大阪国際,福岡,鹿児島,函館,仙台,松山,宮崎,新潟,大分,熊本,那覇,高知,広島,名古屋及び新東京国際空港の16空港がある(名古屋は54年5月指定)。これらの特定飛行場においては,次のような各種の空港周辺対策事業を行っている。
 ア 42年度以降,学校,病院等公共施設の防音工事及び公民館等共同利用施設の整備に対して補助を行っている。補助対象施設として,51年度に隣保館,52年度に図書館,53年度に精神薄弱者更生施設を加え,毎年制度の充実を図っている。補助対象施設数及び補助額は,53年度は154施設,99億円であり,54年度は161施設,99億円の補助を行うこととしている。
 イ 民家の防音工事に対しては,49年度より助成措置を講じてきており,年々事業の拡大を図り53年度までの累計で28,535世帯に対して426億円の補助を行った。制度面については,51年度からは補助率を実質99%に引き上げ,52年度からは補助対象室数を拡げ5人以上の家族がいる家庭の大部分について2室まで防音工事を行うなど充実を図ってきた。54年度からは「航空機騒音に係る環境基準」の最終目標の達成をめざし民家防音工事の充実化を図ることとし,対象室数については家族数に応じて最高5室まで対象室数を増加するとともに,対象区域たる航空機騒音防止法上の第種区域の基準値をWECPNL85から80に改め,大阪国際空港等11空港において対象区域の拡大等を図った。このような民家防音工事の充実化により,54年度は15,246世帯に対して対前年度比242%増の506億円の補助を行うこととしている。
 ウ 空港周辺の騒音激甚区域から移転する者に対しては移転補償を行っている。53年度までに累計で586億円の事業を実施してきており,54年度には,127億円の事業を実施することとしている。
 エ 空港に近隣する周辺地域においては,移転補償跡地等を緑地帯その他の緩衝地帯として整備することとしており,51年度以降大阪国際空港周辺地域で緩衝緑地造成事業を実施している。54年度も引き続き同空港及び福岡空港周辺で1.5億円の予算で緩衝緑地事業を推進することとしている。

(2) 周辺整備空港における対策

  特定飛行場のうち周辺地域が市街化されており計画的整備を促進する必要があると認められる大阪国際空港及び福岡空港については,周辺整備空港に指定し,関係都道府県知事が策定する空港周辺整備計画に基づき,国と地元地方自治体の共同出資で設立された空港周辺整備機構が固有事業として再開発事業,代替地造成事業等を行っている。このほか,両機構では空港周辺対策を統一的に扱えるよう,国からの受託事業として移転補償,緩衝緑地造成事業,その他の事業として民家防音工事助成を実施している。大阪国際空港周辺整備機構及び福岡空港周辺整備機構の予算は, 〔III−19表〕, 〔III−20表〕のとおりである。

  このほか,大阪国際空港については,大気汚染測定センターの設置,騒音測定塔の増設,地元地方公共団体による空港周辺地域営業者融資制度の創設,移転者のための低利融資制度等の創設のほか,同空港周辺の「新しい街づくり」を促進するなど種々の航空機騒音対策の強化が図られている。「新しい街づくり」については,航空機騒音防止法に基づき府県知事の策定した大阪国際空港周辺整備計画を基礎としつつ,関係住民の意向をも反映した具体的な地区整備計画を策定するべく,52年7月,国,関係府県,関係市,空港周辺整備機構及び学識経験者より構成される「大阪国際空港周辺整備計画調査委員会」が設置され,数次にわたる検討を重ねたうえで,同年12月,関係地区における住民説明が行われ,現在住民意見の集約が図られている。これと併行して,地区整備計画を実現していくための手法について基本的検討を行うこととしている。なお,53年度よりこうした手法の一つとして,関係地方公共団体が移転跡地等を利用して公園・広場等の周辺環境基盤施設を整備する場合にその費用の一部を補助する制度が発足し,53年度1.7億円の補助を行った。54年度は補助対象施設として防災目的の細街路を新たに追加し,2.6億円の補助を行うこととしている。

(3) その他の対策

  以上に述べた航空機騒音防止法に基づく対策のほか,(財)航空公害防止協会に補助を行い,テレビ受信障害対策を進めている。補助対象区域は54年現在,東京国際,大阪国際,福岡,宮崎,鹿児島,那覇及び名古屋の各空港の周辺地域である。
  このほか,騒音監視体制の充実を図るため,現在,東京国際空港周辺に2基,大阪国際空港周辺に10基,福岡空港周辺に2基の騒音測定塔を設置している。
  このように,空港周辺対策は年々拡充され,その予算も年々大幅な伸びを示し,54年度は前年度比65%増の758億円となっている 〔III−21図〕


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