3 海外旅行の円滑化及び健全化


  前述のとおり,日本人海外旅行者数は急激に増加しているが,これに伴い種々の問題が生じてきた。
  第一に,旅行者数の増加により,海外において事故,トラブル等に遭遇する旅行者も増加していることである。これは,(社)日本旅行業協会による海外旅行経験者を対象とする調査で,旅行中盗難,詐欺等の事故や現地人とのいさかい等のトラブルに会った旅行者が全体の約15%を占め,その比率が51年及び52年の調査でほぼ同一というところがら明らかである。
  第二に,日本人旅行者の行動マナーについて現地の批判があることである。これは,前述の(社)日本旅行業協会の調査において回答者の過半数が日本人旅行者のマナーが悪いとし,具体的には,大声,買物態度,服装,過度の飲食等を挙げていることからも推測される。
  第三に,旅行者の個人旅行志向が強くなったため,団体旅行の場合のように旅行業者が旅行内容や注意事項を事前に説明する機会が失われ,現地の旅行事情や習慣等を充分承知せずに出発する例が見られ,それが現地での事故やトラブルにつながる場合もあると考えられることである。
  このような問題の改善は国際間の相互理解と親善を増進する上において極めて重要な課題となっている。
  このため,運輸省は、旅行中のトラブル等は旅行者が現地の旅行事情について不案内であること,旅行に関する情報に不足していること等に起因するとの認識から,国際観光振興会の業務に日本人海外観光旅客に対する旅行に関する情報の提供及び相談に応じて旅行事情につき案内を行うことを加えるため,国際観光振興会法の改正の準備を進め,同改正法は54年5月に施行された。これにより,日本人海外観光旅客の旅行の円滑化を図ることによる国際観光の振興,ひいては国際親善の増進が期待される。
  このほか従来からの施策として,海外旅行マナーに関するポスター及びパンフレットの配布による国民に対する海外旅行マナーの周知及び旅行業者に対する不健全旅行不関与,添乗員教育の強化等についての指導を継続して行い,海外旅行の健全化に努めている。


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