1 ホテル,旅館


ア 整備及び利用状況

  昭和53年末現在の宿泊施設の状況は,旅館業法により営業許可を受けているホテルが1,662軒,旅館が82,779軒であり,前年に比べてホテルは18.9%増,旅館は0.3%減となっている。一軒当りの客室数はホテル86.1室,旅館は11.4室となっている。このうち,外客の接遇に適する施設として,国際観光ホテル整備法により登録されたものはホテル386軒(全体の23.2%),旅館1,592軒(同1.9%)で1軒当りの客室数では登録ホテル161.7室,登録旅館49.0室となっている。
  登録ホテル,旅館の客室整備状況は 〔IV−16表〕のとおりであるが,近年地方都市ホテルの客室増加が目立っている。
  一方,近年大量輸送時代の到来及び地価の高騰等に対処するため,ホテル,旅館の大規模高層化が進展しており,登録ホテルにおいて,客室数が1,000室を超えるものが6軒(東京5,大阪1),登録旅館において200室以上のものが全国で12軒に及んでいる。更に,主として都市においては,来訪外客の大衆化傾向,ビジネス客を中心とする日本人のホテル需要の増大に伴い比較的低料金で利用できる中級の都市ホテルの増加が目立っている。
  これらの宿泊施設のうち,ホテルの客室利用率を主要ホテルについてみると,53年の客室利用率は73.6%となっており,石油危機に端を発した景気後退の影響によって低下していた客室利用率にもやや持直しの兆候がみえはじめている。

イ 経営状況

  主要ホテル,旅館の経営状況について,まず経営規模をみると 〔IV−17表〕のとおり,ホテルでは会社経営が99.4%であり,しかも資本金5,000万円を超えるものが78.5%であるところがらみて大企業的色彩が濃いのに対して,旅館では個人経営が4.1%,法人経営のものにあっても資本金1,000万円以下のものが56,2%を占め,中小企業の色彩が強い。
  主要ホテルの収支の構成をみると室料,飲食料が収入の約3分の2を占め,人件費,材料費が支出の過半数を占めている。
  次に主要ホテルの資産,資本構成をみると固定資産の占める割合が631%と全産業の253.4%に比べて著しく高い。また,自己資本比率は全産業より若干下回っており,負債比率も全産業以上となっている。

ウ 国の施策

  来訪外客の増大に対処し,都市機能の充実を図るため,ホテル及び旅館の整備に対して,日本開発銀行等の政府関係金融機関が融資を行っている。特にこれらの融資制度を通じて来訪外客の大衆化傾向,国民の旅行需要の増大等に対処するため比較的低料金で利用できる中級ホテル,旅館の整備促進を図っている。
  また,国際観光ホテル整備法第3条の規定に基づいて登録されたホテル,旅館に対しては,減価償却資産の耐用年数の短縮(国税)等税制上の特例措置を講じている。


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