2 運輸部門のエネルギー消費動向


  我が国の国内輸送機関で消費するエネルギー量は,石油換算で44年度には3,240万トンであったものが54年度には5,950万トンと,10年間で約2倍になった 〔2−1−50図〕

  輸送機関別のエネルギー消費割合をみると,自動車部門のエネルギー消費割合が高く,特に乗用車が高くなっていることが分る。
  一方,我が国のエネルギー最終需要に占める割合でみると 〔2−1−51図〕のとおり,輸送機関のエネルギー消費割合は53年度で国内輸送機関14%,国際輸送機関2%,あわせて16%となっている。43年度の消費割合が,国内,国際あわせて16%であったことから,エネルギー最終需要に占める割合に関する限り,10年前と変わっていないという結果となっている。

  また,これを石油のみについてみると,輸送機関のエネルギー消費割合は53年度で26%と,エネルギー全体でみた消費割合よりかなり高めの値となっており,運輸部門は他の部門に比べ石油依存度が高い分野であることが分る。
  次に,エネルギー消費効率の面から輸送機関のエネルギー消費動向をみると,54年度の主要輸送機関のエネルギー消費原単位(1人の旅客または1トンの貨物を1キロメートル運ぶために必要なエネルギー量)は, 〔2−1−52図〕のとおり,旅客部門では鉄道,営業用バスが小さく,貨物部門では鉄道,内航海運が小さくなっていることがわかる。即ち,エネルギー効率の点からのみ判断すれば,大量輸送機関が優れているといえる。

  しかし,エネルギー消費原単位はロードファクター(乗車効率,積載効率),速度等の相異によって大きく左右されるところがら,同一輸送機関でも地域,輸送形態によって大きな差異が出ることはいうまでもないことである。
  輸送機関ごとのエネルギー消費原単位の推移をみると 〔2−1−53図〕のとおり,貨物輸送では輸送機関全体としては52年度以降改善の傾向を示しているが,旅客輸送については悪化の傾向が続いているのがわかる。個々の輸送機関に着目すると,旅客部門では鉄道,バスが高エネルギー効率で推移しており,航空は大型機の導入によるエネルギー効率改善の傾向がみられる。乗用車のエネルギー消費効率は,52年度から53年度にかけてやや改善されたものの,全体としては悪化の基調となっている。乗用車の場合,48年の第1次石油危機以前は,燃費改善とトレードオフの関係にある排ガス対策等環境面の対策に重点が置かれていたが,第1次石油危機以降は,環境対策と同時に燃費改善にも力を注いでおり,今後燃費の良い車が普及するにつれ,エネルギー消費効率の改善が期待される。貨物部門では,鉄道が高エネルギー効率で推移しており,海運も50年度以降は改善の方向にある。トラックについては,46年度以降悪化してきていたが,エネルギー効率が特に悪かった自家用トラックの効率がやや改善されたことにより,52年度から54年度にかけてエネルギー消費原単位は改善の方向に向かった。乗用車等でも同様であるが, 〔2−1−54図〕のとおり,エネルギー消費原単位を左右する大きな要因はロードファクターであることから,トラック輸送における最近のエネルギー消費原単位の改善は,ロードファクターの向上によるところが大きいと考えられる。


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