3 運輸部門のエネルギー消費動向


  55年度にける輸送機関のエネルギー消費量は,国内輸送機関6,000万トン(石油換算,以下同じ),国際輸送機関1,000万トンであった。その内訳をみると,乗用車,トラック等自動車の消費割合が圧倒的に高く,全体の81%を占めている 〔1−5−12図〕

  我が国のエネルギー最終需要に占める輸送機関のエネルギー消費割合は,54年度において国際輸送機関3%と国内輸送機関14%をあわせて17%となっている。また,これを石油製品のみについてみると輸送機関の消費割合は29%となっており,石油消費の面からは運輸部門の消費割合は更に高くなっている 〔1−5−13図〕。エネルギー種類別に運輸部門のエネルギー消費割合をみると,ガソリン,軽油の消費割合が極めて高くなっている 〔1−5−14図〕

  次に,エネルギー消費効率の面から輸送機関のエネルギー消費動向をみると,55年度の主要輸送機関のエネルギー消費原単位(1人の旅客又は1トンの貨物を1キロメートル運ぶために要したエネルギー量)は, 〔1−5−15図〕のとおり,旅客部門では鉄道,営業用バスが,貨物部門では鉄道,内航海運がそれぞれ小さくなっている。

  運輸部門のエネルギー消費においては,特に自動車の燃料消費動向の影響が大きいが,最近はガソリン,軽油価格の急激な上昇により,エネルギー消費の伸び率はあまり大きなものとはなっていない。石油製品の卸売物価指数を,イランからの原油輸出が途絶した53年12月と比較すると,56年7月には,ガソリンは1・7倍,軽油は2.6倍と著しく上昇している。このような燃料油価格の急騰を反映して,55年度のガソリン消費量は,ガソリン使用車台数の増加(対前年度比2.4%増)にもかかわらず0.7%の伸びに,また,軽油の消費量は,軽油使用車台数の増加(対前年度比12.3%増)にもかかわらず3.5%の伸びにとどまった。また,消費者の低燃費車指向の高さを反映し,軽自動車販売台数は対前年度比22.3%増となっていることは注目される。
  運輸部門の燃料消費の特徴は,ガソリン,軽油など軽質な石油製品の消費割合が比較的高いことである。一方,近年の輸入原油は産油国の資源温存政策等により急速に重質化しており,今後ともこの傾向は続くものと予想される。原液が重質化すると,軽質な石油製品の生産得率が下ること,更に将来の我が国の輸入石油量の伸びにも限りがあることから,今後の輸送需要の伸びに伴う運輸部門の燃料消費量の増大を考慮すれば,近い将来ガソリン,ジェット燃料油,軽油を中心に燃料油の確保が困難になることも懸念されるところである。これに対し,ガソリンについては,原油の重質化にも対応した重質油分解装置が実用化されているなどにより,ある程度弾力的な供給の対応が可能であると見込まれるものの,軽油など中間留分の石油製品については,そのような装置は未だ開発途上の段階にある。したがって,将来にわたってこれら中間留分の石油製品の安定的供給を確保するためには,中間留分を得る分解装置の早期実用化が強く望まれるとともに,運輸部門としても,今後の石油供給の不安定化の強まりに対処するため,省エネルギー対策の一層の推進はもとより,石油代替エネルギーの開発と導入を更に積極的に進める必要がある。


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