3 国民の海外旅行の状況


  我が国の海外旅行者数は,所得水準の向上,手軽に利用できるパッケージツアーの普及等により年々増加の一途を辿ってきていたが,55年は, 〔IV−6表〕のとおり,対前年比3%減の約391万人となり,39年4月に海外渡航が自由化されて以来初めて前年の実績を下まわった。

  このように海外旅行者数が減少したのは,@国内経済活動の停滞により景気にかげりがみられたこと,A国民の多数を占める勤労者世帯の実質可処分所得が減少したこと,B54年後半から55年前半にかけて円が比較的安値で推移したこと,C54年7月以降,燃料油価格の高騰から国際航空運賃が相次いで値上げされたこと等により,国民が海外旅行に出かけるのを手控えたためと思われる 〔IV−7図〕

  55年の海外旅行者数の内容をみると次のとおりである。
  男女別では,男性は全体の71%に当たる約276万人で,女性は同じく29%に当たる約115万人であった。これを前年と比較すると,男性は5%,15.5万人減少したのに対し,女性は2%,2.6万人増加しており,女性の海外旅行志向が根強いことを示している。年齢階層別では,男性の場合,30歳代の海外旅行者数が約85万人(男性全体の31%)と最も多く,次いで40歳代約69万人(同25%)の順となっているが,55年は前年に比べ30歳代が約6万人,40歳代が約5万人減少している。これは,前述の@,Aのような経済的要因がこれらの層に最も影響したためと思われる。女性の場合は20歳代が約47万人(女性全体の41%)と圧倒的に多く,次いで30歳代約18万人(同16%)の順となっている。20歳代の女性の場合,結婚前に海外旅行を経験しておきたいという人,新婚旅行で海外に出かける人が多いためと思われる 〔IV−8図〕。旅行目的別では, 〔IV−6表〕のとおり,観光を目的とした海外旅行が全体の84%を占め圧倒的に多くなっている。しかし,観光目的の海外旅行者数は,これまで増加の一途を辿ってきていたが,55年は減少に転じた。これは,海外旅行者数が減少した主な原因と思われる前述したような経済的な要因が,観光目的の海外旅行者に最も影響を与えたためと思われる。

  海外旅行者の旅行先を受入地の統計によってみると 〔IV−9表〕のとおりである。台湾,ハワイ,韓国,香港等を目的とした旅行者が多く,日本からアジア・太平洋地域の近隣諸国への旅行が海外旅行の主流であることを示している。しかし,最近5年間のアジア諸国への旅行者数の推移をみると 〔IV−10図〕のとおりであり,台湾ハワイ,韓国,香港は依然として最も多くの旅行者が訪れているが,55年はいずれも前年に比べ減少しているのに対し,東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟の各国やグアムは着実に増加しており,日本人の海外旅行先の多様化の傾向がうかがわれる。


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