2 地震・火山対策


(1) 地震予知の推進

  (地震常時監視体制を強化)
  地震予知のための観測研究体制は,測地学審議会の建議の趣旨に沿い,地震予知推進本部において,関係機関相互の緊密な連携の下に整備が図られてきた。53年に制定された大規模地震対策特別措置法に基づき,東海地域が地震防災対策強化地域に指定された。気象庁長官は,庁内に設置された「地震防災対策強化地域判定会」の結果をもとに内閣総理大臣に同法に基づく地震予知情報を報告することとなっている。このため,気象庁では,海底地震計,埋込式体積歪計等の整備を行い,関係機関の協力を得て常時監視体制の強化を図るとともに,57年度には地震予知情報課を設置して,組織の強化を図っている。
  東海地域と並んで「観測強化地域」に指定されている南関東地域に対しても,埋込式体積歪計等を整備するとともに,56年度から年次計画に沿って,房総沖に海底地震計を整備中である。
  いわゆる直下型地震に関しては,その予知は現状では極めて困難であり,業務的に予知を行う段階に至っていない。このため,58年10月に気象研究所に地震予知を専門に担当する研究室を設置し,大学,関係機関と緊密に協力し,地震予知に関する実験的及び理論的研究の推進を図る計画である。
  一方,海上保安庁においても,地震予知に必要な基礎資料を得るため,関係省庁と共同して相模・駿河・南海トラフなどの海底地殻構造の調査研究等を行っている。特に,57年度には東京湾において,マルチチャンネル音波探査データの解析を行い,海底下数キロメートルまでの地質構造断面を明らかにした。

(2) 大中小地震観測と津波予報

  (津波警報の発表時間を短縮)
  気象庁は,日本及びその周辺の大中小地震を観測し,その震源と規模を決定して,津波予報,地震情報等防災上必要な情報を提供している。57年度には観測網を構成する地震計の改良,資料伝送網並びに体制を整備し,地震業務関連資料の収集・配信・処理の強化や津波予報・地震情報発表の迅速化を図った。また,日本海中部地震では,津波によって大きな被害が発生し,津波予報体制の充実,情報等の発表の迅速化が強く求められている。気象庁では,予報作業手順等を改善し,津波警報の発表時間の短縮を図っている。
  57年度には,長野県松代の地震観測所の地震検知能力を向上し,同時に東海,南関東地域の観測システムを補強するため,群列地震観測システムを整備した。このシステムは,松代町周辺の7地点に高感度地震計を設置し,地震の震源や規模を計算すると同時に,地震波の精密解析を行うものである。

(3) 火山対策

  (整備進む火山観測体制)
  火山対策としては,活動火山対策特別措置法の趣旨及び測地学審議会の建議に沿って観測体制の整備を進めている。気象庁は,全国約70の火山のうち,特に活動的な17の火山については常時観測を行い,その他の火山については火山機動観測班の基礎調査によって監視し,異常現象が発生した場合には,同観測班の緊急出動により臨時観測体制をとることとしている。57年度には,阿蘇山について,傾斜計,震動データ計数装置,計算解析機の整備を行い,北海道駒ケ岳については火山性震動観測装置の改良更新を行った。
  また,適時「火山情報」を発表し,火山現象による被害の軽減に努めているが,特に必要と認めるときは,「活動火山対策特別措置法」に基づく「火山活動情報」を関係都道府県知事に通報することとしている。58年10月3日の三宅島の噴火に際しては,噴火の約1時間半前ごろから,微小地震が連続的に発生し始めたので,三宅島測候所は,火山性地震であることを確認の上,噴火の約40分前に三宅島村役場に注意を要する旨の緊急連絡を行った。噴火後も「火山活動情報」,「臨時火山情報」を適時発表して避難等の防災活動に資した。また,噴火当日,直ちに火山機動観測班を同島に派遣し監視体制を強化した。
  さらに,気象庁は,火山噴火予知連絡会の事務局を担当し,大学等関係機関との連絡を一層強化して噴火予知技術の向上を図っている。


表紙へ戻る 次へ進む