1 関西国際空港計画


(1)関西国際空港の必要性

  (望まれる関西国際空港の早期建設)
  我が国の産業,経済,文化の2大中枢の一つである近畿圏の航空輸送活動の中心となっている大阪国際空港は,東南アジア,欧米等の20数都市と国際航空路線で結ばれる一方,我が国国内航空ネットワークの2大拠点の一つを形成している。
  しかしながら,前述のとおり,同空港は,環境対策上,運用時間と離着陸回数の制限を余儀なくされており,このため,国際貨客の増加に伴う外国からの新規乗り入れや増便の要求に対し十分対応できず,これらの国との間で問題となっているほか,国内航空においても,増便はおろか,既にジェット機の就航が可能となった空港からのジェット機の乗り入れもできない状況である。このような大阪国際空港の空港機能の制約がこのまま推移するとすれば,その拡張の余地がないことからみても,航空輸送の健全な発展を阻害することとなり,近畿圏のみならず,国全体の均衡ある発展と国際交流の活発化等に支障を生ずることとなる。
  したがって,大阪国際空港の騒音問題の抜本的な解決を図るためにも,また,新たな航空輸送需要の増大に適切に対応しつつ地域社会の繁栄,経済の発展を図るとともに,国際交流の活発化に対応していくためにも,国際・国内両用の24時間運用が可能な関西国際空港を早期に建設する必要がある。

(2) 航空審議会の答申及び調査の実施

  (49年に泉州沖が望ましい旨の第1次答申)
  関西国際空港は,昭和40年代の初め頃から関西地区における航空輸送需要の増加に対処するためその必要性が認識され,運輸省において43年度から各種の調査を実施してきたが,46年10月,運輸大臣は航空審議会に対し「関西国際空港の規模及び位置」について諮問した。同審議会は2年10か月に及ぶ慎重な審議を行い,49年8月,関西国際空港の位置について,泉州沖,神戸沖,播磨灘の3候補地を総合的かつ客観的に評価した結果,泉州沖の海上が最も望ましいとする旨の答申(第1次答申)を行った。
  これを受けた運輸省は,泉州沖候補地を対象とする新空港計画を策定するための調査に着手すべく,関係府県(大阪府,兵庫県,和歌山県)と協議の上,51年9月,空港の計画は関係府県の合意を得て決定することなどを骨子とする「関西国際空港の計画に係る調査の実施方針」を定めて,今後の調査に取り組む基本的な姿勢を明らかにするとともに,52年2月には「関西国際空港調査の全体計画」を作成し,公表した。
  このような地域社会の理解と協力を得る努力を重ねるとともに,空港候補地点の海上等に固定観測施設を設置し,53年1月から気象・海象等の通年観測を開始し,また,54年5月と10月に実機飛行調査を実施するなど調査の全体計画に基づいて,自然条件,社会条件,空港条件及び環境影響に関し,本格的な海上空港を建設するための広範囲にわたる調査を実施してきた。
  (55年に第2次答申)
  これらの調査のまとめの段階に至った54年11月,空港計画の基本的事項について航空審議会の意見を求めた。同審議会は,第1次答申を基礎にその後の調査研究の成果を積極的に取り入れて鋭意検討を重ね,55年9月に,滑走路計画,空域飛行径路の計画,建設工法,空港施設の計画からなる「関西国際空港設置の計画について」を答申した(第2次答申)。
  一方,新空港の立地に伴う地域整備に資するため,52年度から55年度にかけ,国土庁,通商産業省,建設省(53年度から農林水産省も参加)及び運輸省が,国土総合開発事業調査調整費による調査を行った。

(3) 関係府県等との意見交換

  (3点セットを関係府県に提示)
  関西国際空港の計画は関係府県の合意を得て決定することとしており,52年11月には関係府県の副知事と航空局長からなる「関西国際空港連絡会議」を設置し,調査の円滑な実施と新空港建設の合意を図るため率直な意見交換を行ってきた。56年5月,2度にわたる航空審議会答申とこれまでの調査検討の結果をもとに,「関西国際空港の計画案」「関西国際空港の環境影響評価案」及び「関西国際空港の立地に伴う地域整備の考え方」(いわゆる3点セット)を取りまとめ,関係府県に提示した。そして,3点セットについて関係者への説明を行うとともに関係府県との問の意見交換を鋭意進めてきたが,地元自治体議会の新空港反対決議が撤回される等地元における情勢も変化し,57年7月には大阪府から,8月には和歌山県からそれぞれ計画の具体化を進めるべき旨の回答がなされた。兵庫県については3点セットに対する回答は得られなかったが,12月には運輸大臣と兵庫県知事との会談が行われ,関西地区に新しい国際空港を早急に建設する必要性について合意をみた。

(4) 関西国際空港関係閣僚会議の開催

  (緒についた関西国際空港の建設)
  58年度予算において,従来の一般的な調査費8億円のほか,関西国際空港の大阪湾泉州沖設置を前提に,その着工のための準備を行う経費として関西国際空港着工準備調査費32億円が新たに認められた。58年5月には,閣議において関西国際空港関係閣僚会議の開催について口頭了解が得られ,第1回関西国際空港関係閣僚会議が開催され,政府としての取組み体制が整備された。
  この関係閣僚会議は,大蔵,厚生,農林水産,通商産業,運輸,郵政,労働,建設,自治の各大臣,内閣官房長官,国家公安委員会委員長及び行政管理庁,経済企画庁,環境庁,国土庁の各長官を構成員とし,自由民主党の幹事長,総務会長,政務調査会長,参議院議員会長その他の役員の出席のもとに,関西国際空港の建設に関する重要な問題について協議・調整を行うために随時開催されるものである。
  第1回会議では,運輸省から@関西国際空港の必要性A関西国際空港計画の経緯B関西国際空港計画の概要について説明を行うとともに,今後の協議・調整について関係閣僚の理解と協力を求めた。

(5) 今後の進め方

  (事業主体の設立を)
  このような情勢を踏まえ,運輸省としては,今後とも我が国初めての24時間運用可能な空港の早期実現を図るため,着工準備調査費による調査を進めるとともに,関係閣僚会議における協議・調整等を経て政府としての計画決定及び59年度における事業主体の設立が図られるよう関係省庁等と協議を進めているところである。


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