2 東京国際空港の沖合展開事業


(1) 沖合展開事業の経緯

  (地元要望と調和した沖合展開)
  運輸省は,東京国際空港の航空機騒音問題の抜本的解消と今後の需要増大に対処するため,46年頃から長期的視野にたって,整備計画の検討を進めてきたが,52年3月,東京都知事から,現空港の羽田沖への移転を前提に地元を含めた話し合いの場を設けて欲しいとの要望があり,52年8月,運輸省,東京都及び地元区で構成する「羽田空港移転問題協議会」(以下「三者協議会」という。)が設置された。
  運輸省は,東京都が廃棄物処理場としている羽田沖埋立地を活用し,現空港を沖合に展開することにより,前述の課題が解決できるという検討結果を取りまとめ,53年12月,運輸省案を東京都知事及び第7回三者協議会に提示した。
  以来,この試案をもとに,三者協議会の場で調整に努めてきたが,この案では,航空機騒音の抜本的解消が図れないとして,地元から再検討するよう強い要望が出された。
  これに対して,運輸省は,港湾計画,道路計画及び船舶の安全航行等について関係機関と調整を図りつつ,この案の修正について種皮検討を行い,B滑走路を海側に移設するとともに,新A,新C滑走路を約5度海側に振る修正案を取りまとめ,56年4月8日,第12回三者協議会に提示し,調整を進めた結果,6月25日,東京都は地元区の同意を得て修正案について了承した。さらに,8月6日,運輸大臣と東京都知事が会談し,滑走路配置等基本的事項について合意に達した。
  次いで,運輸省は,基本的合意を踏まえて具体的計画を策定するに当たり,関連する事業との調整を図るため,56年10月,建設省,東京都及び運輸省からなる「東京国際空港沖合展開計画連絡調整会議」を設置し,廃棄物埋立計画,道路計画,鉄道計画と整合をとり「東京国際空港沖合展開基本計画案」をとりまとめた。
  57年11月18日,第20回三者協議会に基本計画案を提示し,同年12月23日,第21回三者協議会において同計画案が了承されるとともに,東京都知事から了承の回答を得た。
  これを受けて,運輸省は,58年2月23日,東京国際空港整備基本計画を決定し,3月26日,飛行場の施設変更予定告示を行い,5月20日,公聴会を開催した。
  一方,本計画に係る環境影響評価についても東京都条例に準じて行うこととし,58年4月28日,東京都知事に,環境影響評価書案を提出した。
  今後は,東京都知事の審査意見書を受け,環境影響評価書を作成するとともに,施設変更告示を行い,58年度中に工事に着手することとしている。

(2) 事業の概要

  (騒音問題の抜本的解消と空港能力の向上)
  沖合展開事業は,
  (ア) 現空港の沖合に滑走路を移設及び新設し,飛行径路を市街地から遠ざけることにより,騒音問題を抜本的に解消すること。
  (イ) 離着陸処理能力を年間約24万回程度まで向上させ,長期にわたって国内航空の拠点としての機能を確保すること。
  (ウ) 廃棄物の埋立地に新しい滑走路と空港ターミナル施設を建設することにより,廃棄物処理と空港整備の両立を図ること。
  (エ) 現在の空港用地の一部を開放し,都市施設整備のために有効に利用すること。をねらいとして,空港面積を408ヘクタールから約1,100ヘクタールに拡張し,現在のA(供用休止中),B及びC滑走路を移設(新A滑走路3,000メートル,新B滑走路2,500メートル及び新C滑走路3,000メートル)することにより,年間8,500万人程度の乗降客を取り扱うことができることとするものである。
  また,空港へのアクセス交通施設としては,道路及び鉄道の導入を計画している。道路については,既存の環状8号線と首都高速1号線との取り付けに加えて,計画中の湾岸道路との取り付けを考えている。一方,鉄道については,西側旅客ターミナル供用開始時にモノレールを同ターミナルまで延伸し,京浜急行空港線をモノレールに接続する地点まで延伸することを計画している。さらに,その後の東京国際空港への旅客輸送需要の動向等を勘案し,適当と認められる時点において京浜急行をターミナル地区まで延伸することを計画している。

(3) 事業計画

  (関連事業と歩調を合わせて段階的に実施)
  本事業は,廃棄物によって埋立てられる土地を利用して行うこととしており,また,空港の中央部を東京湾岸道路が貫通することとなるので,航空需要のほか,埋立事業及び道路事業とも整合をとる必要から,次の3段階に分けて実施することとしている。
  (ア) 第1期工事:すでに陸地化している廃棄物処理場を利用して,新A滑走路を整備することとしている(63年度供用予定)。
  (イ) 第2期工事:東京湾岸道路の整備に合わせ,ターミナルの一部を完成させ,現在のターミナル機能を移転させる(65年度供用予定)。
  (ウ) 第3期工事:廃棄物処理場の陸地化を待って,新B滑走路,新C滑走路の整備や,その他の工事を実施し,東京国際空港の沖合展開事業を完成させる(68年度供用予定)。


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