2 東京圏における交通網の整備


 (東京圏の交通網の整備について諮問)
  運輸省では,都市交通審議会の答申に基づいて大都市圏における高速鉄道等の整備を行っており,東京圏についても,47年3月の都市交通審議会答申第15号に基づいてその整備を進めてきた。しかしながら,答申以後の東京圏内の人口の伸びが,答申時の想定とかなり異なった動きを示しており,特に,東京都に隣接した千葉県の北西部,埼玉県の東部等においては,55年の夜間人口が答申時における60年の予想人口を既にかなり上回り,これらの地域で鉄道の整備が比較的遅れていることとあいまって通勤・通学時における混雑度がかえって悪化している。他方,副都心の整備等に伴って就業地についてもかなりの変化が生じており,今後も地区開発等によってこのような変化が更に進展することが予想される。
  このような情勢変化に対応し,長期的な展望に立った交通網の整備計画を策定するため,都市交通審議会の事務を引き継いだ運輸政策審議会に対し,57年9月,東京圏における高速鉄道を中心とする交通網の整備について諮問を行った。
 (運政審における東京圏の交通網の審議)
  その後,運輸政策審議会に設けられた東京圏都市交通部会の小委員会においては,東京圏内の各地方公共団体の住宅開発,都市開発等に関する長期計画及び15号答申路線の延伸路線,新規路線,既存線の複線化等60路線に及ぶ鉄道整備の要望,各鉄道事業者の輸送力増強計画等について説明を受け,さらに,将来人口フレーム等に基づき,現状の鉄道網(工事中のものを含む。)を前提とした75年の通勤・通学のための鉄道利用者のブロック間流動を推計した。
  まず,都県別通勤・通学流動量についてみると,東京圏全体では,55年の1,328万人から75年には1,568万人に増加するものと見込まれている。また,東京都区部への通勤・通学流入者数は,全体で55年の259万人から75年には336万人に増加すると見込まれ,地域別に見ると,増加率では茨城県南部,千葉県,埼玉県の順に多く,増加数では千葉県,埼玉県,茨城県南部の順に多くなっている 〔2−3−3図〕
  次に,鉄道利用の通勤・通学流動量についてみると,東京圏全体で55年の680万人から75年には1.15倍の801万人に増加すると見込まれる。

  東京都区部境及び14区境における最混雑1時間の方面別流入交通量をみると,交通量は各方面とも増加しているが,特に千葉,茨城方面の伸び率が高く,これらの方面では鉄道の混雑がますます激しくなることが予想される。
  小委員会では,これらの検討の成果をとりまとめて,59年6月に中間報告を行ったところである。
 (運政審における今後の審議予定)
  運輸政策審議会では,今後,引き続き,鉄道網整備に関する地域の要望等を踏まえつつ,路線別の交通需要予測,既設線の輸送力増強施策,厳しい財政状況下における鉄道網整備方策等について調査審議を行い,東京圏の鉄道網整備計画を策定することとしている。


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