1 対外経済対策の推進
運輸に係る諸外国からの要望は,大きく分けて次の3つに分類することができる。
ア 対日市場参入の要望
前者については,我が国の制度と外国の制度との差異等の理由を十分説明するとともに,要望の意図するところを踏まえて適切な対応を図る必要がある。後者については,外国の関心を関係者に伝達し,商業的な判断を求めることになる。 なお,海運企業の国際的競争を容易化する観点から,米国が主張していた諸問題については,背高コンテナの使用に関し,昭和60年4月に決定された対外経済対策において,関係省庁の協力により,道路交通に関する問題として背高コンテナの使用を一定の道路につき一定の条件の下で認める決定がなされているほか,国際複合一貫輸送に係るトラック輸送への参入については後述するような方針がアクション・プログラム骨格に盛り込まれ,それぞれ解決が図られている。 (イ) 航空については,権益の交換を二国間交渉で認めることが国際的にも定着しているので,基本的には航空交渉で決着を図ることが常道である。最近,空港使用の問題航空サービスのあり方の問題などが航空交渉の議題として検討される傾向が増大している。
イ 貿易不均衡是正
(ア) 第1は,日米間,日欧間における自動車の輸出入の不均衡に関連して,自動車安全公害基準の認証制度を統一するという問題である。この問題の欧米の要望は異なっており,欧州諸国が認証手続の簡素化を求めているのに対し,米国は,手続の簡素化にも関心を示しているが,それより米国が採用している安全基準についての自己認証制度を我が国においても米国車に採用してほしいと主張している。自動車の安全基準の認証制度のような基本的な制度について,外国の制度との調整を図ることは,慎重に取り組まなければならない問題である。同時に,自動車の基準認証制度が,米国をはじめ諸外国からの自動車輸入の障害になってはならないので,この点を十分認識しつつ対応策を講じていく必要がある。 (イ) 第2は,外国からの小型航空機やヘリコプターの輸入の促進に関し,我が国の航空法に基づく法規制の見直しができないかというものである。これらの法規制は,航空の安全に関する規制であるので,この点も十分御酌しつつ,現在検討が行われている。 船舶,航空機については,安全・公害基準の国際的統一が行われているので,国際的問題が少ないのに対し,陸上輸送,自動車の基準認証制度については,国際基準が存在しないために問題の解決を図る場が確保しにくく,問題の解決がより困難となっている。 また,外国製品輸入の関連で,政府調達手続の改善の要望があり,各省共通事項を中心に改善が行われている。
ウ 観光交流の促進
このような意向を受けて,我が国としては,今後,外国人観光客の誘致と併せて,日本人の海外旅行の促進に官民挙げて一層の努力をすることが必要となってきている。
(2) 運輸の分野におけるアクション・プログラム骨格の主な内容
ア 基準・認証
(ア) 今回とるべき措置の要点
我が国においては,輸入自動車の認証手続には,大きく分けて,多数の車を販売する場合に活用される型式指定制度と少数の車を販売する場合に活用される少数台数取扱制度の2種の手続がある。前者は,世界で最も簡素化された自動車の認証手続である。また,後者も,世界に例のない簡素な手続であるが,輸入車の台数が少ない現状にかんがみ,この手続を一層改善して「輸入車特別取扱制度」を創設することとする。
(イ) 輸入車特別取扱制度の特徴
そこで,少数台数の輸入を取り扱う場合に,輸入車の生産国で申請データの作成を容易にする措置を講じるとともに,かつ,この制度を利用する輸入車については,車両1台毎の検査場への持込みを省略するための手続を導入することにより,自動車の輸入のための手続を大幅に改善した。 さらに,この制度の適用台数を従来の年間1型式当たり500台から1,000台に拡大し,また,1度申請し,審査を終了した車種については,年間1,000台までは,適用期間を制限せず簡易手続きのみで対応できることとした。
(ウ) 型式指定制度の改善
(エ) 基準の国際化等
このため,さらに,今後1年以内に基準の統一問題と自己認証の問題につき,米国等外国関係者と協議し,その結果に基づき自動車の基準・認証制度の改善方針を決定することとした。 さらに,国連欧州経済委員会自動車安全公害専門家会議(ECE・WP29)を日本で開催する等基準の国際化に対して日本が主導的役割を果たすとともに,今後の基準の国際化の基本的方針について,運輸技術審議会において検討する。 これら国際化との関連で,自動車の改造を要する基準のうち,駐車灯及び速度警報装置の装備義務を廃止して,基準の国際的統一化を一歩進めた。
イ サービス,輸入促進等
(ア) 運輸
A 不定期航空輸送事業として行うコミューター・サービスに使用する小型航空機の範囲を拡大するとともに,ヘリコプターの利用を促進するための措置をとる。 B 航空機関士を乗り組ませなければならない航空機の範囲について規制の緩和を図る。
(イ) 海外旅行の促進等
60年7月30日に政府・与党対外経済対策推進本部においてアクション・プログラム骨格が決定されたが,運輸省においても,同本部決定を受けて7月30日に,アクション・プログラム策定委員会を廃止して,アクション・プログラム推進委員会を設置し,また,基準認証制度改善査察官,政府調達相談窓口を設置してフォローアップ体制を整備した。
|