3 緊急対策の推進


  国鉄事業の抜本的再建をめざした再建監理委農会における検討,提言及びこれを受けた後述の国鉄改革に関する動きと併行して,運輸省及び国鉄は,当面する国鉄の経営悪化を防止するために最大限の努力を尽くすこととし,さらにこれによって来たるべき新経営形態への円滑な移行に資するとの観点から,各般の緊急対策を強力に推進してきた。

(1) 雇用対策

  国鉄においては,8回にわたる職場総点検の実施等により,職場規律の確立,個々の職員の意識・意欲の向上に努力するとともに事業分野の重点化及び事務,事業の効率化を強力に進め,その結果,62年度首には,所要員数18.6万人と,60年度首28.2万人に対し,約34%減の要員体制となる見込みである。
  これに伴い,所要員と現在員との差が拡大し,その早期解消と人材の当面の有効活用を図っていく必要が生じ,特別改札等の増収活動,外注作業の一部直営化等による経費節減,教育の充実,直営店舗の開設等に加え,休職・派遣制度の拡充,'勧奨退職を促進するための退職制度の導入等の措置を講じてきた。
  さらに61年度においては,7月に全国1,010か所に人材活用センターを設置し,適正な要員運用を行うこととするとともに,61年5月に成立した後述の「日本国有鉄道の経営する事業の運営の改善のために昭和61年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律」(以下「61年度特別措置法」という。)に基づき希望退職者の募集を実施しているところである。また,職員の再就職の円滑な推進のため,雇用の場が不足している北海道,九州等から,雇用の場が集中している東京,大阪等の地域に対して広域異動を行うとともに,再就職を希望する職員に対して就職相談,再就職先のあっせん等を行うため,61年6月「職業相談室」を全国88か所に設置した。

(2) 地方交通線対策

  特定地方交通線については,田本国有鉄道経営再建促進特別措置法」に基づいてバス等への転換対策を進めてきている。このうち56年9月に選定承認した第1次線40線730キロについては,61年11月に木原線の第三セクター鉄道への転換が合意された結果,全線,バス又は地方鉄道への転換又は転換の方向づけが行われている。59年6月及び60年8月に選定承認した第2次線31線2,090キロについては,61年11月中旬までに,協議中断中の2線を除き,4線がバス又は地方鉄道への転換を終えるとともに12線について転換の方向づけが行われるなど,地元協議会において積極的に協議が進められている。
  さらに61年4月に国鉄から申請のあった第3次線12線340キロについては,地元から早期承認の要望があった岡多,能登及び中村の3線について同年5月に,また,長井線について10月に選定承認を行うとともに,残る8線のうち知事意見未提出の線区についても速やかに愚見の申し出を行うよう働きかけを行っており,選定承認に続く協議会の早期開催等円潟な対策の推進が図られるよう努めているところである。

(3) 営業活動

  営業活動については,利用者のニーズに適切に対応し,利用しやすいダイヤ,利便性の高いダイヤの編成に努めてきた。また運賃設定においても他の輸送機関の競争関係等に配慮する一方,企画商品の開発販売等の営業努力を積み重ね,できる限り収入を確保するべく努めてきた。
  (輸送改善)
  61年11月に実施したダイヤ改正では,旅客輸送に関しては全国の主要都市圏においてデータイムにおける列車の定時・多頻度運行を行うとともに,都市間では新幹線を中心としてスピードアップによる所要時分の短縮,列車頻度の向上等を行うなど都市圏,都市間を中心とする鉄道の特性分野においてかつて無い大幅な輸送改善を行った。特に都市圏輸送の改善は,59年2月及び60年3月のダイヤ改正においても地方主要都市圏において逐次地域密着型にダイヤパターンを改めてきており,これにより輸送実績も大幅に増加したが 〔2−1−2図〕,今回のダイヤ改正においてこれを更に一層推進し,「より便利で身近な鉄道」への転換を図っている。
  また,貨物輸送については,輸送基地及び集配列車を廃止し,コンテナ列車及び専貨列車による直行輸送体系を確立し,列車のスピードアップによる競争力の強化を図るとともに,徹底した輸送の効率化によるコストの低減及び収入の安定的確保を図っている。
  (運賃改定)
  また,国鉄は,61年9月から平均4.8%の運賃改定を行ったが,この改定に当たっては,59年度に導入した地域別運賃制度を継続し,東京,大阪の国電区間の運賃をほぼ全面的に据え置くなど大都市圏運賃の上げ幅を抑制するとともに,遠距離特急料金を据え置くなどの措置を講じ他の輸送機関との競争関係等に配慮した内容としている。なお,貨物運賃及び荷物運賃については,輸送市場の動向,他輸送機関の運賃動向等を総合的に勘案して,61年度においては改定を見送ることとした。

  (企画商品の開発販売等)
  他方,営業面においても,新規需要の開拓,潜在的な輸送需要の喚起を図るなど,積極的な営業努力により全体として輸送量の維持増大に努め,フルムーンパス,ナイスミディパス等の企画商品の開発販売,東京キャンペーン「東京オンステージ」の全国的展開等を実施してきた。
  また,関連事業についても,60年度に新たに直営店舗328店を開設するなど人材の活用と併せ収入の確保に努力している。

(4) 設備投資の抑制等

  以上のほか,国鉄債務の増大を抑えるために,設備投資については引き続き,安全確保,老朽施設の取替等の緊急度の高い投資を中心としたものに抑制するとともに,60年度において1,544億円の用地を処分し,債務の返済に充てることとした。
  なお,整備新幹線については,60年12月には東北及び北陸新幹線,また61年8月には九州新幹線(鹿児島ルート)の工事実施計画の認可申請がなされているが,その認可については,60年8月の政府与党間の申し合わせにより設置された「整備新幹線財源問題等検討委農会」における検討の結論が得られた段階で,整備新幹線計画は当面見合わせることとした57月9月の閣議決定を変更したうえで行うこととされている。

(5) 国鉄用地の有効活用

  国鉄用地の有効活用については,モデルプロジェクトとして錦糸町,梅田(南),新宿,汐留の4地区が選定されているが,このうち梅田(南)については,土地区画整理事業方式で基盤整備を行うこととなり,60年6月に土地区画整理組合が設立され基盤整備を実施中であり,また錦糸町については,市街地再開発事業方式により整備を行う方向で,61年5月に市街地再開発準備組合が設立されている。


表紙へ戻る 次へ進む