2 新たな観光レクリエーション活動への対応


(1) 観光レクリエーション活動振興のための新たな施策

  余暇時間の増大とともに,積極的な余暇活動の中心を占める観光レクリエーション活動が増大することが予想されるのみならず,その内容も「体験型」,「行動型」への移行,「教養文化志向」の高まりといった質的変化が見られる。このような需要に対し,トータルシステムとしての観光レクリエーションの振興が必要であり,次のような事項を含め民間活力の活用も図りつつ新たな施策を展開していく必要がある。
 @ 多世代が利用し,長期にわたり楽しめるようなスポーツ・レクリエーション施設,教養文化施設などの魅力ある施設整備とこのために必要な連泊,長期滞在型の低廉な宿泊施設の一体的な整備の推進
 A 交通機関,宿泊施設その他のレクリエーション関連施設について,オフシーズン割引等の利用料金割引制度の充実による経済的な観光レクリエーション活動を促すための施策の推進
 B 観光レクリエーション地域へのアクセスの改善の促進
 C 観光レクリエーション活動の施設の内容,利用方法等についての観光情報システムの整備の促進
 D 観光レクリエーションにかかわる利用者の保護・安全性の確保及び必要に応じた指導者の育成のための施策の推進
 E 観光レクリエーションの誘発に多大に資するような催し物の開催の促進

(2) 21世紀へ向けての魅力ある観光地づくり

  今後の観光地づくりにあっては,多世代の人々が各人の趣味嗜好を充足し,かつ,地域間あるいは世代間の交流を深めつつ長期にわたり楽しめるような様々な施設や諸活動を支えるための仕組みが必要である。このため,連泊・長期滞在の可能な低廉な宿泊機能(コンドミニアム等)を中心に,スポーツ・レクリエーション機能,教養文化機能(国際交流機能を含む。),保養機能,都市的サービス機能など多様な機能を備えた観光地を総合的,一体的に整備し,その集積効果と時間,距離費用面も含めたアクセスの改善策や利用促進の方策により,観光レクリエーション活動を促進し,21世紀へ向けての活気ある魅力的な観光地の形成を図る必要がある。
  他方,観光レクリエーションの促進は地域にとってもその振興を図るための大きな柱であり,運輸省においても観光レクリエーション地区 〔8−2−5図〕の整備を通じ支援,助成を行っているところであるが,このほか,大小様々な観光地開発プロジェクトが公的あるいは民間セクターにおいて実施されている。その数は,岩手県八幡平の開発をはじめ約100か所に及び,観光地としての魅力を創出するための様々な試みがなされている。

  しかしながら,観光地開発は総じて初期投資が大きいため,現在行われている各地の観光地開発も高収益の見込まれるスキー場やゴルフ場等の施設に限られる傾向にあり・今後の観光レクリエーション需要に十分対応できるとは言い難い状況である。また,事業を円滑に推進していくうえで開発規制,用地の確保,建設資金の調達,利害関係者の調整など様々な課題があるため,新たな国民ニーズに対応した観光地開発を進めていくためには,官民協調のもとに事業を推進していく必要がある。

(3) 観光情報提供体制の整備

  観光地におけるイベントやスポーツ,文化活動への参加など国民の観光レクリエーション活動は多様化し,ますます主体的,個性的なものとなってきており,かかる国民ニーズに対応した観光地の最新情報を正確かつ迅速に提供する体制の充実が求められている。また,今まで知られていなかった観光地に関する情報又は観光地におけるオフ・シーズンのイベント等の情報を提供することを通じて,新たな観光需要を喚起し,観光地活性化を図るという観点から観光情報システムを整備していこうとする動きが,地方公共団体を中心に観光地側においても活発になっている。
  このような状況に対応して,61年3月,観光政策審議会観光活性化方策検討小委員会において,情報化を中心とした観光活性化方策についての検討結果がまとめられた。この報告では,@国内観光地情報,訪日外客のための情報等について,(社)日本観光協会,国際観光振興会等の観光関係団体や旅行業界が中心となりて情報収集体制を整備すること,Aこのようにして収集された情報を運輸機関,宿泊機関,旅行業者とのシステム結合により効率的なネットワークを形成し,情報提供を行うこと,等が提言されたが,この報告を踏まえ,引き続き高度情報社会の進展に対応した観光情報システムを充実していく必要がある。
  旅行業界においては,日本旅行業協会(JATA)内に設置されたニューメディア特別委員会において,60年11月,@日本旅行業協会会員に最新の情報とデータを提供するため「JATA情報センター」(仮称)を設立し,一元的に情報を収集する,AVAN業者のネットワークを利用して旅行業ネットワークを確立する,等を内容とする報告がまとめられ,61年8月には,この「JATA情報センター」設立のための準備室が設けられた。

(4) 旅行者の保護

  (旅行業に関する旅行者保護施策)
  旅行に関するサービスは目に見えないものであり,かつ,予定どおりのサービスの履行そのものに意味があるので,旅行を扱う旅行業者の適正な運営と旅行取引の公正さが確保されることが必要である。
  このため,旅行業法に基づき,旅行者保護の見地から旅行業者を登録制として種々の規制を行っているほか,主催旅行広告の適正化等について,きめ細かな指導・監督を行っている。
  さらに,旅行業法の遵守を徹底し旅行者保護の一層の充実を図るため,61年3月に警察庁,都道府県,旅行業協会等の協力を得て「いい旅しよう'86」キャンペーンを展開し,@旅行者に対する登録業者の利用の呼びかけ,A無登録業者に対する監視体制の整備B登録業者に対する立入検査,等旅行業法の遵守状況の総点検を行った。
  また,無登録業者の取締りのため,警察との連携を一層強化している。
  (モデル宿泊約款の制定)
  登録ホテル,旅館業を営む者は,国際観光ホテル整備法に基づき宿泊約款を定めなければならないこととされている。'運輸省では,39年に宿泊約款例を作成し,約款の内容の適正化を図ってきたが,今回その見直し作業を行い,60年末に新たなモデル宿泊約款を作成した。今後は,このモデル宿泊約款をもとにより一層の利用者保護を図っていくこととなった。


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