2 サービス化・ソフ卜化と運輸産業の構造変革


  経済の「サービス化・ソフト化」には,必ずしも明確な定義がなされているわけではないが,一般的には以下のような現象が共通して指摘されている。
 @ 「サービス化」については,経済全体に占めるサービス産業の比重が増大していること。
 A 「ソフト化」については,各産業の中間投入において,ソフト(サービス活動)の比重が増大していること。
 B 産業内部でのソフト的産業の拡大,ハード的産業の後退という構造変革が進んでいること。

 (全産業に占めるウェイトの変化)
  これらの傾向を運輸についてみると,@のサービス産業のウェイトの拡大という意味での「サービス化」は, 〔8−4−1表〕にみるように運輸産業総体についてはみられない。Aの中間投入におけるソフト(サービス)のウェイトの増大という意味での「ソフト化」についても,〔8-4-2表〕にみるように,必ずしも当てはまらない。特に昭和50年以降の第1次オイルショック後の安定成長下にあっては,運輸部門のサービス投入の伸びは鈍化し,その「ソフト化率」もむしろ低下傾向にある〔8-4-3表〕。

  しかし,Bのように「サービス化・ソフト化」を産業内部でのソフト的産業の拡大,ハード的産業の後退という構造変革としてとらえると,運輸においてもこうした傾向は顕著である。 〔8−4−4図〕は,運輸産業における生産額の部門別構成の変化を40年と59年で比較したものである。その内訳をみると,営業輸送及び輸送機械製造のシェアが減少している反面,運輸付帯サービス及びその他関連サービスはシェアを伸ばしていることがわかる。
  (ソフト的運輸サービスの拡大)
  これを,さらに個別の業種別の伸び率でみると, 〔8−4−5図〕のとおりである。運輸産業全体(平均)の伸びは40〜59年の19年間で約7倍であるが,これを上回って成長の著しいものをみると,航空付帯事業,空港管理,航空運送業等の航空関係,リース・レンタカー,道路輸送施設提供(有料道路自動車ターミナル,駐車場),旅行業,梱包,その他の運輸付帯サービス(フォワーダー,運送代理店等)が急速に伸びている。その他,自動車整備,旅館・宿泊所,倉庫も高い成長を示している。

  一方,平均を下回る低成長の業種をみると,鉄道,海運,バス等の航空を除く営業輸送,造船,鉄道車両等の製造業となっている。

  高成長の業種は,航空輪送を除けばいずれも営業輸送や輸送機械製造そのものではなく,これに付随したり関連するサービスである。これに対し,低成長の業種はいわゆる「装置型産業」や,インフラ,輸送機器,燃料等物的投入のウェイトの高いいわば「ハード型産業」が多い。その意味で,前者を「ソフト的」と呼べるとしたら,運輸産業内では,こうしたソフト的業種の成長が著しいといえる。
  すなわち,経済のサービス化・ソフト化に伴う運輸産業のソフト化は,営業輸送等のいわば伝統的運輸事業の相対的縮小とソフト的運輸サービスの新たな拡大という構造変化の形で進行していると考えられる。


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