第1章 国際化をめざす社会におけるゆとりある生活の実現と運輸

 ○ 海外旅行倍増計画の推進等により,我が国の国際化を促進する。
 ○ 国民生活の質の向上をめざして,大都市圏においては都市鉄道の整備,臨海部における事務所や住宅の整備の促進により通勤・通学輸送の改善対策及び地価対策を進めるとともに,地方圏においては全国一日交通圏の構築,地域間の結びつきを進め,また,観光開発,イベントの推進等地域の活性化対策を進める。
 ○ 物流においては,輸送の小口化・高頻度化,消費者物流の進展等にみられるように輸送構造の変化が進んでおり,ニューサービスの健全な育成等このような動きに対応した施策を進める。
 ○ 余暇活動の需要増大に対応して,リゾート,臨海部の開発を進めるほか,海洋性レクリエーション施策の展開等海洋の開発・利用を推進していく。また,安全性の向上,利用者利便等の増進の観点から運輸技術の開発,情報化の推進を図る。
 ○ 自動車基準・認証制度の国際化を推進する。また,関西国際空港プロジェクトへの外国企業参入問題については一応の決着をみたが,米国は同手続を大型公共事業にも適用すべきことを主張している。
 第1章の要旨
  我が国は,現在,対外的には大幅な経常収支の不均衡の是正及び国際化の努力,国内的には大都市圏におけるゆとりある生活の実現及び多極分散型の均衡ある国土づくりが要請されている。運輸行政もこれに応じて,次のように取り組むこととしている。
 1.国際化の促進については,日本人の海外旅行者数は着実に増加しているものの,他の先進国に比べると極めて低い水準にあり,様々な効果を有する海外旅行の促進を図るため,海外旅行倍増計画を推進する。また,国際観光モデル地区の整備等外客受入体制の充実及び国際航空の整備を更に推進していく。国際協調の充実については,今後も対外経済問題に積極的に取り組むとともに,経済協力(資金協力及び技術協力)等に成果をあげるべく努力していく。
 2.国民生活の質の向上をめざし,大都市圏においては,交通の混雑,居住環境の悪化,地価の高騰等の諸問題へ対処するため,@鉄道・バス等の大量輸送機関を中心とした交通体系の整備,A臨海部の埋立地等の活用による土地供給の促進と土地需要の分散・緩和による地価問題への対応,Bフレイト・ビラ構想の推進による住宅の住み替え需要の緩和,等の方策を推進していく。旧国鉄用地の処分については,国民負担の軽減等の観点から公開競争入札によることを原則としているが,地価対策が国家的緊急課題であることに配慮しつつその対応を行うとともに,地価を顕在化させない土地の処分方法について検討をすすめている。他方,地方圏においては,魅力ある都市づくりを進めていくため,@幹線高速交通とそのアクセス整備による全国一日交通圏の構築,A高速バス,コミューター航空等による地域間の連絡強化,B観光開発,イベントの推進による地域振興,等の方策を推進していく。
  国民の余暇活動需要の増大や意識の変化に対応するため,観光関連施設の整備等リゾート,臨海部の開発を進めるほか,海洋性レクリエーション施策の展開等海洋の開発・利用を推進していく。
 3.産業構造の変化,国民生活の向上に伴う消費者ニーズの多様化により製品の軽薄短小化・高付加価値化が進展しており,物流においては量的停滞,輸送の小口高頻度化の傾向がみられる。このような輸送構造の変化に対応すべく運輸の分野においては宅配便やトランクルームサービスといったニューサービスの出現が相次いでいる。また,荷主企業の販売戦略の転換,コスト意識の向上等を反映して商品の短サイクル化が進み,在庫の極小化を実現する要請が高まっており,ジャスト・イン・タイムの生産・販売体制に対応した物流システムの構築が進展している。国際複合一貫輸送においても低コストかつ迅速輸送という相反する要請を受けて,海上輸送と航空輸送を組み合わせた輸送形態が近年注目されている。これらの動きに対し,消費者保護の見地に立って所要の措置を講じていく。
  なお,安全性,利便性の向上,事業の効率化のため,情報化の推進,技術の開発を進めていく。


第1節 国民生活の質の向上をめざして

第2節 産業構造の変化・利用者ニーズの高度化に対応する運輸

第3節 国際化の促進