第8章 安全,災害,環境対策の推進

 ○ オーマチック車の急発進・急加速問題については,徹底した原因の究明を行うとともに,事故防止のため自動車使用者に対し基本的な正しい使い方について周知させている。
 ○ 海上交通のふくそうする海域において安全確保を図るため,62年7月に情報提供と航行管制を一元的に行う備讃瀬戸海上交通センターを開設するなど所要の対策を講じている。
 ○ 日航機事故は53年に行われた後部圧力隔壁の不適切な修理に起因するものであり,事故再発防止のため,大規模な構造修理を実施する場合の作業管理体制の強化,後部圧力隔壁等のフェール・セーフ性(P348参照)の規定の基準化を図り各運航会社に対し,運航及び整備体制の充実・強化に努めるよう強力に指導していく。
 ○ ペルシャ湾においては,62年に入って4隻の日本籍船が被弾した。運輸省は,「ペルシャ湾安全対策官民連絡会」の開催等により,湾内外の日本関係船舶の動静把握,同地域に関する情報の海運労使への迅速な伝達を行うなど,同地域における日本関係船舶の安全航行確保に努めている。
 ○ NOx問題への対応として62年1月に,トラック・バス等に対して新たな規制基準の強化を行った。
 ○ 海洋汚染防止対策として油に関する規制を強化したのに引き続き,62年4月より有害液体物質の排出規制等が開始された。
 第8章の要旨
 1. 運輸省は,運輸行政の基本である交通安全の確保のため,交通安全業務計画を定め,陸・海・空のすべての分野においてこれを積極的に推進している。こうしたなかで,昭和62年には,東北縦貫自動車道における追突事故,近畿日本鉄道のトンネル内火災事故,オートマチック車の急発進・急加速問題等が発生し,運輸省としては,事故再発防止のための諸対策等に取り組んでいる。
  また,自動車事故被害者の救済については,仙台市における重度意識障害者療護施設の整備に着手した。船舶の安全運航の確保については,備讃瀬戸海上交通センターの運用及び海技免状の有効期間の更新制度が開始された。日航機事故の原因究明については,航空事故調査委員会の報告書が提出されるとともに勧告建議が行われ,これらに対応した措置を講じている。
 2. イラン・イラク紛争が激化するなかで,ペルシャ湾内の船舶の安全航行は大きく限害されており,62年に入って4隻の日本籍船が被弾している(10月末現在)。運輸省では,「ペルシャ湾安全対策官民連絡会」を開催し,具体的な安全航行の方策を検討するなど,同地域における日本関係船舶の安全航行確保に努めている。
 3. 災害対策基本法に定める指定行政機関として,運輸省,海上保安庁及び気象庁は,防災業務計画を策定し,気象観測・予報や地震,火山対策等災害の予知・予測体制の強化,輸送施設及び交通機関の災害予防対策,海岸事業等の国土保全対策,港湾の災害復旧事業等を総合的かつ計画的に推進している。
  61年11月には,伊豆大島噴火災害が発生したが,これに関してもそれぞれ種々の対策を実施してきている。
 4. NOx問題,騒音問題等の交通公害問題に対しては,従来より発生源に対する公害防止対策,周辺地域における障害防止対策等を実施しているが,今後とも環境保全に十分配慮した交通施策の展開を図る必要がある。
  また,海洋汚染防止については,船舶からの有害液体物質の排出を新たに規制する等国際的な動向に的確な対応を図っている。


第1節 交通安全の確保

第2節 ペルシャ湾における安全航行の確保

第3節 災害対策の推進

第4節 環境の保全