北海道におけるシーニックバイウェイ制度
導入モデル検討委員会報告書


〜シーニックバイウェイ北海道制度の提案〜

は じ め に

 「北海道におけるシーニックバイウェイ制度導入モデル検討委員会」が発足してから早いもので2年間が経過しようとしている。この間、シーニックバイウェイの考え方に共感し参加していただいた38もの活動団体の積極的かつ主体的な活動に対して心よりお礼を申し上げたい。活動団体から出された様々なアイディア、熱心な取組、そしてそれらを通して発見された課題に関する熱い議論なしには、この報告書は成立しえなかっただろう。国土交通省北海道局・北海道開発局、関係する開発建設部そして何よりもリソースセンターの皆さんによる様々な支援や努力・工夫にも厚くお礼を申し上げたい。新しいみちとまちのあり方を探る上でも、シーニックバイウェイのモデル導入は初めての挑戦であり、色々な困難や手探りが続発したと言っても過言ではないが、時間がない中、意欲的に未知の領域に踏み込んでいただいた。最後になったが、検討委員会の委員の皆さんにも感謝したい。司会の不手際もあるが、設定された会議時間を大幅に超過して熱心に議論をしていただくことが普通であり、本当に良い議論ができたと考えている。改めてお礼を申し上げたい。
北海道は、雄大な自然や豊富な味覚など優れた観光資源に恵まれており、北海道経済の牽引車として、すそ野の広い観光産業への期待も高まっている。平成13 年には、観光の振興に関する施策を総合的に推進するため、全国に先駆けて"観光のくにづくり条例"が制定され、自然環境の保全への配慮や、誰もが安心して快適に旅行できる受入環境の整備の推進など、様々な課題を踏まえた取組が進められている。

 一方、個人旅行の進展やモータリゼーションの進展によるドライブ観光需要が急速に高まるなど、北海道観光への需要構造は大きく変化しつつある。また高度情報化やグローバル化の進展により、国内外の観光地域との競争も激しさを増している。そのため今後はこうした観光需要の変化に的確に対応していくとともに、世界的にも豊かな北海道の自然資源や景観などを活かした、魅力的で競争力のある"美しく個性的な北海道づくり"が求められている。

 国土交通省においては、平成14 年度より北海道において米国シーニックバイウェイ制度を参考とし、沿道景観を保全する総合的な施策を展開することによって、北海道独自のドライブ観光の創出・振興、観光資源の充実、観光産業の活性化を図ることとし、その一環として、モデルルートにおける試行を通して制度導入に向けた課題、対策、評価を検討する本委員会を設置し検討を進めてきた。米国のシーニックバイウェイ制度は、傑出した景観や地域資源を有するドライブルートである"シーニックバイウェイ"を全国的に認定し、地域住民が主体となった景観・地域資源の保全・改善や旅行者の増加等による地域経済の活性化等を目的に、1991年に制度化されたものである。もとより、米国とわが国では、地形、歴史、風土はいうに及ばず、行政制度、コミュニティのあり方、人々の公共意識などに大きな違いが存在することは言うまでもない。この違いを十分に考慮しながら、北海道にふさわしいシーニックバイウェイ制度のあり方を実践を通して検討したものである。

 本委員会では、より具体的に検討を進めるため、平成15年度と16年度の2箇年を試行期間とし、千歳〜ニセコ間および旭川〜占冠間の2モデルルートを指定、地域の活動団体等を募集・認定し、景観保全や地域資源の保全・改善等に関する活動の実施、ルートを総合的に運営するための連携組織づくりなどを行い、その成果と課題を踏まえ、本格展開を図るための制度のあり方について検討を行った。

 この2年間で色々な試行と議論と検討を積み重ねてきたが、参加された多くの人々が「シーニックバイウェイ」に手応えを感じられているのではないかと思う。私自身そうである。みちとまち・地域のあり方を観光と景観という具体的なテーマを通して考える上で、P1方式という協働型のみちづくりを考える上で、地域おこしにおける多様な主体による連携を探る上で、景観法の具体的適用を議論する場として、高い可能性をシーニックバイウェイは有している。もちろん、本報告書で提案しているシーニックバイウェイ制度はあくまで現時点でのとりまとめであり、完成形ではない。これから多くの実践を通して、多くの課題に遭遇し、それを乗り越える新しいアイディアと制度が工夫されるであろう。参加し実践するコミュニティと行政との信頼感と課題意識の共有化も紆余曲折を経るであろうが培われるであろう。しかし、これらの未来の改善を充分に受け止めることのできる制度の基本形は2年間の試行を通して、また関係者の努力によって提供し得たのではないかと考えている。

 本報告は、4部で構成されている。第1部では、シーニックバイウェイ制度導入を北海道において検討するに至った背景と制度導入のための検討方針として、モデルルートにおける試行を行うこととした上で、試行の前提条件としての制度の理念や推進のための基本方針を設定している。
第2部では、前提条件として設定された基本方針毎に実施した種々の試行の内容および成果と課題をとりまとめたうえで、制度導入に向けた課題や前提条件を明らかにした。
第3部では、モデルルートにおける試行の成果を踏まえ、本格展開を図るために最低限必要な制度の骨格をとりまとめた。また制度の持続的な推進を図っていく上で、各運営主体が留意しなければならない事項を第4部にとりまとめた。

 平成17年度には日本版シーニックバイウェイが国土交通省道路局の重点プロジェクトとして全国展開される。シーニックバイウェイ制度の取組を本格展開していく中で、ルート運営活動を取り巻く様々な環境の変化や地域の創意工夫を反映して、制度の改善を図ることにより、シーニックバイウェイ制度の取組が持続的に推進されていくことと、その中で本報告書が活用されることを期待する。
平成17 年2月
北海道におけるシーニックバイウェイ制度
導入モデル検討委員会
委員長  石田 東生


表紙および目次
report00.pdf(155KB)
第1部 シーニックバイウェイ制度導入の背景と試行の前提条件としての理念および基本方針
1.北海道におけるシーニックバイウェイ制度導入モデル検討の経緯
2.北海道におけるシーニックバイウェイ制度導入モデル試行の前提条件としての理念と基本方針

report01.pdf(485KB)
第2部 シーニックバイウェイ制度導入に向けた試行の実施と課題
1.北海道におけるシーニックバイウェイ制度導入モデル検討に向けた試行の実施
2.試行のまとめ

report02_1.pdf(3.1MB)
report02_2.pdf(56KB)
第3部 シーニックバイウェイ北海道制度の提案
1.基本的事項
2.制度の流れ
3.シーニックバイウェイ北海道制度運営のための連携組織の役割等 68
4.制度の改善等
5.経過措置

report03.pdf(203KB)
第4部 制度の推進にあたって各運営主体が留意すべき事項
1.各運営主体の役割
2.持続的ルート運営のための留意事項

report04.pdf(33KB)
参考資料
参考資料1 検討委員会での検討経緯
参考資料2 主な広報・普及活動状況
参考資料3 ルート運営活動計画のイメージ

report05.pdf(43KB)
「シーニックバイウェイ北海道制度素案に対して寄せられた意見とそれに対する考え方について」(第7回委員会資料1)はこちらをご覧ください

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