これに対し、最近の企業経営では、こうした作業単位の生産性ではなく、顧客の視点から経営全体を評価するという点が重視されるようになってきました。大量生産時代と異なり、どういう商品やサービスを顧客が望んでいるかを把握しないと生き残れないからです。作業単位の目標より前に、企業として目指すべき目標を明確にすることが求められているのです。具体的には、経営者が、追求すべき企業価値を企業の使命(ミッション)として明らかにし、ミッションの実現と顧客満足度(CS)の向上を目指した部門横断的な戦略目標を明らかにします。その上で、各事業部門が、その目標実現のために何をなすべきかを考えることになります。大量生産時代のように、管理主義的な発想で細かい作業工程ごとの目標を示すのではなく、経営者は「大きな方針」を示し、具体策の企画立案と執行は現場の裁量を幅広く認めるというものです。これにより、同じ目標に向かった、組織一体となった業務運営が可能となります。これを「目標によるマネジメント(MBO=Management by Objectives)」といいます。従来のように、事業部ごとに昨年もこれを生産してきたから今年もこれを生産する、という判断がされていては、新しい時代に向けた変革は実現しません。そうした考えを排して、組織全体が新しく目指すべき目標を考えた、「全体最適」の経営をすることが求められているのです。しかし、現場に裁量を認めるだけでは「うまくいっているかどうか」を確認することができません。そのため、組織全体にわたり目標達成度を測定することが必要となります。そのことで、経営者は、企業の戦略が組織全体としてうまくまわっているかを俯瞰することが可能になります