Q&A集
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Q 政策評価はどのような考え方に基づいているのですか?
Q

行政評価法は、政策評価の目的を、1効果的かつ効率的な行政の推進、2国民に対する説明責任の徹底 であるとしています。そのために、各府省自らが、その所管する政策を評価し、課題を発見し、その結果を企画立案に反映させるというマネジメントサイクルを確立することで、政策の見直し・改善が行われることが期待されています。

○ 政策のマネジメントサイクル(※3)
「企画立案(Plan)」→「実施(Do)」→「評価(See)」→「企画立案へのフィードバック」というサイクル。従来の行政が、「予算要求」→「執行」だけからなる一方通行であり、行政活動が成果をあげているかどうか必ずしも明らかではなかったのではないか、行政活動の評価が行われても散発的でシステムとして定着していないのではないか、との指摘がある。政策評価の導入により、行政全体にマネジメントサイクルを確立させ、常に政策の改善に向けた努力が継続されることを目指す必要がある。

ところで、評価を通じた改善というのはどのような観点から行われるのでしょうか。まずこのことを企業における業績評価を例にとって考えてみましょう。

かつての大量生産の時代は、各事業部門や各作業単位の生産活動に、明確な数値目標が与えられていました。そして例えば四半期ごとにその達成度がチェックされ、目標を達成していない現場は「生産的でない」と「評価」され、現場のマネージャーが生産性を向上させるための改善策を講じることになります。これが業績改善運動と言われるものです。行政評価の世界で、これにほぼ対応するのが、地方公共団体で広く行われている「事務事業評価」です。これは、各課の係単位で、実施しているすべての事務事業を自己点検するというものです。設定した目標が達成されていなければ、担当者として、それをどう改善したらよいかを考えることになります。執行面の改善を日常的に行うための手法としては有効であると考えられます。

これに対し、最近の企業経営では、こうした作業単位の生産性ではなく、顧客の視点から経営全体を評価するという点が重視されるようになってきました。大量生産時代と異なり、どういう商品やサービスを顧客が望んでいるかを把握しないと生き残れないからです。作業単位の目標より前に、企業として目指すべき目標を明確にすることが求められているのです。具体的には、経営者が、追求すべき企業価値を企業の使命(ミッション)として明らかにし、ミッションの実現と顧客満足度(CS)の向上を目指した部門横断的な戦略目標を明らかにします。その上で、各事業部門が、その目標実現のために何をなすべきかを考えることになります。大量生産時代のように、管理主義的な発想で細かい作業工程ごとの目標を示すのではなく、経営者は「大きな方針」を示し、具体策の企画立案と執行は現場の裁量を幅広く認めるというものです。これにより、同じ目標に向かった、組織一体となった業務運営が可能となります。これを「目標によるマネジメント(MBO=Management by Objectives)」といいます。従来のように、事業部ごとに昨年もこれを生産してきたから今年もこれを生産する、という判断がされていては、新しい時代に向けた変革は実現しません。そうした考えを排して、組織全体が新しく目指すべき目標を考えた、「全体最適」の経営をすることが求められているのです。しかし、現場に裁量を認めるだけでは「うまくいっているかどうか」を確認することができません。そのため、組織全体にわたり目標達成度を測定することが必要となります。そのことで、経営者は、企業の戦略が組織全体としてうまくまわっているかを俯瞰することが可能になります

こうした新たな経営手法の考え方を行政にもあてはめようとすることが、「ニュー・パブリックマネジメント(NPM)」とよばれ、欧米諸国の行政改革の基本理念となっています

○ ニュー・パブリックマネジメント(NPM)
民間企業の経営の考え方を行政の現場へあてはめようとするもの。基本的な考え方は、
 (1)顧客重視
 (2)ミッション重視
 (2)現場への権限委譲
などに要約できる。小泉内閣の「改革工程表」(平成13年9月)にも、次のような措置が明記されている。「公共部門に企業経営的な手法を導入し、より効率的で質の高い行政サービスを提供するため、政策評価、公会計、予算・定員管理への対応などについて、計画的な実施に向けて具体的施策を明確にしていく。」

NPMでは、顧客の立場に立って、目標が実現されているかどうか、ミッションが実現されているかどうかを常にチェックして改善を進めていくマネジメントサイクルを重視します。
政策評価については、それを単なる「手続き」の一種と考え、「評価のための評価」を行うことがあってはなりません。政策評価とは、NPM的な考え方で行政の仕事の進め方、マネジメントを改革していく上での重要なツールの一つなのです。

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