安全な車社会のために

自動車の安全性を確保するためには、自動車の点検整備を行い、自動車を良好な状態に保つことがとても重要です。

自動車の点検整備

点検整備不十分・整備作業ミスに起因する事故

● 車両火災事故

 平成27年12月の東京都豊島区池袋でのバス火災事故をはじめ、年末年始から同種事故が多発しました。事業用バスの車両火災は、平成15年1月から平成28年12月までに事業用で246件発生しており、なかには車両が全焼に至るケースも見られ、一歩間違えれば大惨事となりかねません。

 また、バス以外にも車両火災事故は発生しており、点検整備をきちんとすることで防止できるものもあります。

 バス火災事故に注目すると、平成23年から26年に発生したバス火災事故は58件になります。

 出火原因を分析したところ、「点検整備不十分」(25件)及び「整備作業ミス」(11件)が約6割を占めていることがわかりました。

 原因としては、点検整備不十分の割合が多く、適切な点検整備をしていれば、免れたと考えられる事故が見受けられます。

 出火に至る状況では、電気配線ショート、燃料漏れなどが考えられ、出火箇所では、エンジンルーム内の出火が多くみられます。

 日常点検をはじめとした定期点検の励行が重要です。

事業用バス火災事故分析結果
事故を防ぐためには

 また、国土交通省では、関係団体と協力し、バス火災事故を防ぐため、バス事業者向けに「バス火災事故防止のための点検整備のポイント」を作成しています。バス事業者の方は、こちらも参考に確実な点検整備を行って下さい。

火災事故例

デファレンシャル・オイル不良による火災事故

» 注意すべき事例

 バス火災事故の原因と考えられる事象の1つとして、差動装置(デファレンシャル※)のオイルが潤滑不良の状態で走行を続けたことから同装置の内部が加熱し、火災に至ったと推定されるものがあります。

※【差動装置(デファレンシャル)】
 車両がカーブを走行する際、左右の車輪に回転数の差が生じるが、動力源から両輪に同じ回転力を振り分けて伝えるための装置。

» 必要な対策
  1. 1.デファレンシャル周辺のオイル漏れの有無を点検し、オイル漏れがある場合は所要の整備を実施すること。
  2. 2.デファレンシャルのオイルの量を点検し、不足している場合は補給すること。
  3. 3.デファレンシャル・オイルは、自動車製作者等が推奨する期間を参考として交換すること。

バスのスプリング式補助ブレーキを備えた車両の火災事故

» 注意すべき事例

 貸切バスが走行中に後部タイヤ付近から出火した事例がありました。その状況から、駐車ブレーキ補助装置として後輪に設けられたスプリング式補助ブレーキが作動した状態で走行を続けたことから、ブレーキが過熱し、火災に至ったものと推定されています。

» 必要な対策
  1. 1.事業者は、補助ブレーキを備えた車両を把握し、これらの車両を使用する際、自動車製作者が定めた取扱要領に基づき適切に操作するよう、運転者に対して指導すること。
  2. 2.補助ブレーキの作動確認に加え、作動警報装置が正常に作動することを点検し、所要の整備をすること。
  3. 3.補助ブレーキにエア漏れがないことを点検し、所要の整備をすること。

エンジンオイルの劣化による車両火災

» 注意すべき事例

 エンジンオイルの適切なメンテナンスを怠っていると、エンジンオイルの劣化により潤滑不良に至ることでエンジンが破損し、最悪の場合、エンジンが焼きついて火災が発生することがあります。

» 必要な対策

 エンジンオイルは、一定の期間又は一定の走行距離ごとに交換が必要となります。事故を防ぐ対策としては、メーカーが車両毎に推奨する交換時期や走行距離を参考に、整備工場等でオイル交換を実施することが重要です。

 また、自動車を長期間使用する場合だけでなく、エンジンが十分温まらない短時間の使用においても劣化が進行するため、トラックやマイカー等自動車のタイプや使用状況に関わらず、量と汚れについて、日常点検を実施しましょう。

ホイール・ベアリングの整備不良による車両火災

» 注意すべき事例

 ホイール・ベアリングの点検整備を怠ると、車軸の錆によりオイルシールが損傷してグリスに異物(水等)が混入したり、長期間使用による劣化でグリスが流出する等により消耗し、グリス量不足の状態になったりすることによって潤滑不良が発生します。その結果、ホイール・ベアリングにがた等の異常が発生し、そのまま走行を続けた場合、車輪脱落、走行不能の原因となります。

 特に大型トラックやバスにおいては最悪の場合、潤滑不良によりホイール・ベアリングが焼付き、車両火災に至る恐れがあります。

» 必要な対策

整備不良の事故防止対策としては、定期点検等の機会を捉えて整備工場等で確実に実施することが重要です。