マンガで見る海難審判

マンガで見る海難審判_01 これから、海難審判の流れについてマンガとともに解説していきます。

まずは、プレジャーボートが出航する場面からです。
マンガで見る海難審判_02 このマンガには2隻の船が登場します。こちらは先ほど出航したプレジャーボート。
マンガで見る海難審判_03 そして、もう一方のこちらの船は、漁を終えた漁船です。
マンガで見る海難審判_04 2隻はそのうち接近し・・・
マンガで見る海難審判_05 間近になって危険を感じたものの、とうとう・・・、
マンガで見る海難審判_06 両船は衝突してしまいました。

さて、ここから海難審判所の業務が始まります。まず、理事官が、新聞・テレビ等のマスコミ情報や国土交通省・海上保安官・警察官・市町村長等からの通報により海難があったことを認知します。海難を認知した理事官は直ちに調査を開始します。
マンガで見る海難審判_07 理事官からの呼出状が届いたところです。

理事官は調査にあたり、関係人に出頭を求めて質問をすることができます。その場合には、理事官から関係人に「○○に出頭してください」という呼出状が送られます。
また、理事官は関係人に質問をするほかに、船舶や海難発生場所の検査、関係人に書類等の物件を提出させる、関係行政機関に資料の提出を求める、などして海難に関する証拠を集めます。

(注)理事官から呼出状が来たからといって、必ず海難審判を受けることになるとは限りません。(マンガでは海難審判を受けるという前提で書いています。)
マンガで見る海難審判_08 理事官からの呼出状を受けて面接調査を行っているところです。

理事官は関係人に対して海難発生時の状況などを質問します。(理事官の調査は、懲戒によって海難の再発防止を目的とするものであり、海上保安庁の行う捜査とは目的が異なります。)理事官は、調査を行った結果、海技士又は小型船舶操縦士等に対する懲戒を必要と認めた場合、海難審判所又は地方海難審判所に審判を行うよう請求します。(審判開始の申立て)その際に理事官は、故意又は過失があると認める者(海技士・小型船舶操縦士・水先人)を受審人に、受審人の故意又は過失の内容及び懲戒の量定を判断するため必要と認める者を指定海難関係人にそれぞれ指定します。受審人・指定海難関係人に指定された者は、審判開始の申立てを行ったという通告が理事官から届きます。さらにその後審判準備が整い次第、海難審判所又は地方海難審判所から「○月○日、○○で審判を行いますので出頭してください」という呼出状が送られてきます。
マンガで見る海難審判_09 海難審判が行われるところです。

海難審判が行われるところです。理事官による審判開始の申立てを受けて、審判官1名又は審判官3名の合議体により審判が行われます。海難審判には審判官のほか、書記が列席し、理事官立会いのもと、受審人・指定海難関係人・補佐人(受審人・指定海難関係人の選任のもと補佐活動を行う)が出廷して、公開の審判廷で、提出された証拠に基づき、口頭弁論により行われ、このような準司法的手続きで公正・公平な審理を行います。審判では、まず審理に入る前に、「人定尋問」(人違いを避けるための手続き)などの冒頭手続きが行われます。
マンガで見る海難審判_10 理事官が審判開始の申立ての理由を述べているところです。

冒頭手続きが終わると、審理に入ります。まず、「理事官による事件の概要及び審判開始申立て理由の陳述」が行われ、理事官が事件の概要と審判開始の申立てをした理由を述べます。次に「理事官陳述に対する受審人・指定海難関係人・補佐人の意見陳述」の機会が与えられ、先の理事官の陳述に対して意見があれば述べることができます。続いて「証拠調」が行われます。まず理事官が集取した証拠について取調べを行うほか、受審人・指定海難関係人・補佐人もこの場で証拠を提出することができ、それらについても取調べを行います。また、証拠調の中で受審人・指定海難関係人に対する尋問が行われますが、この尋問及び供述の内容も証拠となります。
マンガで見る海難審判_11 漁船の船長に対する尋問が行われているところです。

尋問は審判官が行うほか、理事官・補佐人も審判官に告げて尋問を行うことができます。
マンガで見る海難審判_12 プレジャーボートの船長に対して尋問が行われているところです。

証拠調が終了すると、「理事官の意見陳述」が行われます。これは、理事官がそれまでの審理に基づき、海難の事実を示し、受審人に対する懲戒について意見を述べるものです。続いて受審人・指定海難関係人・補佐人には、この理事官の意見に対して意見を述べる機会が与えられます。
マンガで見る海難審判_13 補佐人が理事官意見に対する意見を述べているところです。

ここで補佐人について詳しく説明します。補佐人は裁判における弁護人のようなもので、審判によって受審人・指定海難関係人が不当な不利益を受けることがないよう補佐してくれます。特に審判手続に不慣れな人にとっては心強い味方となってくれます。補佐人は審判が始まる前に選任する必要があります。補佐人の選任にかかる費用についてはそれぞれの補佐人との契約事項でありますが、経済的に補佐人を選任することが困難な人のために公益財団法人 海難審判・船舶事故調査協会の扶助制度があります。同協会は全国の海難審判所の所在地に相談所を設けており、補佐人の扶助制度だけでなく、海難審判に関する一切について相談(無料)に応じていますので、海難審判について分からないことは最寄りの相談所へ気軽にご相談ください。
マンガで見る海難審判_14 審判官が審理の終結(結審)を宣言しているところです。

審判の最後に、受審人・指定海難関係人に最終陳述の機会が与えられます。ここでは、事件に関することで何でも意見を述べることができます。
以上の全ての審理が終了すると、審判官から結審したことが告知されます。
(審理の期間は事件によって異なります。1日で終わる場合もあれば、数回の審理を繰り返す場合もあります。)
マンガで見る海難審判_15 審判官が裁決を言い渡しているところです。

結審後、審判官1名又は審判官3名の合議体は裁決書を作成します。裁決書には認定した海難の事実及び受審人に故意又は過失が認められれば受審人に対して懲戒を行います。(ただし、通常は結審から裁決言渡しまで1ヶ月程度かかります。)
マンガで見る海難審判_16 関係人が裁決書謄本をじっくり読んでいるところです。

裁決言渡し後、受審人・指定海難関係人に裁決書の謄本が交付されます。裁決書をよく読み今後注意して安全航行に努めましょう。また、懲戒がある場合、理事官がその執行を行います。なお、裁決に不服のある場合は、裁判所に訴えを提起することができます。