裁決事例2

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衝突事件(行会い船の航法)
遊漁船A丸漁船B丸衝突事件
船種船名  遊漁船A丸    漁船B丸
総トン数   3トン        3トン
全   長  11メートル    11メートル
(事実の経過)
 A丸は、15時31分少し過ぎ防波堤灯台から034度(真方位、以下同じ)1,550メートルの地点において、針路を205度に定め、機関を微速力前進にかけ、7.0ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
 A丸船長は、15時33分わずか過ぎ防波堤灯台から037度1,150メートルの地点に達したとき、正船首わずか左590メートルのところに、ほとんど真向かいに行き会う態勢のB丸を視認できる状態となったが、この時刻に帰港する船はいないものと思い、周囲の見張りを十分に行っていなかったので、同船を見落とし、その後同船とほとんど真向かいに行き会い衝突するおそれがある態勢で接近することに気付かず、その左舷側を通過することができるよう針路を右に転じることなく、左方の防波堤の方向に注意を払って南下を続けた。
 15時34分半わずか過ぎA丸船長は、機関を全速力前進にかけて13.0ノットに増速し、次いで同時35分防波堤灯台から045度700メートルの地点において、A丸は、200度に向首し、13.0ノットの速力で、その船首がB丸の左舷側前部に前方から25度の角度で衝突した。
 当時、天候は晴で風力1の北風が吹き、視界は良好であった。
 また、B丸は、15時25分少し前防波堤灯台から125度315メートルの地点において、針路を020度に定め、機関を極微速力前進にかけ、2.2ノットの対地速力で、手動操舵により進行した。
 B丸船長は、15時33分わずか過ぎ防波堤灯台から050度590メートルの地点に達したとき、正船首わずか右590メートルのところに、ほとんど真向かいに行き会う態勢のA丸を初めて視認したが、一べつしたのみで互いに左舷を対して航通できるものと思い、A丸に対する動静監視を十分に行わなかったので、その後ほとんど真向かいに行会い衝突するおそれがある態勢で接近することに気付かず、その左舷側を通過することができるように針路を右に転じることなく、防波堤との距離を保とうと右方に注意を払って北上を続けた。
 15時35分少し前B丸船長は、正船首わずか右至近にA丸の船首部を視認し、衝突の危険を感じて右舵一杯をとったものの効なく、B丸は045度に向首し、原速力のまま、前示とおり衝突した。
 衝突の結果、A丸は、船首に凹損を生じ、B丸は、左舷側前部外板、同舷縁及び操舵席屋根とその支柱を破損した。
(原 因)
 本件衝突は、南下するA丸と北上するB丸とが、ほとんど真向かいに行き会い衝突するおそれがある際、A丸が、見張り不十分で、B丸の左舷側を通過することができるように針路を右に転じなかったことと、B丸が、動静監視不十分で、A丸の左舷側を通過できるように進路を右に転じなかったこととによって発生したものである。
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