平成24年神審第35号
             裁    決
   漁船万代丸漁船第101旭洋丸漁具・漁船第三豊丸衝突事件

  言 渡 年 月 日 平成25年9月30日
  審  判  所 神戸地方海難審判所(藤岡善計)
  理  事  官 宮川尚一
  受  審  人 A
     職  名 第十一旭洋丸船長
     海技免許 五級海技士(航海)(履歴限定)
  補  佐  人 a
  受  審  人 B
     職  名 第三豊丸船長
     操縦免許 小型船舶操縦士

             主    文
 受審人Bの小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 受審人Aを戒告する。

             理    由
 (海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成24年2月20日21時10分
 徳島県伊島南方沖合
2 船舶の要目
 船 種 船 名  漁船万代丸         漁船第101旭洋丸
 総 ト ン 数  108トン         4.0トン
   全   長  37.75メートル
   登 録 長                 9.00メートル
   機関の種類  ディーゼル機関       ディーゼル機関
   出    力  551キロワット
   漁船法馬力数               70
 船 種 船 名  漁船第三豊丸
 総 ト ン 数  19.99トン
   全   長  21.60メートル
   機関の種類  ディーゼル機関
   漁船法馬力数 150

3 事実の経過
 万代丸は,中型まき網漁業船団の運搬船として付属する鋼製漁船で,船長ほか5人が乗り組み,操業の目的で,船首1.0メートル船尾2.0メートルの喫水をもって,平成24年2月20日16時00分徳島小松島港を発し,徳島県伊島南方沖合約10海里の漁場に向かった。
 また,第101旭洋丸(以下「101旭洋」という。)は,同船団の裏漕ぎ作業等に従事する作業艇として付属する鋼製漁船で,A受審人ほか16人が乗り組んだ網船第十一旭洋丸(以下「十一旭洋」という。)の船尾に無人状態でえい航され,操業の目的で,灯船とともに,16時00分同県橘港を発し,万代丸と洋上で合流して漁場に向かった。
 ところで,万代丸及び101旭洋が付属するまき網漁業船団(以下「旭洋丸船団」という。)は,網船,運搬船,灯船3隻及び作業艇で構成される船団で操業を行い,A受審人は,同船団の漁ろう長として,十一旭洋の操舵室で操業全般の指揮を執るほか,船団周囲の見張りに当たっていた。
 そして,旭洋丸船団の行うまき網漁業は,漁場に到着すると,直ちに灯船による魚群探索を行い,魚影を見つけると十一旭洋が漁網を円形に投入して魚群を取り囲み,同網を絞り込んだのち7割程度揚網してから,漁獲物を運搬船に取り込むまでの間,十一旭洋と万代丸が施網した漁網の対角線上に同網を挟むように占位し,漁網を円形状態に保つため及び船体の大傾斜を防ぐため,101旭洋が万代丸の及び灯船1隻が十一旭洋のそれぞれ裏漕ぎ作業に当たっていた。
 18時00分A受審人は,漁場に到着し,同人指揮の下,灯船による魚群探索を行ったのち,18時30分101旭洋を十一旭洋から切り離し,同船が時計回りで直径約300メートルのほぼ円形に漁網を投入して,同網の下部が着底するのを待ってから,漁網の北側に占位して,船首を東方に向け,灯船に裏漕ぎとして自船の左舷側を引かせながら漁網の絞り込みを始めた。
 その後,A受審人は,漁網の7割程度を揚網した時点で,近くで待機していた万代丸と漁網を挟むようにお互いが右舷を対して2本の係留索で繋ぎ留め,灯船が引き続き十一旭洋の裏漕ぎ作業を,101旭洋が同船のドラムに巻いてある直径28ミリメートル(以下「ミリ」という。)長さ200メートルの合成繊維索の端に万代丸の左舷船首及び同船尾から出されたワイヤーの端を金具で連結して,万代丸の裏漕ぎ作業をそれぞれ始めた。
 A受審人は,トロール従事船以外の漁ろうに従事している船舶が掲げる灯火及びきんちゃく網を用いて漁ろうに従事している船舶が掲げる交互に点滅する黄色の全周灯2箇を表示したほか,マスト灯,黄色回転灯及び多数の作業灯を点灯させ,操舵室右舷前部に置かれた椅子に腰掛け,機関を中立運転とし,レーダーを3海里レンジ及び6海里レンジに適宜切り替えて作動させ,船団周囲の見張りに当たり,101旭洋及び灯船に対して,適宜引く方向などを指示しながら,操業の指揮を執った。
 一方,万代丸は,紅,白の全周灯及び漁具を水平距離150メートルを超えて船外に出している方向を示す白色全周灯を表示することなく,舷灯並びに船尾灯を表示し,マスト灯,黄色回転灯及び多数の作業灯を点灯し,操舵室を無人として,乗組員総員が甲板上で漁獲物取り込みの準備を始めた。
 また,101旭洋は,舷灯及び船尾灯を表示し,マスト灯,黄色回転灯及び作業灯を点灯し,船長として乗り込む予定だった乗組員がインフルエンザで下船したことから,操縦免許を受有しないものの裏漕ぎ作業に精通している甲板員が同船の操船者として単独で乗り組み,A受審人の指示に従って,コンパスや裏漕ぎ綱の張り具合を見て,引く方向及び機関の出力を調整しながら,同作業に当たった。
 21時09分少し過ぎA受審人は,伊島灯台から174度(真方位,以下同じ。)8.80海里の地点で,船首が090度に向首した態勢で揚網中,万代丸の南東方200メートルのところで101旭洋を135度方向に裏漕ぎさせていたとき,右舷船尾23度180メートルのところに,両船間の裏漕ぎ綱に向首している第三豊丸(以下「豊丸」という。)の白,紅2灯及び作業灯を視認することができ,その後,同船が裏漕ぎ綱に衝突のおそれがある態勢で接近したが,近くを通航する漁船は,自船団の操業状況を知っているので,裏漕ぎ綱のある万代丸と101旭洋の間を通航することはないものと思い,周囲の見張りを十分に行わなかったので,このことに気付かず,漁網の状態及び甲板上の作業状況を見ながら,揚網を続けた。
 21時09分半A受審人は,裏漕ぎ綱に接近する豊丸に初めて気付き,同綱と衝突のおそれを感じて汽笛を吹鳴するとともに探照灯を照射したものの,どうすることもできず,衝突の僅か前101旭洋の甲板員に漁船の接近を知らせて衝突に備えるよう伝えた直後,21時10分伊島灯台から174度8.84海里の地点において,万代丸の南東方90メートル付近の裏漕ぎ綱に豊丸の船首が衝突した。
 当時,天候は晴れで,風力1の西風が吹き,潮候は下げ潮の末期であった。

 また,豊丸は,中型まき網漁業船団の運搬船として付属するFRP製漁船で,B受審人ほか2人が乗り組み,操業の目的で,船首0.37メートル船尾2.21メートルの喫水をもって,同日17時00分網船及び灯船など8隻の船団で和歌山県塩屋漁港を発し,伊島南方沖合約10海里の漁場に向かった。
 ところで,B受審人は,平成14年8月から中型まき網漁業に従事するようになり,同18年から運搬船の船長職に就いていたことから,伊島南方沖合で行われている中型まき網漁業について承知していた。
 19時00分B受審人は,漁場に到着して,旭洋丸船団の西方至近海域で操業を行い,21時00分頃あじ約20トンを獲て,航行中の動力船を示す法定灯火を表示したほか,甲板を照らす作業灯5箇を点灯し,伊島灯台から175.5度8.75海里の地点を発進して帰途に就いた。
 発進後B受審人は,塩屋漁港の方向に,十一旭洋及び万代丸の多数の作業灯など及び同灯に照らされた船体を視認し,両船がほぼ接舷した態勢で操業している状況から同業のまき網漁業に従事する漁船が揚網していることを認め,両船の南方海域に他の船団を見かけなかったことから,両船の南方を航過することとして,21時08分半少し過ぎ伊島灯台から175度8.78海里の地点で,針路を135度に定め,機関を半速力前進の回転数毎分1,500にかけ,8.5ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で,舵輪後方に立って,手動操舵で進行した。
 21時09分少し過ぎB受審人は,伊島灯台から175度8.83海里の地点に至り,十一旭洋及び万代丸を左舷船首68度180メートル付近に見るようになったので,針路を左に転じて090度にしたとき,右舷船首14度320メートルのところに万代丸の裏漕ぎ作業に当たっていた101旭洋の船尾灯及び作業灯を視認することができ,その後,両船間の裏漕ぎ綱に衝突のおそれがある態勢で接近する状況となったが,針路を定めたとき,自船が付属する船団の裏漕ぎ綱の長さが50メートルだったので,万代丸の南方50メートル付近を一瞥しただけで漁船を見かけなかったことから,裏漕ぎ作業は終わったものと思い,周囲の見張りを十分に行わなかったので,万代丸の南東方200メートルのところで裏漕ぎ作業に当たっていた101旭洋にも,同船と万代丸間の裏漕ぎ綱にも気付かずに進行した。
 こうして,B受審人は,裏漕ぎ綱を避けることなく進行し,21時09分半十一旭洋が吹鳴した汽笛及び同船の探照灯による照射にも気付かず続航し,豊丸は,原針路,原速力のまま,前示のとおり衝突した。
 衝突の結果,101旭洋は,裏漕ぎ綱に引きずられて転覆し,のちえい航途中で沈没して廃船処理され,豊丸は船首部に擦過傷を生じた。また101旭洋の甲板員が,海中に投げ出されたが,豊丸の僚船に救助され,溺水により8日間の入院及び1週間の自宅療養を要する負傷を負った。

 (航法の適用)
 本件は,夜間,徳島県伊島南方沖合において,漁獲物を運搬する東行中の豊丸と,まき網漁業に従事する旭洋丸船団の漁具とが衝突したもので,同海域には特別法の適用がないので,一般法である海上衝突予防法(以下「予防法」という。)が適用されることになる。
 万代丸及び101旭洋は,トロール以外の漁法で漁ろうに従事している船舶が掲げる紅灯並びに白色全周灯及び漁具を水平距離150メートルを超えて船外に出している方向を示す白色全周灯を表示していなかったが,豊丸が見張りを十分に行っていれば,101旭洋の船尾灯及び作業灯を視認することができ,船団の操業状況から,同船が豊丸と同業のまき網漁業船団に付属して裏漕ぎ作業に従事し,万代丸と101旭洋間に裏漕ぎ綱が張られていることを視認できたものと認められる。
 一方,豊丸は,航行中の動力船であり,同船の東方至近で旭洋丸船団が操業中であったものの,南方には第三船や航行上の障害物なども存在しなかったので,行動の自由は制限されておらず,旭洋丸船団を避けるための十分な距離的余裕があったものと認められる。
 また,豊丸が衝突したのは,旭洋丸船団の裏漕ぎ綱であるが,漁船と同船に繋がれた漁具とは一体であることから航行中の動力船と漁ろうに従事している船舶との関係になり,本件は,予防法第18条各種船舶間の航法を適用するのが相当である。

 (原因及び受審人の行為)
 本件漁具衝突は,夜間,徳島県伊島南方沖合において,漁獲物を運搬する東行中の豊丸が,まき網漁業に従事する旭洋丸船団の南方を航過する際,見張り不十分で,万代丸と101旭洋間の裏漕ぎ綱に向首進行したことによって発生したが,十一旭洋が,見張り不十分で,警告信号を行わなかったことも一因をなすものである。
 B受審人は,夜間,伊島南方沖合において,まき網漁業に従事する十一旭洋と万代丸が互いにほぼ接舷した態勢で揚網しているのを視認して,両船の南方を航過する場合,裏漕ぎ作業に当たっていた101旭洋及び同船と万代丸間の裏漕ぎ綱を見落とすことのないよう,周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかし,同人は,万代丸の南方50メートル付近を一瞥しただけで,漁船を認めなかったことから,裏漕ぎ作業は終わったものと思い,周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により,万代丸の南東方200メートル付近で裏漕ぎ作業に当たっていた101旭洋にも,同船と万代丸間の裏漕ぎ綱にも気付かず,同綱を避けることなく進行して裏漕ぎ綱との衝突を招き,101旭洋を転覆させ,えい航途中で沈没して廃船処理とし,豊丸に損傷を生じさせ,101旭洋の甲板員を負傷させるに至った。
 以上のB受審人の行為に対しては,海難審判法第3条の規定により,同法第4条第1項第2号を適用して同人の小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 A受審人は,夜間,伊島南方沖合において,万代丸と101旭洋間に裏漕ぎ綱を張って,まき網漁業に従事する場合,同綱に向首進行する他船を見落とすことのないよう,周囲の見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかし,同人は,近くで操業する漁船は,自船団の操業状況を知っているので,裏漕ぎ綱のある万代丸と101旭洋の間を通航することはないものと思い,周囲の見張りを十分に行わなかった職務上の過失により,豊丸と裏漕ぎ綱との衝突を招き,両船に前示の事態を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の行為に対しては,海難審判法第3条の規定により,同法第4条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。

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