平成28年函審第24号
             裁    決
       漁船保栄丸漁船第三十五力丸衝突事件

  言 渡 年 月 日 平成29年7月27日
  審  判  所 函館地方海難審判所(榎木園正一)
  理  事  官 浅野活人
  受  審  人 A
     職  名 保栄丸船長
     操縦免許 小型船舶操縦士
  受  審  人 B
     職  名 第三十五力丸船長
     操縦免許 小型船舶操縦士
  補  佐  人 a

            主    文

 受審人Aの小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。
 受審人Bを戒告する。

            理    由
 (海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成28年7月1日15時20分
 北海道江良漁港西方沖合

2 船舶の要目
  船 種 船 名  漁船保栄丸       漁船第三十五力丸
  総 ト ン 数  14.89トン     9.7トン
    登 録 長  14.97メートル   14.73メートル
    機関の種類  ディーゼル機関     ディーゼル機関 
    出   力  468キロワット    540キロワット

3 事実の経過
 保栄丸は,船体ほぼ中央に操舵室を設け,同室前部左舷側に魚群探知機,ソナー及び機関遠隔操縦装置,中央に1号レーダー及び舵輪,右舷側にGPSプロッター,右舷側壁に2号レーダーをそれぞれ備えたいか釣り漁業に従事するFRP製漁船で,A受審人ほか1人が乗り組み,操業の目的で,船首1.0メートル船尾2.5メートルの喫水をもって,平成28年7月1日15時00分頃北海道江良漁港を発し,同漁港西方の大島沖合の漁場に向かった。
 A受審人は,乗組員が操舵室後方の船員室で休息する中,舵輪後方に立って操船に当たり,15時03分江良漁港の島防波堤の北端沖を通過し,船首を西南西方に向けたとき,左舷船首方に北上中の第三十五力丸(以下「力丸」という。)を初めて視認し,自船の船首方を右方に航過する態勢のいか釣り漁船と判断して西行した。
 A受審人は,3海里レンジとした1号レーダー,0.5海里レンジとした2号レーダーのほか魚群探知機をそれぞれ作動させ,15時10分少し前清部港西防波堤灯台(以下「西防波堤灯台」という。)から310度(真方位,以下同じ。)2.3海里の地点で,針路を大島北方沖合に向く283度に定め,9.5ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で,手動操舵により進行した。
 A受審人は,魚群探知機でいかの魚群を認めたらすぐに漂泊するつもりで続航し,15時15分西防波堤灯台から303度3.1海里の地点に至ったとき,力丸が正船首1,470メートルのところで船首を東南東に向けて漂泊し,その後同船に向首して衝突のおそれがある態勢で接近することを認め得る状況であったが,力丸は自船の船首方を無難に航過するものと思い,力丸に対する動静監視を十分に行わなかったので,このことに気付かず,同船を避けることなく進行し,15時20分僅か前正船首至近に右回頭中の力丸を認めて機関を後進にかけたものの,及ばず,15時20分西防波堤灯台から299度3.8海里の地点において,保栄丸は,原針路及びほぼ原速力で,その船首が力丸の左舷船尾に前方から32度の角度で衝突した。
 当時,天候は晴れで風力1の東風が吹き,視界は良好で,潮候は下げ潮の中央期であった。
 
 また,力丸は,船体ほぼ中央に操舵室を設け,同室前部左舷側に1号レーダー,ソナー及び魚群探知機,中央にマグネットコンパス及び舵輪,右舷側に機関遠隔操縦装置及び2号レーダー,後部棚の中央にGPSプロッターをそれぞれ備えたいか釣り漁業に従事するFRP製漁船で,B受審人ほか1人が乗り組み,操業の目的で,船首0.6メートル船尾1.7メートルの喫水をもって,同日13時45分北海道松前港を発し,江良漁港西方沖合約3海里の漁場に向かった。
 B受審人は,1.5海里レンジとした1号レーダー,6海里レンジとした2号レーダーのほか魚群探知機をそれぞれ作動させ,14時06分半西防波堤灯台から163度7.2海里の地点で,針路を前示漁場に向く328度に定め,9.0ノットの速力で,自動操舵により進行した。
 B受審人は,舵輪右後方に立ち,乗組員を自身の左舷側に立たせて続航し,15時03分右舷方の江良漁港港口付近に同港を出港した保栄丸を2号レーダーで探知するとともに初めて視認した。
 B受審人は,操業準備のために乗組員を船首に移動させ,15時15分前示衝突地点付近に至ったとき,魚群探知機でいかの魚群を認めたことから,船首を東南東に向けて漂泊を開始し,機関を中立運転としていか釣り機を作動させた。
 漂泊を開始したときB受審人は,保栄丸がほぼ正船首1,470メートルのところとなり,その後自船に向首して衝突のおそれがある態勢で接近することを認めたが,保栄丸は自船に気付いており,保栄丸が自船を避けるものと思い,避航の気配がないまま接近する保栄丸に対して警告信号を行わず,機関を使用して移動するなど,衝突を避けるための措置をとることなく漂泊を続け,15時20分少し前ほぼ正船首至近となった同船との衝突の危険を感じ,右舵一杯として機関を全速力前進にかけたものの,及ばず,力丸は,船首が135度に向き,5.0ノットの速力になったとき,前示のとおり衝突した。
 
 衝突の結果,保栄丸は,球状船首に亀裂,左舷船首外板等に擦過傷を,力丸は,左舷船尾外板に破口,亀裂等をそれぞれ生じたものの,後にいずれも修理された。
  
 (航法の適用)
 本件は,江良漁港西方沖合において,航行中の保栄丸と漂泊中の力丸とが衝突したものであり,本件発生海域は,港則法及び海上交通安全法の非適用海域であるから,海上衝突予防法が適用されることとなるが,同法には,航行中の船舶と漂泊中の船舶との関係についての規定がないから,同法第38条及び第39条の規定を適用して船員の常務により律することになる。
 
 (原因及び受審人の行為)
 本件衝突は,江良漁港西方沖合において,航行中の保栄丸が,動静監視不十分で,前路で漂泊中の力丸を避けなかったことによって発生したが,力丸が,警告信号を行わず,衝突を避けるための措置をとらなかったことも一因をなすものである。
 A受審人は,江良漁港西方沖合において,漁場に向けて航行中,左舷船首方に北上中の力丸を認めた場合,衝突のおそれの有無を判断することができるよう,同船に対する動静監視を十分に行うべき注意義務があった。ところが,同人は,力丸は自船の船首方を無難に航過するものと思い,力丸に対する動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により,前路で漂泊中の同船に向首して衝突のおそれがある態勢で接近することに気付かず,力丸を避けることなく進行して衝突を招き,保栄丸及び力丸両船に損傷を生じさせるに至った。
 以上のA受審人の行為に対しては,海難審判法第3条の規定により,同法第4条第1項第2号を適用して同人の小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 B受審人は,江良漁港西方沖合において,漂泊中,自船に向首して衝突のおそれがある態勢で接近する保栄丸を認めた場合,機関を使用して移動するなど,衝突を避けるための措置をとるべき注意義務があった。ところが,同人は,保栄丸は自船に気付いており,保栄丸が自船を避けるものと思い,衝突を避けるための措置をとらなかった職務上の過失により,衝突を招き,保栄丸及び力丸両船に損傷を生じさせるに至った。
 以上のB受審人の行為に対しては,海難審判法第3条の規定により,同法第4条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 よって主文のとおり裁決する。

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