平成22年海審第4号
             裁    決
       遊漁船第八天祐丸防波堤衝突事件

  言 渡 年 月 日 平成23年10月26日
  審  判  所 海難審判所(前久保勝己,工藤民雄,小寺俊秋)
  理  事  官 加藤昌平
  受  審  人 A
     職  名 第八天祐丸船長
     操縦免許 小型船舶操縦士

             主    文
 受審人Aの小型船舶操縦士の業務を2箇月停止する。

             理    由
 (海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成21年6月14日04時33分
 北海道遠別漁港

2 船舶の要目
 船 種 船 名  遊漁船第八天祐丸
 総 ト ン 数  4.94トン
   登 録 長  11.30メートル
   機関の種類  ディーゼル機関
   出   力  235キロワット

3 事実の経過
(1) 構造及び設備等
 第八天祐丸(以下「天祐丸」という。)は,昭和55年3月に進水した,最大とう載人員が旅客12人船員1人のFRP製遊漁船で,船体前部に操舵室,同中央部に機関室囲壁が配置されていた。
 操舵室は,船首ブルワークの内側から後方1.70メートルのところに前端が位置し,船首尾方向の長さ1.60メートル幅1.28メートル屋根の高さ甲板上1.72メートルで,左舷側後部に引き戸を設けた出入口があり,操舵室右舷側壁と右舷ブルワークとの間の通路幅が0.54メートル,同室左舷側壁と左舷ブルワークとの間の通路幅が0.98メートルであった。
 操舵室には,窓枠によって3分割された前面ガラス窓の左右に旋回窓がそれぞれ備え付けられ,レーダー,GPSプロッター及び魚群探知機が各1台装備され,主機の前後進切換え及び回転数増減並びに操舵については,リモコンにより操舵室から外に移動して遠隔操作することができるようになっていた。

(2) 遠別漁港
 遠別漁港は,北海道北西岸の日本海に面し,遠別川河口部の北側に位置する漁港で,同河口右岸から北西方向に南防波堤が,漁港北部に築造された突堤の先端から南西方向に西防波堤がそれぞれ延びていて,両防波堤の先端部の間が港口になっており,北海道遠別町字北浜に所在する北浜四等三角点から216度(真方位,以下同じ。)880メートルの地点に当たる,南防波堤の先端部には遠別漁港南防波堤標識灯(標体赤色,以下「赤色標識」という。)が,赤色標識から082度100メートルの地点に当たる,西防波堤の先端部には遠別漁港西防波堤標識灯(標体白色,以下「白色標識」という。)が,いずれも国土交通省北海道開発局によって設置されていた。
 遠別漁港の船だまりは,南防波堤の遠別川河口寄りの部分と西防波堤の300メートルないし400メートル南東方に築造された北防波堤とによって囲まれた内側に設けられ,船だまり中央部の岸壁と同岸壁南西端から西方の南防波堤の方向に築造された内防波堤によって南北に分けられ,南側が水深2メートル,北側が水深3メートルであった。そして,北防波堤先端と南防波堤との間隔及び内防波堤先端と南防波堤との間隔は,いずれも約30メートルであった。

(3) 本件発生に至る経過
 天祐丸は,A受審人が1人で乗り組み,釣り客12人を乗せ,遊漁を行う目的で,船首0.45メートル船尾1.40メートルの喫水をもって,平成21年6月14日04時30分遠別漁港の水深2メートルの船だまり南側の岸壁を発し,同漁港南西方沖合2海里付近の釣り場に向かった。
 ところで,A受審人は,出航する際,いつもは港口を通過するまで前方がよく見えるように船首部に立って操船していたものの,当日は釣り客が乗船するや否や,あらかじめ自分たちで決めていた場所割りに従って6人ずつ両舷に分かれ,操舵室横から船尾部までの舷側にほぼ等間隔に並び,最も船首側の釣り客が操舵室横の左右の通路に1人ずついて,両人ともクーラーボックスの上に腰掛けて釣りの準備を始めたので,釣り客の傍らを通ることをはばかり,釣り客に場所の移動を要請することも遠慮して船首部に赴くことも止め,操舵室右後方のブルワークの側に立ち,右舷側の最も船首側にいる釣り客の約2メートル後方で,機関と舵のリモコンを手に持って操船に当たることにした。
 A受審人は,間もなく自身の前にいる釣り客が釣りの準備のため,クーラーボックスから立ち上がったり,中腰になったりするようになり,同釣り客が立ち上がると船首方の見張りが妨げられるので,釣り客の動作を気にするようになった。
 A受審人は,内防波堤先端と南防波堤との間を緩やかに右旋回して通過したのち,左舵をとり,出航するときに港口の目標にしていた白色標識に向首するつもりで舵を中央に戻したものの,船首が白色標識より左方に向いたので,船首方向を修正するため船首を右方に少し振り,間もなく白色標識から目を離し,自身の前にいる釣り客の方を見ながら,再び舵を中央に戻し,04時32分少し前赤色標識から130度470メートルの地点で,針路を326度に定め,機関を微速力前進にかけ,3.0ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で手動操舵により進行した。
 A受審人は,定針したときほぼ正船首方110メートルのところの北防波堤先端部に向首する状況となったが,自身の前で釣りの準備をしている釣り客に気を奪われ,見張りを十分に行わなかったので,このことに気付かずに続航中,ふと船首方を向いたとき,目前に迫った防波堤を認めたものの,何をする間もなく,04時33分赤色標識から125.5度370メートルの地点において,天祐丸は,同じ針路,速力のまま,北防波堤先端部の南面に衝突した。
 当時,天候は曇りで風力1の東風が吹き,潮候は上げ潮の中央期に当たり,日出は03時46分で,視界は良好であった。
 衝突の結果,船首部外板に亀裂を生じ,釣り客8人が負傷し,そのうち,2人が加療約4週間の肋骨骨折等を,1人が加療約2週間の右側頭部打撲等を,5人が加療約1週間の頸椎捻挫等をそれぞれ負い,自らも加療約2週間の鼻骨骨折等を負った。

 (原因及び受審人の行為)
 本件防波堤衝突は,遠別漁港において,釣り場に向かうため,港奥の船だまりから防波堤間の水域を港口に向けて出航する際,見張り不十分で,北防波堤に向首したまま進行したことによって発生したものである。
 A受審人は,遠別漁港において,釣り場に向かうため,港奥の船だまりから防波堤間の水域を港口に向けて出航する場合,北防波堤先端と南防波堤との間を安全に通航することができるよう,見張りを十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,自身の前で釣りの準備をしている釣り客に気を奪われ,見張りを十分に行わなかった職務上の過失により,北防波堤に向首していることに気付かないまま進行して同防波堤への衝突を招き,船体を損傷させ,釣り客8人を負傷させたうえ,自らも負傷するに至った。
 以上のA受審人の行為に対しては,海難審判法第3条の規定により,同法第4条第1項第2号を適用して同人の小型船舶操縦士の業務を2箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。



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