平成24年海審第12号
             裁    決
 押船翔洋丸被押はしけ ちゃぱりと貨物船第五天光丸衝突事件

  言 渡 年 月 日 平成26年9月25日
  審  判  所 海難審判所(西村敏和,加藤昌平,門戸俊明)
  理  事  官 横井幸治
  受  審  人 A
     職  名 翔洋丸船長 
     海技免許 五級海技士(航海)
  補  佐  人 a,b,c,d,e
  受  審  人 B
     職  名 第五天光丸船長
     海技免許 五級海技士(航海)(旧就業範囲)
  受  審  人 C
     職  名 第五天光丸一等航海士
     海技免許 五級海技士(航海)(旧就業範囲)

             主    文

 受審人Aの五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。
 受審人Cを戒告する。
 受審人Bを懲戒しない。

             理    由
 (海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成24年6月4日22時10分
 愛媛県二神島南西方沖合

2 船舶の要目
  船 種 船 名 押船翔洋丸     はしけ ちゃぱりと
  総 ト ン 数 121トン
    全   長 30.00メートル  108.00メートル
    機関の種類 ディーゼル機関
    出   力 2,647キロワット
  船 種 船 名 貨物船第五天光丸
  総 ト ン 数 199トン
    全   長 55.68メートル
    機関の種類 ディーゼル機関
    出   力 735キロワット

3 事実の経過
(1) 設備及び性能等
ア 翔洋丸及びちゃぱりと
 翔洋丸は,平成8年10月に進水し,固定ピッチプロペラ2個及びシリングラダー2舵を装備した2機2軸を有する鋼製押船で,常時,その船首部を,平成元年に建造された非自航型で鋼製はしけのちゃぱりと(以下「はしけ」という。)の船尾凹部に嵌合してピンジョイントで結合し,全長が約123メートルの押船列(以下「翔洋丸押船列」という。)を構成しており,主として,広島県呉湾の三ツ子島で工業用塩を積載し,国内各港への輸送に従事していた。
 翔洋丸の操舵室は,船首端から6.0メートルのところに前端が位置する4層からなる甲板室の最上層で,上甲板から8.0メートルのところに設けられ,同室前部中央にジャイロコンパスレピータが組み込まれた,自動操舵又は遠隔管制器若しくは舵輪により手動操舵ができる操舵装置があり,同装置の右舷側に自動物標追跡装置が付いた1号レーダー並びに左舷側に2号レーダー及びGPSプロッターがそれぞれ設置されており,また,はしけの船首甲板には,マストが設置されているだけで,視界を妨げるものはなく,同室からの前方の見通しは良好であった。
 海上公試運転成績表(押船列構成時)によると,速力は,機関回転数毎分710(以下,回転数については毎分のものを示す。)のとき対水速力10.2ノットであり,同710のとき舵角35度による旋回性能は,左旋回時の最大縦距が350メートル及び最大横距が447メートル,右旋回時の最大縦距が334メートル及び最大横距が415メートル,左旋回時に90度回頭の所要時間は,1分31秒であった。また,機関回転数710として10.4ノットで前進中に後進をかけたときの最短停止距離は447メートルで,所要時間は2分35秒であった。

イ 第五天光丸
 第五天光丸(以下「天光丸」という。)は,平成7年9月に進水し,シリングラダーを装備した鋼製貨物船で,主として,阪神港と九州の各港間で鋼材の輸送に従事していた。
 操舵室は,船首端から43.5メートルのところに前端が位置する3層からなる甲板室の最上層で,上甲板から3.9メートルのところに設けられ,同室前面中央にジャイロコンパスレピータが組み込まれた,自動操舵又は遠隔管制器若しくは舵輪により手動操舵ができる操舵装置があり,同装置の左舷側に自動物標追跡装置が付いた1号及び2号レーダーが,右舷側にはバウスラスタ遠隔操縦装置及び機関遠隔操縦装置がそれぞれ設置されており,甲板上に視界を妨げるものはなく,同室からの前方の見通しは良好であった。
 海上公試運転成績書によると,速力は,機関回転数350のとき対水速力12.2ノット,また,同速力11.9ノットのとき舵角35度による旋回性能は,左旋回時及び右旋回時ともに最大縦距75メートル及び最大横距70メートル,左旋回時及び右旋回時ともに回頭角度15度の所要時間が12秒,同30度が17秒及び同60度が27秒で,同90度では左旋回時が36秒,右旋回時が37秒であり,機関回転数350として前進中に同318で後進をかけたときの停止時間は,1分24秒であった。

(2) 関係人の経歴等
 (省略)

(3) 本件発生に至る経緯
 翔洋丸は,A受審人ほか6人が乗り組み,工業塩10,200トンを積載して船首7.56メートル船尾7.68メートルの喫水となったはしけと翔洋丸押船列を構成し,船首3.00メートル船尾4.90メートルの喫水をもって,平成24年6月4日17時40分三ツ子島を発し,怒和島水道及び平郡水道経由で山口県宇部港に向かった。
 ところで,A受審人は,宇部港までの航海時間が約12時間であったので,船橋当直を,一等航海士が18時から21時まで,自身が21時から24時まで,次席一等航海士が00時から03時まで,及び三席一等航海士が03時から06時までの単独3時間交替の4直制としていた。
 A受審人は,20時45分柱島水道の西五番之砠灯標の南西方沖合で,一等航海士と交替して単独の船橋当直に就き,翔洋丸にマスト灯1個,両舷灯及び船尾灯を,はしけにマスト灯1個及び両舷灯をそれぞれ表示し,レーダー2台及びGPSプロッターを作動させ,21時20分頃,怒和島水道の通過に備えて自動操舵から遠隔管制器による手動操舵に切り替え,同水道を南下した。
 A受審人は,日頃,怒和島水道を南下して平郡水道に向かう場合には,怒和島水道から二神島北西方に向かう推薦航路線(針路約202度(真方位,以下同じ。))の右側を南下し,二神島北西方沖合で右転して,平郡水道に向かう推薦航路線(針路約223度)の右側をこれに沿って航行していた。
 A受審人は,操舵装置の後方で立って操船に当たり,怒和島水道を通過した後,21時41分半根ナシ礁灯標から039度2.5海里の地点で,針路を200度に定め,機関回転数680とし,潮流に抗して8.1ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で進行した。
 A受審人は,21時50分根ナシ礁灯標から052度1.5海里の地点で,右舷方に南下中のフェリーの灯火を視認し,同船と針路が交差していたので,同船を避けるために右転して232度の針路とし,21時52分半同灯標から052度1.2海里の地点で,200度の針路に復して続航した。
 A受審人は,22時00分根ナシ礁灯標を右舷正横0.6海里に見て通過した後,22時01分少し前同灯標から119度1,120メートルの地点で,3海里レンジとしたレーダーにより右舷船首14度3.0海里に天光丸を探知し,同船の白,白,紅3灯を視認したので,同船がクダコ水道又は怒和島水道のどちらに向かうのかを確認した後に平郡水道に向けて右転するつもりで,同船の灯火を見ながら進行し,22時02分半根ナシ礁灯標から140度1,270メートルの地点で,平郡水道に向かう推薦航路線を通過して南下を続けた。
 22時05分少し過ぎA受審人は,根ナシ礁灯標から159度1,800メートルの地点に達し,天光丸が右舷船首12度1.5海里となっても,同船が白,白,紅3灯を見せたままであり,どちらの水道に向かうのかが分からなかったので,同船を避けようとして右転を始めたところ,両舷灯が見えたことから,同船が左転して怒和島水道に向かうものと判断し,直ちに左舵をとって200度の針路に戻したとき,同船の右舷灯が見えなくなって再び左舷灯だけが見えるようになり,その後,同船が前路を左方に横切り,その方位に明確な変化がなく衝突のおそれがある態勢で接近したが,同船がずっと右舷船首方にいることから,このままの針路で南下しても同船が自船の右舷方を0.2海里ないし0.3海里隔てて通過するものと思い,同船に対する動静監視を十分に行わなかったので,このことに気付かず,大幅に右転するなど,同船の進路を避けることなく続航した。
 A受審人は,22時07分少し前根ナシ礁灯標から167度1.1海里の地点に至ったとき,天光丸が右舷船首12度1.0海里となり,さらに,22時08分同灯標から171度1.2海里の地点で,同船が右舷船首11度1,050メートルとなって接近したが,同じ針路及び速力のまま進行した。
 A受審人は,22時09分天光丸が右舷船首至近で右転したのを認めて衝突の危険を感じ,左舵70度をとって回頭中,22時10分根ナシ礁灯標から174度1.5海里の地点において,翔洋丸押船列は,船首が110度を向き,約6ノットの速力となったとき,はしけの右舷船尾部に天光丸の船首部が前方から70度の角度で衝突した。
 当時,天候は曇りで風はほとんどなく,視界は良好で,潮候は下げ潮の初期に当たり,約1ノットの北東流があった。

 また,天光丸は,B及びC両受審人ほか1人が乗り組み,空倉のまま,船首1.20メートル船尾2.60メートルの喫水をもって,同月4日18時00分大分県国東港熊毛地区を発し,クダコ水道経由で香川県詫間港に向かった。
 B受審人は,船橋当直を,自身,C受審人及び甲板長の3人による単独4時間交替制とし,関門海峡,来島海峡,宮ノ窪瀬戸及び明石海峡を航行するときには,自身が操船の指揮を執ることにしていたところ,今航海では甲板長が下船中であったので,同当直を,自身及びC受審人の2人による単独4時間交替制としていた。
 C受審人は,20時30分頃山口県平郡島北東方沖合で単独の船橋当直に就き,マスト灯2個,両舷灯及び船尾灯を表示し,21時35分センガイ瀬灯標から045度1.1海里の地点で,針路を049度に定め,機関回転数310とし,潮流に乗じて12.2ノットの速力で,推薦航路線(針路048度)の右側を自動操舵により進行した。
 C受審人は,レーダーを4海里レンジで2海里後方にオフセンタとし,エコートレイル機能により残像を表示させ,操舵装置の後方で椅子に腰を掛けて見張りを行い,21時57分半根ナシ礁灯標から207度3.6海里の地点で,レーダーにより左舷船首14度4.0海里に翔洋丸押船列を探知し,同押船列の白,緑各2灯を視認したので,同押船列が怒和島水道の南方を南下していることを知り,目視により同押船列の動静監視を行いながら続航した。
 C受審人は,推薦航路線の屈曲部付近に差し掛かり,22時02分根ナシ礁灯標から200度2.8海里の地点で,自動操舵のまま針路設定つまみを左に回し,同航路線の針路が約043度であるところ,046度の針路に転じ,同航路線の右側を約0.4海里隔てて進行した。
 22時04分頃C受審人は,椅子から離れて操舵装置の右側に立ち,自動操舵から遠隔管制器による手動操舵に切り替えて操船に当たり,船首方の二神島に接近しないよう,同管制器のダイヤルで少しずつ左舵をとって小刻みに左に針路変更を始めた。
 C受審人は,22時05分少し過ぎ根ナシ礁灯標から183度2.2海里の地点で,042度の針路で航行中,翔洋丸押船列が左舷船首10度1.5海里となったとき,遠隔管制器のダイヤルを左に回して左舵をとった際に船首が大きく左に振れたので,一旦042度の針路に戻し,その後,同押船列が前路を右方に横切り,方位に明確な変化がなく衝突のおそれがある態勢で接近したが,同押船列が右転して自船の進路を避けるものと思い,目視により同押船列の動静監視を行いながら続航した。
 22時07分少し前C受審人は,根ナシ礁灯標から189度1.9海里の地点で,040度の針路で航行中,コンパス方位に明確な変化がないまま左舷船首8度1.0海里となった翔洋丸押船列に右転する様子が認められなかったが,同押船列に対して直ちに警告信号を行うことなく進行した。
 22時08分C受審人は,根ナシ礁灯標から184度1.7海里の地点で,039度の針路で航行中,翔洋丸押船列が左舷船首8度1,050メートルに接近したので,右転して047度の針路としたものの,間近に接近しても機関を後進にかけて行きあしを止めるなど,衝突を避けるための協力動作をとることなく続航した。
 22時09分C受審人は,左舷船首至近に接近した翔洋丸押船列と衝突の危険を感じ,更に右転したものの,同押船列が船首方に接近してきたので,左舵60度をとって回頭中,天光丸は,船首が000度を向き,約6ノットの速力となったとき,前示のとおり衝突した。
 B受審人は,自室で休息中に衝撃を感じ,直ちに昇橋して衝突したことを知り,事後の措置に当たった。
 衝突の結果,翔洋丸押船列は,はしけの右舷船尾部に破口を生じて浸水したので,翔洋丸をはしけから離脱させようとしたものの,離脱させることができずに沈没し,天光丸は,船首部に破口を伴う凹損を生じたが,のち修理され,同押船列の乗組員は,来援した巡視艇に全員救助された。

 (航法の適用)
 本件は,海上交通安全法が適用される瀬戸内海の二神島南西方沖合において,互いに他の船舶の視野の内にある船舶が互いに進路を横切る態勢で衝突したものであるが,同法には本件に適用する規定がないので,一般法である海上衝突予防法(以下「予防法」という。)が適用されることになる。
 以下,本件に適用される予防法の航法について検討する。

1 予防法第9条(狭い水道等)の適用について
 予防法においては,同法第9条の狭い水道についての定義規定はないが,具体的には,陸岸により約2海里以下の幅に狭められた水道をいい,長さは関係しないとされており,同条は,狭い水道を航行する船舶に対し,安全であり,かつ,実行に適する限り,その右側端に寄って航行させることにより,船舶交通の安全を確保しようとするものである。
 両船の運航状況によれば,翔洋丸押船列は,幅が約1.2海里の二神島西端と根ナシ礁との間を南下して発生地点に至ったものであるが,両船間の距離が1.5海里となって見合い関係が生じたのは,同押船列が二神島西端と根ナシ礁との間を通過した後であり,一方,天光丸は,二神島南西方沖合の開けた海域を東行していたものであり,また,発生地点は,二神島南西方約1海里の開けた海域であって,狭い水道で発生したものではない。
 以上のことから,本件に同法第9条を適用するのは相当でない。

2 予防法第15条(横切り船)の適用について
 予防法第15条は,2隻の動力船が互いに進路を横切る場合において衝突するおそれがあるときに,2隻の動力船がとるべき航法を規定したものであり,本件時,南下中の翔洋丸押船列と東行中の天光丸は,互いに他の船舶の視野の内にあり,互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近して衝突したものであるから,同条の横切り船の航法を適用することが考えられる。
 同条の適用に当たっては,両船が共にほぼ一定の針路及び速力で航行することが想定されており,他の動力船を右舷に見る動力船が避航船となり,また,予防法第17条で,当該他の動力船が保持船として針路及び速力を保たなければならないとされ,一方の船舶に避航義務を,もう一方の船舶に保持義務を課すことにより,衝突の予防を図っている。
 両船の運航状況によれば,翔洋丸押船列は,22時05分少し過ぎ天光丸が右舷船首12度1.5海里となったとき,同船を避けようとして右転を始めたところ,両舷灯が見えたので,直ちに左舵をとって200度の針路に戻して航行し,また,天光丸は,22時04分頃から遠隔管制器のダイヤルで少しずつ左舵をとって小刻みに左に針路変更を始めたところ,22時05分少し過ぎ,042度の針路で航行中,翔洋丸押船列が左舷船首10度1.5海里となったとき,船首が大きく左方に振れて翔洋丸押船列に短時間両舷灯を見せる状況となった後,042度の針路に戻し,その後,互いに進路を横切る態勢で接近して衝突したものである。
 そして,両船間の距離が1.5海里となって以降,翔洋丸押船列は,200度の針路で航行し,一方,天光丸は,042度の針路から小刻みに左に針路変更を行い,22時05分少し過ぎから22時08分までの約3分間に左に3度の針路変更を行って039度の針路としたことで,その間に,翔洋丸押船列からは,天光丸のコンパス方位が左方に1度変化(1分間に平均約0.3度)し,一方,天光丸からは,同押船列のコンパス方位が左方に1度変化(同約0.3度)しただけであり,互いに相手船のコンパス方位に明確な変化がなく衝突のおそれがある態勢で接近したものと認められる。
 また,A受審人は,22時05分少し過ぎ両船間の距離が1.5海里となって右転を始めたとき,短時間ではあるものの,天光丸が針路変更を行うため遠隔管制器のダイヤルを左に回して左舵をとった際に同船の船首が大きく左に振れ,同船の両舷灯を視認したので,直ちに元の針路に戻したところ,同船の灯火が左舷灯だけとなり,その後も左舷灯だけを視認していたことから,同船に対する動静監視を十分に行っていれば,同船が前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることが判断できる状況であり,両船が共に横切り船の航法に従って行動することに妨げとなるものはなく,衝突回避動作をとるのに十分な時間的,距離的な余裕があったものと認められる。
 したがって,本件は,予防法第15条の横切り船の航法を適用するのが相当である。

 (原因の考察)
 B受審人は,本件発生時,C受審人を単独の船橋当直に就け,自ら操船指揮を執っていなかったものであるが,このことが本件発生の原因となるかどうかについて検討する。
 船員法第10条(甲板上の指揮)には,「船長は,船舶が港を出入するとき,船舶が狭い水路を通過するときその他船舶に危険の虞があるときは,甲板にあつて自ら船舶を指揮しなければならない。」と定められている。
 本件発生時,天光丸は,二神島南西方沖合の開けた海域を東行していたもので,発生地点も同島南西方約1海里の開けた海域であって,同条にいう狭い水路を航行中に発生したものではなく,また,視界は良好で,天光丸の周辺には翔洋丸押船列のほかに接近する船舶が存在せず,船舶交通がふくそうした状態ではなかったことなど,特段,天光丸に危険のおそれがある状況であったとは認められない。
 したがって,B受審人が自ら操船指揮を執らなかったことは,本件発生の原因とならない。

 (原因及び受審人の行為)
 本件衝突は,夜間,二神島南西方沖合において,両船が互いに進路を横切り衝突のおそれがある態勢で接近中,南下中の翔洋丸押船列が,動静監視不十分で,前路を左方に横切る天光丸の進路を避けなかったことによって発生したが,東行中の天光丸が,警告信号を行わず,衝突を避けるための協力動作をとらなかったことも一因をなすものである。
 A受審人は,夜間,二神島南西方沖合を南下中,右舷船首方に東行中の天光丸を認めた場合,衝突のおそれがあるかどうかを判断できるよう,同船に対する動静監視を十分に行うべき注意義務があった。しかるに,同人は,天光丸がずっと右舷船首方にいるので,同船が自船の右舷方を通過するものと思い,天光丸に対する動静監視を十分に行わなかった職務上の過失により,同船が前路を左方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近していることに気付かず,大幅に右転するなど,同船の進路を避けることなく進行して衝突を招き,両船に損傷をそれぞれ生じさせ,翔洋丸押船列を沈没させるに至った。
 以上のA受審人の行為に対しては,海難審判法第3条の規定により,同法第4条第1項第2号を適用して同人の五級海技士(航海)の業務を1箇月停止する。

 C受審人は,夜間,二神島南西方沖合を東行中,前路を右方に横切り衝突のおそれがある態勢で接近する翔洋丸押船列が,自船の進路を避けないまま間近に接近するのを認めた場合,機関を後進にかけて行きあしを止めるなど,衝突を避けるための協力動作をとるべき注意義務があった。しかるに,同人は,翔洋丸押船列が右転して自船の進路を避けるものと思い,衝突を避けるための協力動作をとらなかった職務上の過失により,同押船列との衝突を招き,前示の損傷等を生じさせるに至った。
 以上のC受審人の行為に対しては,海難審判法第3条の規定により,同法第4条第1項第3号を適用して同人を戒告する。

 B受審人の行為は,本件発生の原因とならない。

 よって主文のとおり裁決する。



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