平成25年海審第7号
             裁    決
         旅客船マーメイドV旅客負傷事件

  言 渡 年 月 日 平成27年3月19日
  審  判  所 海難審判所(福島千太郎,小寺俊秋,前久保勝己)
  理  事  官 小金沢重充
  受  審  人 A
     職  名 マーメイドV船長
     操縦免許 小型船舶操縦士

             主    文

 受審人Aの小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

             理    由
 (海難の事実)
1 事件発生の年月日時刻及び場所
 平成24年7月8日10時40分
 沖縄県水納島東方沖合

2 船舶の要目
  船 種 船 名 旅客船マーメイドV
  総 ト ン 数 3.6トン
    全   長 11.40メートル
    機関の種類 電気点火機関
    出   力 165キロワット

3 事実の経過
(1) 構造及び設備
 マーメイドVは,沖縄県渡久地港と同港西方約4海里沖合の水納島との間で旅客の輸送等に従事する最大搭載人員15人のFRP製和船型旅客船で,船体後部に操縦台を設け,同台には舵輪,船外機遠隔操縦用のスロットルレバー及びクラッチレバー,速力指示器等が装備されていて,スロットルレバーは,根元のつまみを右に回すと任意の位置で固定することができ,左に回すと固定状態を解除することができるようになっていた。
 また,前部甲板には,旅客用の座席として長さ約2メートル,幅約30センチメートル(以下「センチ」という。),高さ約26センチの木製ベンチ(以下「ベンチ」という。)2台が,船体中心線に沿って置かれていたものの,甲板に固定されておらず,腰を掛けた旅客が身体を支えるための手すり等は設けられていなかった。

(2) 本件発生に至る経緯
 マーメイドVは,A受審人ほか1人が乗り組み,子供1人を含む旅客9人を乗せて全員に救命胴衣を着用させ,船首尾とも0.5メートルの喫水をもって,平成24年7月8日10時30分渡久地港を発し,水納島に向かった。
 これより先,A受審人は,当日渡久地港を09時00分に出航する第1便を運航した際,波浪がやや高く,波しぶきがかかる状況であったので,10時30分に出航する第2便では,高起した波浪を受けないよう,同時刻に出航して水納島に向かう高速旅客船の後方を航行して同島に向かうこととした。
 A受審人は,船首側のベンチに旅客4人が,船尾側のベンチに子供1人を含む同5人が,それぞれ左舷方を向いて腰を掛け,乗組員が前部甲板左舷中央付近に腰を下ろした状態で,先に離岸した高速旅客船の後方を航行し,港口を通過した頃同船の速力に合わせて増速した。
 10時34分半少し過ぎA受審人は,水納島灯台から068度2.7海里の地点で,針路を255度(真方位,以下同じ。)に定め,機関を全速力前進から少し落とした回転数毎分4,500にかけてスロットルレバーの位置を固定し,20.0ノットの速力(対地速力,以下同じ。)で,手動操舵により進行した。
 針路を定めたとき,A受審人は,20.0ノットの速力のまま航行すると,高起した波浪を受けて船首が大きく上下動し,船首側のベンチに腰を掛けていた旅客が跳ね上げられるおそれがあったが,高速旅客船の後方を航行していれば高起した波浪を受けることはないものと思い,船首側のベンチに腰を掛けていた旅客を操縦台の後方に移動させたり,減速したりするなど,旅客に対する安全確保の措置を十分にとることなく,先航する高速旅客船の約30メートル後方を続航した。
 10時40分僅か前A受審人は,高速旅客船の船尾部が折から高起した波浪により大きく上下動したのを認め,急いでスロットルレバーの固定状態を解除して減速しようとしたものの,マーメイドVは,原針路及び原速力のまま,波高約2.5メートルの高起した波浪を受け,船首が高く持ち上げられた後に急速に降下し,10時40分水納島灯台から055度1,800メートルの地点において,船首側から1人目と2人目の旅客が跳ね上げられ,約1メートルの高さからベンチと甲板に落下し,それぞれ臀部を強打した。
 当時,天候は晴れで風力4の西風が吹き,潮候は下げ潮の初期に当たり,波高50センチないし1メートルの波浪があった。
 その結果,旅客2人がいずれも50日間以上の入院加療を要する腰椎圧迫骨折を負った。

 (原因及び受審人の行為)
 本件旅客負傷は,水納島東方沖合において,波浪がやや高い状況で同島に向かう際,旅客に対する安全確保の措置が不十分で,高起した波浪を受けて船首が大きく上下動し,船首側のベンチに腰を掛けていた旅客が跳ね上げられ,ベンチと甲板に落下して臀部を強打したことによって発生したものである。
 A受審人は,水納島東方沖合において,波浪がやや高い状況で同島に向かう場合,船首が大きく上下動して旅客が跳ね上げられることのないよう,船首側のベンチに腰を掛けていた旅客を操縦台の後方に移動させたり,減速したりするなど,旅客に対する安全確保の措置を十分にとるべき注意義務があった。しかるに,同人は,高速旅客船の後方を航行していれば高起した波浪を受けることはないものと思い,旅客に対する安全確保の措置を十分にとらなかった職務上の過失により,高起した波浪を受け,船首が高く持ち上げられた後に急速に降下し,船首側のベンチに腰を掛けていた旅客2人が跳ね上げられ,ベンチと甲板に落下して臀部を強打する事態を招き,それぞれを負傷させるに至った。
 以上のA受審人の行為に対しては,海難審判法第3条の規定により,同法第4条第1項第2号を適用して同人の小型船舶操縦士の業務を1箇月停止する。

 よって主文のとおり裁決する。




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